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#1-人生100年時代におけるシニア社員のための実践的なキャリアデザイン術

第1回:シニア雇用を巡る最近の動向(その1)

今ほどシニアサラリーマンの働き方が注目を集めている時代はない

総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を高齢化率と呼びます。日本の高度成長を支えた団塊の世代(昭和22年~24年生まれ)も既に70歳を超え、今年で71歳~73歳に達します。ちなみに2019年の日本の高齢化率は28.4%で世界一、2025年には約30%に達すると推計されています。

一方、今後の生産年齢人口(15~64歳の人口)減少が懸念される中で、就業数の増加要員として期待されるのは、高齢者です。

これからの企業は、シニア世代をお荷物扱いするわけにはいきません。シニア世代には戦力として従来以上にイキイキと働いてもらわなければ企業の業績向上はありえないのです。

こうした環境の中で、シニア世代の雇用を巡って様々な動きが活発になっています。以下は2019年12月単月で日本経済新聞に掲載された記事の見出しの一部です。

 " 「年功・終身」 見直し重点に 経団連が春季交渉指針 "
 " 中高年の力引き出せ 再チャレンジや役職定年廃止 "

いずれの記事もシニアの働き方に大きく関連する内容ばかりです。
シニア社員の今後のキャリアを考える際には、こうしたシニア雇用を巡る動向をまずはしっかりと見定めておくことが必要です。
第1回の今回は、シニア雇用を巡る最新動向について押さえておきたいと思います。

65歳定年延長の動き

定年年齢延長(60歳から65歳へ)に関しては、国家公務員の定年制見直しが先行しています。この定年延長に関して、政府は2019年国会への改正案提出を目指していましたが、諸般の事情により断念、政府が2022年度から引き上げを始める方向で検討に入ったことが報じられました。

民間企業でも60歳が一般的な定年を65歳に延ばす企業が広がり始めています(サントリー、本田技研工業、オリックス、大和ハウスなどは既に導入決定済)

背景には年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられることや、人手不足が深刻で人材の確保が急務といった事情があることはいうまでもありません。

しかしながら、こうした動きが一般的かというとそうとは言い切れません。労政時報の最近の調査(2019年11月22号。調査対象は大企業中心)を見ると、「定年年長を変更していない企業が91.2%、60歳定年の企業が9割以上で最多」となっています。

企業内での人口構成においてバブル世代(定義は複数ありますが、おおよそ今年50~55歳)、団塊Jr世代(46~49歳)というボリュームゾーンを抱える企業にとっては、安易な定年延長は総額人件費の増加につながります。

導入の前提としてミドル世代を含めた年功的賃金カーブの見直しなど大幅な賃金制度の改定とともに、生産性向上、シニア世代のマインドセットも必要です。なかなか一筋縄ではいかない課題であること、労政時報の調査結果からもうかがえます。

経団連は、2020年春季労使交渉(春闘)の経営側の指針の中で、賃上げに加え、年功型賃金や終身雇用を柱とする日本型雇用制度の見直しを重点課題に掲げましたが、こうした動きも定年延長と密接にリンクしています。(「第1回:シニア雇用を巡る最近の動向(その2)」へ続く)



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