パリの街灯と赤い風船
パリの街を歩いていると、時々ハッとすることがありました。
と言うよりも、パリの全てが目新しくて、最初の頃はどこに行っても、驚きと感動の連続でした。
そんな感動をグッと押さえて、特に何事もないかのように平静を装いながら、僕は一人で街を歩いていましたが、
ふと、何気なく空を見上げて、街灯に結ばれた赤い風船を見つけた時に、僕は思わずハッとして、カメラのシャッターを切りました。
まるで、場末の小さな名画座で、古き良きフランス映画のロマンティックな名シーンを観ているような興奮と、形容しがたいノスタルジーを感じつつ。
だけど、一体ぜんたい、どうしてこの街灯には、赤い風船が結ばれていたのでしょうか? 僕なりに、その理由や経緯を、勝手に想像してみましたが、
もしかすると、赤い風船を持った可愛い少女が、いじめっ子に追いかけられて、手を離し、何かの拍子に結ばれたのかも知れません。
あるいは、旅芸人の道化師が、赤い風船を持ったまま、街灯をスルスルとよじ登り、遊び心で結んだのかも知れません。
それとも、ハットをかむった手品師が、種も仕掛けもないぐらい、アッという間に結んだのかも知れません。
いずれにしても、僕が見つけたこの赤い風船は、パリの空を彩るように、眩しい存在感を放っていました。
そして、この街灯もまた、シルクハットをかむった紳士のように格好よく、スクッと立っていたのです。
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