いつか飲んだ、コーヒーの味は。

 日常とは辛いものだ。
 終わりの見えない旅を強いられ、いつの間にか休みを数えてしまう。
 祝日があればそれだけで気持ちが楽になる気がした。

 結果を出せない自分はそりゃ苦しく、悔しさに満ちている。
 遠目で見て苦しむ自分をもう一人の自分が見ている。
 向かないなら辞めてしまえと。
 それでも辞める決断などできない自分がいる。
 挑戦者の皮を被った頑固者なのかもしれない。

 生きるとは苦みを知ることだろうか。
 他は要らず。他を求めず。他は我を知らず。
 すれ違いは数知れず。新たな友をつくり出せず。
 仲睦まじい二人の横を通り過ぎ、幸せになれよと心から思う。

 ある日、缶コーヒーを買った。
 コーヒーにいい思い出などない。
 黒い飲み物はこの世界の苦さを教えてくるからだ。

 だが、その日だけは違った。
 微糖だったが、そのコーヒーは確かに甘かった。

「日常は辛く、苦しく、苦いことばかりだ。だから、せめて飲み物くらいは甘くあってほしい」

 いつかまた会おう。
 それまで、我が道を行くとしよう。

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