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12年前の自分に一眼レフを買ってあげたい

大切な思い出は記憶だけじゃなく、記録にも残すべきだ。今まで経験していたことを、ばっちり覚えている人なんていないはずだ。

むしろ、思い出したくても、思い出せないことは年々増えているんじゃなかろうか。

「どうした海馬そんなもんか?そんなんじゃブルドン目指せないぞ」と自分の中の松岡修造が暑苦しく顔を出す。だけど修造もたまにはいい活躍をしてくれる。

おかげで、ふとした時に、当時の記憶がおぼろげながらもフラッシュバックしてくることがあるからだ。そして内容によっては恥ずかしい気持ちになったり、温かい気持ちになったりすることは誰しもが経験したことがあると思う。

そんな記憶を掘り起こすキーになるのが、「音楽」であったり、「写真」だったりする。
私でいえば、チャットモンチーの「サラバ青春」は、高校の卒業式から帰宅する電車の中のセンチメンタルな風景とリンクする。
福山雅治の「初恋」は、部活の朝練習前の6時、ユニフォームに着替えながらチームメイトAが歌うその曲が、失恋したばかりのチームメイトBに刺さって泣きだすワンシーンと繋がる。
こうしてみれば思い出せることは印象的なシーンばかりだ。

今でも、もし高校生に戻ったら、今度はこうするんだ!と夢想したり、ふとした日常をもっと鮮明に覚えておきたかったなあと思ったりする。
だから、音楽や記憶の中のワンシーンよりも強力な「写真」という手段で当時を保存しておきたかった。解像度の悪いガラケーの写メではなくてだ。まあこれはこれで十分ノスタルジーに浸ることはできるのだが。ただ圧倒的に解像度が悪いので、スマホでみると、自分が桑田真澄に見える。いやまちがってねえなよく撮れてるじゃねえか。

私は12年前の自分に一眼レフを買ってあげたい。
練習前に吹きさらしの更衣室、部員同士で身を寄せ合い暖を取る冬の朝霧が立ちこめる早朝。
漢文の予習ノートを借りに行ったときに呆れながらも少し嬉しそうな気のいいクラスメイトの表情。
真夏の部活終わり、全然泡立たねえな笑いながらとシャンプーした坊主頭。
2時限連続体育のサッカーハーフタイムの疲労感。
お腹の弱いクラスメイトがトイレに駆け込む毎度の休憩時間。
いつものコンビニにたむろして真剣にどのおでんを買うかを悩んでいる後ろ姿。

ぼくが知りたかったのは地球の自転の理由とかパブロフの犬のことじゃなくて、こういう日常だった。

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