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転居時、火災保険の空白期間問題。

転居で一時的に賃貸契約が二重になる。

 日本社会に限った話ではないが、経済大国にありがちなトラップとして、住所がないと定職に就けないが、定職に就いていなければ住まいが借りられず、住所不定無職から抜け出せない、負の無限ループとなる。

 そのため、たとえ賃貸であっても、実家に戻る場合を除いて、予め転居先を契約してから退去に至るだろう。とはいえ賃貸契約上、退去届を提出するのが退去の1ヶ月前と定められているのに対し、賃貸契約の契約開始日の猶予は長くても1ヶ月、基本的にはおおよそ2〜3週間程度しかできない。

 そのため、1ヶ月以上前から物件探しをして契約に漕ぎつけたところで、住んでもいないのに無駄に賃料を支払う期間が、いたずらに長くなるだけだから、大抵はギリギリまで転居先を探さないか、現住所に何日分かの家賃を余計に支払って退去の流れになりがちである。

 つまり、多かれ少なかれ賃貸物件を二重契約する期間が発生してしまう。私は歳を重ねる度に家賃のグレードが落ちていることから、いつも家賃が安い転居先の方で、住んでもいないのに家賃を支払う状態となり、今春の地方移住も例外ではない。

 今回は早期退職も兼ねているため、審査を確実に通すために、在職期間中を契約日、繁忙期諸々を考慮して早期に動き出した結果、2週間程度の二重契約期間が発生している。

 転居先の賃料がもったいないで終われば、それで良いのだが転居先の火災保険は3月中から必要となるため、対象物件の住所変更を済ませたが、ここで一つ問題が発生する。

 表題にもあるように、住所変更後の契約開始日から、転居するその日までの間、現在居住している賃貸物件が無保険状態となってしまう。

ヒトは損失回避のためなら、リスクテイクする生き物。

 前回は賃料を下げる目的で1kmちょっと先の、近隣の物件に転居したため、荷物を自力で移送する1日だけ、賃貸契約の二重期間となっていたことから、本当は良くないのは分かりつつも、退去する物件が1日だけ無保険となっていた。

 賃貸契約上は、無保険が発覚した場合、契約解除の条件となる記載が多いが、どうせ最終日にバレたところで、一晩経てば契約解除なのだから何も失うものがない。だからしれっと無保険でやり過ごす賭けに出て、何事もなかった。

 しかし、今回は退去する物件の無保険期間が2週間近く存在する。これまで火事を起こしたこともなく、季節柄、乾燥している時期でもないのだから、自分さえ注意すれば、2週間くらい無保険でも大丈夫だろうと、人によっては思うのかも知れない

 鉄道員という職業柄、人間ひとりの注意力ほど信用ならないものはない。人はミスをする生き物である前提で、然るべきリスクヘッジを行い、有事の際にバックアップされる体制を平時から構築しておくことが、安全、安心の根幹となる。

 そこから更にリスクとリターンを天秤に掛ける機会が多い、一介の個人投資家目線を加えると、結構なリスクテイクに思えてならない。

 というのも日本の失火責任法は、過失による延焼の責任が問われないことになっているからだ。つまり、たとえ隣人が火事を起こして、貰い事故となっても隣人の保険で、損害を補填する仕組みにはなっていない。だから、各々で火災保険に加入することが、事実上の義務になっている。

 それに日本は災害大国でもある。テレビを保有していないため、観る機会もないが、3月11日の東日本大震災。あれから12年的なカレンダー報道が各社で行われたことだろう。

 無保険状態の2週間に、大地震でも発生しようものなら、損害賠償責任が振りかかる。賃貸を借りているくらいだから、不動産の損害賠償を手持ちのキャッシュで賄える人はそうそう居ない。転居前の最後に嫌な思いをする可能性が、滅多にはないもののゼロではない点でリスキーだと思わないだろうか。

 それでも人は、利益は割り引いてでも確実性を重視し、損失回避のためなら割に合わないリスクテイクを行うことが、プロスペクト理論によって証明されている。

 今回の件で言えば、空白期間の火災保険を埋め合わせるために、わざわざ契約や解約をする手間や労力、費用という名の損失を回避するためなら、何週間くらいの無保険期間も厭わないと判断しがちである。

穴埋めは月払い保険+解約が最適解か?

 しかし、天邪鬼な私は世間一般と同じ行動を取らないことがポリシーとなっていることから、リスクばかりが大きくリターンが限定的な、空白期間の埋め合わせ策を考えた。

 火災保険は賃貸契約に付随する保険商品である性質上、基本的には保険期間は最低でも1年周期で設定される。数日や1ヶ月だけ契約する方法が全くないわけではないが、複雑ゆえにコストの掛かる大手保険会社の対面販売以外での取扱いを知らず、手間を外注する分、費用は決して安くない。

 次点として考えたのは月払いの火災保険を1年契約で結び、退去した翌日に解約する方法である。もちろん、1ヶ月未満の解約返戻金などないため、2週間だけ保険を掛けたい身からすれば、半分の期間でも1ヶ月分の保険料を取られるのだから、面白くない。

 しかし、大手の対面販売できっちり2週間だけ設定してもらうよりも、掛け捨て感覚で1ヶ月分の保険料だけおとなしく支払い、必要がなくなったタイミングで解約した方が、オペレーションがレアケースとならない分、コスト的には安くなる。

 ここで肝となるのは、月払いの取扱いがある保険商品かつ、解約時の煩わしさを軽減するために、違約金の類がなく、Web上の操作で手続きが完結するものであることが何より重要である。

 複数のネット損保を吟味した結果、私は損保ジャパン傘下のMysuranceを契約し、ベーシックプランで月額570円となった。

 年払いなら4,000円で済むお部屋を借りる時の保険と、同等かそれ以下の保証内容にも関わらず、月換算で比較すると200円以上割高な上、転居後に自分で解約手続きを行わなければならないのだから良い商売だと思う。

 とはいえ最後の2週間に、貰い事故によって損害賠償請求をされ、嫌な思いをするリスクを回避するためのコストが、都内の喫茶店代程度の金額で済むなら安いものと割り切るしかない。

 念には念を込めて、契約した当日に自動更新(1年)のチェックを外し、たとえ記憶喪失で解約し損ねても、1年分の6,840円以上は請求されないようにしたが、ケチな私は転居した翌日にリマインダーまで設定しているため、忘れはしないだろう。


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