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本の世界とコレクション

僕が、集めること(コレクション)に目覚めたのは、僕がまだ随分子供だった頃(今でもまだ、子供っぽいところがありますが)、近所の駄菓子屋さんで買った、面子(パッチン)が最初のきっかけだったと思います。仲のいい近所の子供たちと、それを使って遊ぶうちに、それはどんどん増えていき(勝負に負けて、時には減ることもありましたが)、僕の世界も、日毎にどんどん膨らんで、ふと気がつけば、僕はすっかり、コレクターの一員になっていました。それからのちは、記念切手を集めたり、貝や木の実を拾って来たり、昆虫採集に夢中になったり、プラモデルやオモチャにハマったり、昭和の多くの少年たちが、当たり前に通過する、陽の当たる目抜き通りを、僕も通過しましたが、そんなある日のことでした。いつものように、大きな通りを歩いていると、その通りの隅っこに、別の世界へ通じるような、細長い路地を発見したのです。夕日も沈み、暮れなずみ、そろそろ帰る時間でしたが、僕は無性に気になって、たった一人でおずおずと、その路地に足を踏み入れました。するとそこには、人知れず、今まで見たこともないような、怪しくも、眩しい世界があったのです。夜な夜な、江戸川乱歩の小説や、寺山修司の歌集や、小川未明の童話を読み耽り、童話や文学という本の世界に目覚めたのも、ちょうどその頃だったでしょうか。

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それからのちは、自分も小説や童話を書こうと、何度も何度も試みましたが、その当時は全く書けず、僕は泣く泣く作家になるのを諦めて、東京や横浜で様々な飲食業を転々として(それでも不思議と、短歌だけは詠むことが出来ましたが)、二十代の後半で田舎に帰り、その後も、レストランで働いたり、洋菓子職人をやったり、パン屋の店長をやったりしましたが、ある朝突然、ある事件に巻き込まれ、人間不信に陥って、家の中に引きこもり、先が見えない暗闇の中で、幼い頃に使っていたサクラクレパスと再会し、絵を描きはじめ、軌道に乗って、調子に乗って、大阪で個展を開催したり、銀座で個展を開催したり、パリで個展を開催したりと、忙しい日々を過ごしつつ、それと同時に、古物商の免許を所得し、三十代で小さなお店『流星堂』をオープンし、コレクターとしての僕の熱は、ますますヒートアップしましたが、個展を終えて、パリから帰って、画家を休んで、結婚をして、五年が経って、それでもやっぱり、コレクションはやめられず、今もこうして、時を重ねた本たちに、魅了されているのです。

というわけで、今日は以前書いた文章に少し手を加えて、noteのマガジンにUPしました。考えてみれば、こうして文章や写真を残すことも、僕の大事なコレクションの一つなのかも知れません^_^


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