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救急車は準公共財で良いような...


誤解される救急車有料化。有料は必須?

 どこかの自治体で救急車が有料化される的なニュースが出てきたが、地域のかかりつけ医をすっ飛ばして、紹介状なしに大病院を受診すると、医療費に特別料金が加算されるのと同じ理屈で、救急車で市が指定した3つの大病院に搬送され、入院が必要なかった場合に選定療養費として自費で7,700円が加算されるようになる趣旨のもので、救急車そのものが有料化する訳ではない。

 とはいえ、フリーライダーによる不要不急の乱用が横行して、本来救急搬送されるべき人に支障が出ている現状を鑑みると、公共財における受益者負担の概念に基づいて、便益を受けた者に相応の対価を負担する仕組みを設けざるを得ないように思う。

 有料だと一刻一秒を争う事態の際に躊躇ってしまい、致命傷に繋がるのではないか?という意見もあるが、真の弱者を救うために湯水の如く税金を注ぎ込んで無料で提供された結果、モラルなき者の無料タクシーと化して、救急隊員の業務がパンクしている状況は、共有地の悲劇でしかない。

 その対策として有効なのが、水道料金のような準公共財の考え方である。公共性は強いものの、独立採算制で受益者に限界費用に準じたコストを負担させ、赤字部分だけ公的に負担する仕組み。

 端的に記せば有料化によって、冷やかしにコストが掛かる心理的ハードルを設けることで、乱用の抑止力として機能し、資源が枯渇する共有地の悲劇は防げるのではないかという視点だ。

 現状、無料で投稿できるSNSは、クソリプに塗れる地獄絵図となっているの現状だが、これが閲覧は無料で、投稿は有料となれば、わざわざコストを掛けてまでネガティブな内容を投稿しようとは思わないだろう。

 幅広いことが無料でできる時代だからこそ、有料化することで得られるメリットもあると考える。それゆえに救急車は水道料金のように、使った人が相応のコストを負担する、準公共財の仕組みで有料化した方が健全だと考える。

無料でも、誰かが費用負担して成立する。

 私は日本人として、クレカはなるべく自国の国際ブランドを使って、決済手数料を海外に流出させず、日本円を国内に循環するよう努めているが、J○BのプロパーカードはApplePayの認証には、カケホの敵であるナビダイヤルしか受け付けていない。

 フリーダイアルであれば、取り敢えずiPhoneに登録しておいても損はないと、登録だけして結局使わないみたいなことが往々にしてある。

 しかし、ナビダイヤル(有料)となることで、通話料というコストを掛けてiPhoneに登録したところで、決済機能そのものはカードと何ら変わらないため、そこまでApplePayに固執する必要がないと登録していない。20秒10円+税と、決して高額ではないとはいえ、有料である心理的ハードルは大きいのだ。

 元駅員の経験則として、サービスは無料で然るべき的な考えを持っている日本人は相当数居るが、何をするにもコストは掛かる訳で、それを利用者が直接負担していないだけで、誰かの費用負担により無料が成り立っている。

 この構図を理解していれば、税金によって安価もしくは無償で提供されている公共財を、自分さえ良ければと乱用するような真似はできない筈だが、現実は私のような節度あるフリーライダーは少数派で、多数派のモラルのカケラもない畜生に食い潰されている。

限られたリソースで全員救おうとすると、みんな報われない。

 とはいえ、救急車は生命に関わるのだから、有料化せず、無料のまま間口を広くするべき論の言い分も理解できなくはないが、逆説的に、生命に関わるのだから、命が惜しいと本気で思う人なら、そこへのコストは惜しまないのではないだろうか。現に生命に直結する水道は料金を取っている。

 救急車を無料だったら使うが、有料なら使わない類の人たちは、その程度の病状であり、本気で必要としているなら、無料である必要がない。これは救急車に留まらず、行政が発行する交通機関の無料パスなども同じ構図である。

 そもそも私のように、発作に見舞われても、私が利用することで誰かの機会を奪う。そこまでして利用する価値が〜などと理屈を拗らせて、のたうちまわる状況下で利用を躊躇うような人種は、たとえ無料でも利用しない。

 因みに自力で病院に向かい、急患で診てもらった際には異常を見落とされ、翌日の清算時にあまりの具合の悪さから再診して肝機能障害が発覚。血液検査がパニック値のデパートで即時入院となった。

 そのため、昨今世間を賑わせている有料化を私のケースに当てはめると、運悪く大病院に搬送されて、その場では入院に至らなかったが、結果として後日入院して、救急搬送時の選定療養費まで負担する事態となったら、当事者としてはモヤるだろう。それなら条件付きで無料なんて曖昧なことはせず、一律で有料化してしまった方が潔い。

 救急隊員の人手や救急車の台数が足りていないのは事実だが、大病院で入院に至らなければ7,700円加算されるなら、搬送された人は必死になって入院する口実を探すかも知れない。(入院費用の方が高く付くため、ないとは思うが…。)それが大病院のリソースを食い潰す医療崩壊を招いたら本末転倒だろう。

 この手の線引きは、誰を救いたくて、それを最適化するためには、どこに限られたリソースを傾斜配分すべきかの決断が重要であり、何となく全員救おうとすると、共有地の悲劇で誰も救われない結末を迎えかねない。


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