ひとりのラッパーが画面を飛び越えたーずっと真夜中でいいのに。「綺羅キラー(feat.Mori Calliope)」


バーチャルとリアルの境目を打ち破るラップ

「VTuberが音楽に本腰を入れ始めている」と言われて久しい。先例ではシドのマオと明希がにじさんじの葛葉に「甘噛み」を提供したり、ホロライブでは宝鐘マリン「Unison」にてYunomiが意図的にキックの低音を削るような実験的な試みをしたりしている。

しかし、この事実がVTuberファン、あるいはコアな音楽批評家の枠を超えて支持されたか?という点については、まだ疑問が残る。強度を持った楽曲は既に数多くリリースされているにも関わらず、VTuberの音楽は、VTuberのファン以外からはあくまでキャラクターの付随物として受け取られがちな現状があるのではないだろうか。

その点において、「綺羅キラー」は、現在のJ-POPシーンの先頭を走るずっと真夜中でいいのに。が、話題づくりとしてVTuberを起用したのではなく、一人のラッパーとしてMori Calliopeと真っ直ぐに対峙したことが感じられる作品であった。Mori Calliopeのマシンガンのように捲し立てるラップと、ACAねによる金属のように響くハイトーンの噛み合いは出会うべくして出会ったバディのようであるし、Mori Calliopeのソロパートではフリーキーなギターとファンキーなベースが、ラッパーとしてのMori Calliopeの魅力を存分に引き出す。

今作はラッパー・Mori Calliopeが、VTuberミュージックの枠を超えて支持される契機となるのではないだろうか。これを機会に、バーチャル/リアルの境目なく「ミュージシャン」という枠で評価を高めるVTuberが増えて欲しいと願っている。




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