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地合いが良いと動けない割安株投資


割安な銘柄を血眼になって探す徒労感

 3月に日経平均株価が終値で4万円を超え、1989年以来の史上最高値更新となり、今年から開始となった新NISAによる資金流入の後押しやインフレもあって、想像以上に日本株の地合いが良い。

 コロナショック以前、なんならチャイナショックの頃から日本株を触っているが、5年前には日本株はオワコン。米国株一強と言われていたのが嘘みたいな現状であり、これほどまでに日本株の地合いが良いのは初めての経験だ。

 しかし、地合いが良いと言うことは、私が得意としてきたファンダメンタルズ分析に基づく、バリュー株や高配当銘柄を中心に物色していく投資方針と、相場感が乖離していて、買い入れたい株価水準の銘柄が殆どない現状が、違和感にも似た気持ち悪さを感じているため静観に徹している。

 長期・積立・分散がモットーの、インデックスファンド(オルカン)の積立投資に関しては、非裁量のため機械的に淡々と積み立てている。

 しかし、自身の裁量で売買している日本株に関しては、注文を建てることがあるとすれば、逆指値の売り注文であり、ポジションそのものを増やしてはいない。それくらい、相場全体で株価が底上げされている感が強く、割安だと思える銘柄が見当たらない。

 無論、各証券会社や株式情報サイトが提供している、スクリーニング機能を駆使すれば、配当利回り4%超の銘柄は散見されるものの、その殆どがバリュートラップ感の強い、訳あり銘柄が多いように感じる。

 バフェット氏の名言を借りれば「素晴らしい会社をそこそこの値段で買いたい」のであって、あくまでも素晴らしい会社であることが必須の条件である。

 日頃、会社四季報、マネックス証券の銘柄スカウター、IR BANK、TDNETViewer2、バフェットコード辺りを駆使して銘柄を選定しているものの、誰もが素晴らしいと思うような会社は既に割安とは言い難く、割安な銘柄の中から、素晴らしいと思しき会社を、血眼になって探す徒労感すら感じている。

ビビり散らかしている小心者の域を出ない

 とはいえ、積極的にポジションを増やそうとしなくとも、既に持っているポジションだけで、全世代における1世帯あたり金融資産の中央値を悠に超える額となっているため、上昇相場で積極的に買い増さなかったことに起因する機会損失が生じたとしても、ポートフォリオ全体で見れば軽微なものだろう。

 セクターが広く分散された、それなりの額と銘柄数のポートフォリオを組んでいる以上、良くも悪くも市場平均に沿ったパフォーマンスに収斂するわけで、その時々に応じて、裁量で数銘柄を売買したところで、運用成績が劇的に変化する実感が皆無である以上、下落局面に転じた際のリスクを鑑みて、些か保守的な運用となるのは自明の理である。

 冷静に考えて、私のコア・サテライト戦略は、コアがオルカン、サテライトが日本のバリュー株や高配当銘柄。第一に通貨分散の意味合いが大きいから、外貨半分、日本円半分。日本円は買付余力と、生活費決済用資金の側面があるため、円建て資産が100%運用に回ることはない。

 総資産で見れば50%に満たない日本株の中で、更にひとつのセクターを保有するは、多くても20%までと決めているのだから、日本株1銘柄でどれほど張ったとしても、総資産全体で見たら10%以下。

 そして、株式はリスクの高い資産と思われがちだが、〇〇ショックで連日ストップ安でもない限り、突然半値以下になることは滅多になく、不景気で地合いが悪いくらいなら、毎日ジリジリと数%下がり続けるのが通例である。

 そのため、私は20%の含み損を抱えそうだと判断した時点で、機械的に損切りできるよう逆指値注文を建てることから、基本的に20%以上の損失を負わない。

 つまり、マイルールに則っている限り、1銘柄に全ツッパして盛大にしくじったとしても、総資産全体で見たら最大10%のうちの2割なのだから、実に2%の損失で済む構造からして、結局のところビビり散らかしている小心者の域を出ない。

形勢が不利、だから好機が来るまで待つ

 ゆえに割安ではない今、無理して日本株のポジションを増やしたところで、得られるリターンと、無用な損切りを増やすリスクを天秤に掛けると、直感的にリスクの方が大きいと感じてしまう。

 私が20%で損切りする理由は、その時に割安だと思って買ったにも関わらず、その価格から2割安くなっている時点で、明らかにエントリーポイントを誤っている=誤った投資判断と推定できるからだ。

 そして、20%下げた株価(80/100)が、買値に戻るためには80/100の逆数である25%上昇しなければ含み損は解消されない。

 つまり、無用な損切りを回避しようと思うと、安値水準×1.25倍以内の範囲でないとエントリーポイントにはなり得ないわけで、史上最高値を更新した今、素晴らしい会社ほど安値水準×1.25倍のレンジに入らない。

 休むも相場という格言は、下落相場の際に用いられがちだが、相場全体が冷え込んでいる時に淡々と仕込む割安株投資派からすれば、過熱感のある現在は形勢としては不利な訳で、次の好機が来るまでポジションを増やさず、じっと待つのは必然なのかもしれない。


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