見出し画像

イジりと自虐は流行らない方がいい

3/9のR-1はすごかった。今回の大会は芸歴制限が撤廃され、新旧の芸人が身一つでぶつかり合った素晴らしい大会だった。お笑いの大会が関東では特に少ないので一回一回の大会が豪華で、ファンとしては本当に嬉しい。

こうした大会でいい成績を出せたり、決勝に進出できれば、バラエティ番組にお笑い芸人が出たりする。このお笑い独特のノリが番組を盛り上げているという一方で、世の中ではこの芸人のノリが日常会話のベースになる側面も持ち合わせている。

お笑いが好きな私が思うに、お笑いのノリは芸人間の絶対的な安心感が前提にあると思っている。だから飲み会でちょっと知り合った程度で他人をいじるというのはかなり危険な行為であると考えている。

恋愛テクニックの中には、女性を少し落としてすぐに気持ちを上げる言葉をかけるという技が存在するらしい。なんとアホらしいのだろうか。いじられ役は面白くて笑っているのではなく、その場の雰囲気と相手の面目を保つための愛想笑いである、と私の黒い部分が出てきてしまう。いずれにせよ、相手を簡単にいじっても大丈夫だ、というのはいじる側の幻想であることが多々ある。

そもそも芸人にとっていじられるのがおいしいのは、いじられることで新しい仕事が舞い込んできたり、大御所と絡んで印象を植え付けられるからだろう。

相手の感情の上がり下がりに芸人のノリを使うのは飛んだ身の程知らずだ。ただ失礼なだけで終わることが大半である。是非やめることをオススメしたい。そんなことするくらいなら小さい失敗談を話すほうがよっぽど親近感が湧く。

だからといって、失敗談だけしたらいいというものでもない。中にはここすら履き違えて、自虐し始める人が現れるが、これもあまりオススメしない。自虐ネタはその人の個性が振り切れているという事前情報がないと面白くないからだ。

例えば、アインシュタインの稲田さん。彼はここ最近出てる芸人の中ではトップクラスのイジられ役である。自分の個性を完全に活かし、周りからも活かされ、数多くのブサイクエピソードがある。そのどれもが本人のトーク力も相まって面白いものになっている。

もし彼のイジられている一部を見て自分でも出来そうだと思われているイジられ役がいるなら、今すぐテレビに出た方がいい。ちょっと真似しただけでは到底敵わないことが目に見えて分かるだろう。

それに、イジりイジられの関係はうちわノリである。気心知れた仲でやる分にはいいかもしれないが、初めて会う人はただ困惑する。しらけた飲み会になったら、そのグループの飲み会に困惑した人は2度とやってこない。

というように、日常的に芸人ノリが横行している今の風潮は、ノリについてこれない人を爪弾きにする側面も持っており、会話が純粋に楽しめない原因にもつながっているように思う。

そもそも無理に笑わせなくても、人間はすでに個性的で面白いものであり、爆笑だけが面白いの基準になってしまうのは極めてもったいない。人を本当に楽しませたいのなら、まずは楽しむことが何よりも大切であり、確実である。笑いは伝わる。あなたが笑えば周りも笑うのである。

お笑いの根本は今を楽しむ心にある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?