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株主優待の良さを実感する時期。

適正な利益還元とは言い難いものの…

 「月曜から夜ふかし」で株主優待だけで生活する桐谷さんが登場してから、今年で丸10年となる。10年前に学生としてリアタイで観ていた世代としては、まさか自分が優待を活用しながら生活するとは想像もしなかった。

 投資をしていない投資詐欺の悪行によって、世間一般では危ないものや、ギャンブルの汚名を被せられている株式投資だが、桐谷さんをはじめとするパンピーウケの良い投資家が、メディアに露出する機会が増えたことで、放映当時よりは、世の中の株式投資アレルギーが軽減されつつあるように感じる。

 高校生の金融教育が盛り込まれたことで、これから社会に出てくる世代は、両親がバブル崩壊で大損した世代でもなければ、リーマンショックも知らないため、割と投資や資産運用をフラットに見れる環境が整っているように思う。

 そんな株式投資で、少額投資家に心強いのが、東証再編によって廃止の潮流となりつつある優待投資である。

 先日、昨年買ったばかりの調理機能付き電気ケトルが、保証期間が切れたタイミングで壊れたことで、炊飯と湯沸かしがダブルで出来なくなり、先が思いやられる移住生活となった。

 しかし2〜3月に権利確定となる銘柄の優待が、3ヶ月後にあたる最近に続々と届いたおかげで、代替の炊飯器と湯沸かし器を新調した(1万円相当)にも関わらず、優待券やギフト券を駆使して、端数だけ持ち出しで済ませたことで、臨時の出費としては飲み代1回分にも満たなかった。

 桐谷さんのように、力こそパワーで億単位の資金を突っ込める人なら、優待券だけで生活費を賄うために、贈呈される優待金額を最大化することができるが、プロ棋士レベルの入金力がない一介のパンピーとしては、優待利回りが最大化するように1単元で保有することが多い。

 万単位で株を持っている大口投資家よりも、100株だけ持っている小口投資家の方が、配当と優待を合わせた総合利回りが高くなる構造上、適正な利益還元かと問われると、首を縦には振れない。

 とはいえ制度として現存する以上はそれらを駆使して、種銭が少ないなりに有利な立ち振る舞いをしようと思うのは、身銭を切っている以上、当然の選択だと思う。

マツキヨの店員に顔を覚えられがち。

 私は桐谷さんと違い記憶力が悪いため、期限切れを避けるために手元に届いたら即座に使うよう心がけている。

 これには副産物的なメリットもあり、世界経済は長期目線で緩やかにインフレしているため、通貨の価値は常識的には目減りするため、有効期限がない優待も例外ではない。

 すぐにモノと引き換えることで、その時々の通貨と等価交換する形で金銭消費を削減し、使わなかった現金は余剰資金として、インフレ耐性のある資産に投資することで、インフレリスクを抑えられるメリットがある。

 だから、優待券やポイントなどの、溜め込んだところで運用して増やせない、法定通貨以外のものから優先して消化するのが、理に適った金銭消費と考える。

 その思想が蔓延ると、株主優待で定番のQUOカードを消化先は、商品に割高感のないマツモトキヨシ一択となり、会計で1枚出しては、足りなかったらもう1枚出してを繰り返す。

 あの手の磁気プリペイドカードは読み書きに時間を要するため、レジ係としては時間がかかり、有り難くない存在であることは容易に想像がつく。

 都内某所に居住していた時は、私がQUOカードでしか支払わない客として、レジ係に大敵として覚えられ、私が会計待ちの列に並んだ瞬間に、応援を呼ばれたのは、きっと気のせいではなかったのだろう。

消費低迷のカンフル剤的役割?

 新年度から心機一転、地方移住で新生活を始めたものの、過去記事にあるように退去時に捨てるものこそあれど、入居時に新調するものはほとんどなかったのは、なければないなりに3カ月間乗り切れば、6月過ぎから続々と届く株主優待を充てるつもりでいた節もある。

 東京都区部から地方部への転居に際し、必要に迫られて購入したものや移送費用の総計が、日本円で5桁の範囲内で収まったあたりからも、そもそも人が生きていく上で、多くのものは必要ないと考えて、極力身軽でいられるよう努めた結果だが、一般常識を踏まえれば、ほぼほぼ何もない状態で、3カ月間耐え忍げることが判明してしまい、100%身銭を切ってまで欲しいものなど無いに等しい。

 お金持ちの家ほど絶対的な物の量が少なく、ゴミも一般的な課税ほど排出しない傾向にあるのは、恐らく欲望のコントロールが大衆よりも秀でていて、私がたどり着いた境地にも似た、身銭を切ってまで欲しいものなど無いに等しい状態なのだと思う。

 だからこそ、期限付きの株主優待券で、定期的に金銭消費の需要を喚起できる意味では、日本独自のガラパゴスな制度とは言え、割とよくできた仕組みなのではないかとも思う。

 小口投資家の時は利回り重視で生活支出を引き締めて積み立て投資の種銭を拠出する。その積み重ねで、優待利回りが低下するほどの株式を保有できる、世間一般で言うところのお金には困らない大口投資家の域に達した時には、半年毎や1年ごとに送られてくるクーポン券を無駄にしないために、半ば強引に利害関係のある上場企業にお金を落とす。

 企業が優待を撒き、投資家が消費をして、会社の業績が向上すれば、従業員にも人件費として還元される。そして会社の規模が大きくなれば自ずと株価や配当も時間の経過とともに膨らんでいく。

 身内でぐるぐる回しているだけと言われてしまえばそれまでだが、消費が低迷している日本経済を好転させるために、金融リテラシーの向上と株主優待制度の組み合わせは、案外、悪くない選択で、カンフル剤としては十分に機能し得ると思うだけに、廃止の潮流を残念にも思う今日この頃である。


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