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Sissy

Re-Vive 7、最後の身体操作要素は、Sissy。これは、「伸展方向」への力発揮を意味しています。具体的に言うと、陸上競技のスタートの瞬間やウェイトリフティングなど重たいものを持ち上げる動作、バク転やブリッジなど、後方への動きを実際に行う動作、そのほかにもジャンプやタックルなどにおいても重要な要素だと思います。

まず、ヒトの股関節に特徴的な動きに、「ゼロより伸展域における伸展」があります。人間のように習慣的に股関節を伸展させる姿勢をとる哺乳類はほかにいません※1。すなわち、この動きはヒトが二足歩行を獲得する上で獲得してきた適応であるといえます。しかしその分、動きの制御は難しいと考えるのが妥当でしょう。


ヒトと異なり、アフリカ類人猿の腰椎は短く硬いため、腰を曲げ、膝を曲げて歩く二足歩行では、重心が股関節の前に位置する。股関節と膝関節が屈曲しているため、これらの関節の動きが悪くなり、その結果、運動コストが高くなる。※1より引用(一部改変)



垂直に体を立てる過程において、腰椎が長くなり、前弯しやすくなったと同時に障害が発生しやすくなりました。現に、伸展動作の前提が作れず、腰痛を起こしたり、下肢障害を起こしたりしている選手をたくさんみてきました。伸展動作の「前提」が何かというと、腹腔内圧と体幹筋群の適切なコントロールです。まず、脊柱の安定化機構が適切に働いていること。これなしに股関節筋群の機能発揮は難しいと言わざるを得ないでしょう。

「ケツを使え!」多くのアスリートが言われる言葉じゃないでしょうか。ハムストリングスの肉離れをしてしまった選手、膝の怪我をしてしまった選手、腰痛を起こしている選手、すべからく「ケツが使えていない」と言われていることが多いです。「ケツが使えていない」なら、殿筋のトレーニングだ、といってケツいじめ(ケツメイシのツアーの名前にならないかな?)、ばかりしていても、一向に問題は解決されず、そればかりかよくない方向へ走りつづけていることもしばしです。。

適切な腹腔内圧のコントロールが、股関節筋群の機能発揮の土台であることや体幹筋群の機能低下と殿筋群の筋力不足が障害や外傷につながることは多くの研究で示されています※2。また、体幹筋群の適切なコントロールがなされないと、代償的な脊柱の安定化機構として傍脊柱筋群と大腰筋による過剰な腰椎前弯による安定化が図られ、腰椎椎間関節や椎間板に対するストレスが増大すること、骨盤前傾による股関節唇へのストレスや股関節可動性低下、股関節屈曲時の腰椎骨盤リズムの破綻を招き、パフォーマンスの低下につながります※3。


腹腔内圧は脊柱を安定させ、下肢筋出力発揮の土台となる(※3より図引用)

ではどのように体幹のトレーニングをしていくか、については本シリーズのWaveやHollowingでお伝えしました。股関節筋群の機能発揮のための前提として、腹腔内圧の適切なコントロールと腹筋群の筋間Coordinationを向上させること。これをおこなったのちに、背面方向への筋出力発揮や動作練習をしていくと良いと考えています。

実際にどのような順序で何をおこなっていくか、動画を用いて解説していこうと思いますので、ぜひご覧ください!

※1 T  Hogervorst and E E. Vereecke. Evolution of the human hip. Part 1: the osseous framework. J of Hip Preservation Surgery, Vol 1 (2),  39–45: 2014
※2 AE Hibbs. et al. Optimizing Performance by Improving Core Stability and Core Strength. Sports Med 2008; 38 (12): 995-1008
※3 Richard ULM. Stability and Weighlifting. NSCA Coach 4.1-3, 20-36. NSCA.com

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