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初物好きな日本人にありがちな癖。


リスク嫌い、でもギャンブルは好き。

 2022年に起きた某国の軍事侵攻という名の戦争により、グローバル経済のサプライチェーンは崩壊。エネルギー資源を中心とした原材料費の高騰により、今でこそ中古市場が脚光を浴びるようになった。

 しかし、それなりに経済力のあった時代を過ごした日本人ほど、初物好きなイメージが強いのではないかという仮説が、共有経済の価値観が強く、中古品に抵抗感のない一介の若年層として意識することがある。

 新築、新車といった新品はもとより、家電も機能的に大差ない型落ちよりも、最新の機種を好むし、新春セールとか、新生活応援フェア的なマーケティングにも乗っかりがちな傾向があるように思う。

 雇用も日系企業ほど新卒一括採用が根強い。日本は解雇規制が強力なのだから、何処の馬の骨かも分からず、社会経験のない新人を闇雲に採用するよりも、実務経験のある者なら、たとえ職歴が非正規雇用でも抜擢したり、既に雇っている社員のリスキリングを促して、活用する方が合理的なように思えるが、現実はそうなっていない。

 むしろ、どうせ採用や教育をするなら、変に色の付いていない若い方が良いとすら思っている節がある。面接ごときで採用を決めた新卒全員が真っ当という確証など、得られる筈がないにも関わらず。

 この構造はキャリアのスタート地点で、運悪く正規雇用の枠組みから抜け漏れてしまうと、再挑戦を許さず、挽回することが不可能な無理ゲーとなることを意味する。就職氷河期世代が典型例だろう。

 あの世代が社会に対して何か悪いことをした訳ではない。運悪くバブルが崩壊して就活がハードモードになっただけだ。

 生計を立てるために、仕方なく非正規雇用で妥協して、いざ再挑戦しようとしたら、どうせ採用するなら若い方が良いと、不遇な扱いを受け続けて、尚のこと時間が経つことで負のループに陥った方は少なくない。

 こうした日本人の初物好きの裏側には、リスクは取りたくないが、一発逆転を夢見てしまうギャンブル好きな側面が垣間見える。

逃げ道の確保に、プレミアムを支払う。

 投資の世界を知っている人であれば、リスクとリターンが表裏一体の関係にあることは常識だが、世界的に見て金融リテラシーが低い傾向にある、日本人のマジョリティ層は、ローリスク、ハイリターンを求めた意思決定を行う。

 これは、今のままで良いとは思っていないが、自分が可愛いが故に、痛みの伴う改革は避け、既得権益は残したまま、手っ取り早く何かを変えたいという心理の現れではないだろうか。

 そこにピッタリハマるのが初物である。新しいということは、実績がない訳で、意思決定を行う際の判断指標は、謳い文句に限定される。反対に中古品や、社会経験のある人を適切に評価するためには、評価者に相応の知識や経験が求められる。

 責任という名のリスクを取りたくない者からすれば、実績がない初物を採用して不都合が生じても、謳い文句に騙されたと責任転嫁できるが、実績があるものを採用して不都合が生じた場合、真っ先に意思決定者の実力不足を突きつけられるため、言い逃れが難しくなる。

 〇〇改革的なスローガンを掲げて、新しいシステムや、怪しいコンサルにお金を払ったものの、実態としてほとんど何も変わらなかった。というのが典型だろう。外注すればあの会社が悪いだの、あのコンサルが悪いだの言えるが、自前でやってうまくいかなければ、自分が悪いことになるのだから。

 そうして言い逃れする逃げ道を確保するために、初物という名のプレミアムを支払い、抜本的なアプローチができないまま徐々に泥沼化して、いつかは没落する。日本社会の悪しき構造そのものを見ている気分だ。

自分で扱えないものを他人任せにしない。

 シルバーデモクラシーなこの社会は、ことある毎に若者や弱者に自己責任論を振りかざしているが、当事者からすれば大きなお世話で、人の振り見て我が振り直せ。他人に自己責任論を振りかざす前に、自分自身が他者に責任転嫁しないところからどうぞと思う。

 株式市場という、意思決定によって生じた結果の全てが自己責任の世界で、しくじっても何ら言い逃れできない場所で、しのぎを削っている身としては、自己責任論を他者に押し付ける人ほど、傲慢な傾向があると感じる。

 全てが自己責任の世界に身を置くと、結果が伴わない際に言い逃れしようがなく、自分自身の至らなさ、愚かさをしばしば直視するため、他人のことをとやかく言える立場にないことを、否応にも自覚せざるを得ない。

 だから、その自覚なき者が、自分の価値観を他人に押し付ける行為など、傲慢以外の何者でもない。

 もし初物という名のプレミアムを、つい支払ってしまう悪習を断ちたいなら、自分で扱えないものを他人任せにしないことである。

 他人任せは人件費を負担することから、プレミアムの一部となる場合が多い。しかし、その内訳が適切かどうかは、自分の知識や経験から来る相場感覚が養われていないと、吹っ掛けられているのか判断しようがない。

 投資信託は典型例で、運用手数料としてファンドから信託報酬が差し引かれているが、その利率にはバラツキがある。特に外国株式の場合、外貨両替のコストもある。

 自分で両替して外国株式を購入するなら、FXで1万通貨単位で買い建てて、現引するのが最も低コストだが、そこにプラスαすることで、日本円のまま小口売買できる価値を踏まえれば、適切なコストだと判断して、外国株式は個別で売買せず、インデックスファンドで運用を外注している。

 外貨両替の最低コストがいくらか分かっていれば、多くの外貨預金がいかに吹っ掛けた数字だか判断できるし、信託報酬の最低コストが分かっていれば窓口で勧められるものが、人件費という名のプレミアムが乗っかっていることに気づける。

 自分でも扱えるが、コスパが良いから他人に外注する。それで不都合が生じても、自身に至らぬ所があったと謙虚に受け止める姿勢があれば、賭けをせず、投資をする賢者になれるだろう。


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