ラーニング・ラパン第6回公演「父、躍る」ネタバレ感想

ラーニング・ラパン「父、躍る」を見てきました。

宮地さんの役は次女美智子の旦那、勝彦さん。
銀行員の勝彦さんは真面目一徹に見えて、お父さんに対しても礼儀正しい!
でも口下手で話が全然上手くなくて、離婚危機に陥ってるのに上手く妻に伝えられなくて。
上手く説明できなくて思わず「(別れるなんて)そんなの絶対嫌だなぁ!!!」って言った時
私も後ろの席の若い子も号泣してたほどいいシーンだった。

あと、皆口裕子さんが戦争で亡くなった旦那さんの写真を見て泣く所ね。
あそこめっちゃよかったな…。
あのシーンだけで、長女が戦死した旦那さんを今でも想ってるって事が伝わったもんな…。

どの役もみんな面白くて可愛くて好きだった!
家族仲が良いのが一発でわかるの最高でした。
三女と四女が勝彦さん素敵って言える部分も、ノリが軽いけど可愛がられている三女の旦那も、なんでも言い合える三女とその旦那さんが羨ましい次女も。
中盤まで核心を突くような秘密や事情が暴露されない、不思議なままで進んでいくお話しだったけど、中盤から最後にかけて色々な事がわかっていくのが、より一層すっきりさせる。
引き出しの謎、何かと思ったけどお母さんからの手紙が閉まってあったと分かってホロリ。
最後の方でお母さんからの手紙を読んだときに「私、お母さんってもっと怖い人だと思ってた」というセリフ。
『母』という存在をなんとなくでしか知らない四女が、初めてお母さんの気持ちと触れ合う部分。今まで知らなかった母がグッと近くなって、四女は安心したんじゃないかなぁ。見てる側もなんだか「よかったねぇ」って気持ちになった。

例によって、あらすじを全く読まずに見に来たけれど、とても優しいお芝居だった。
これを見て「家族ってなんだろう」とふと考える。
こんなに姉妹が多く出てくるお芝居は初めて見たかもしれない。
四人姉妹でそれぞれの性格とか、歳がちょっとずつ離れている感じとかが何となくリアル。
四姉妹を男で一つで育て上げたお父さんは寡黙で頑固…ではなく、とても緩い。
いつも娘に「はいはい」みたいな扱いを受けていたり、
何かあると仏壇のお母さんの写真に色々語りかけていたり、
お酒を飲みたがったり。お茶目で可愛らしかった。
妻に先立たれ、娘が四人いるせいか、次女と三女の旦那さんととても仲がいい。
と、いうよりお父さんが義理の息子として大切に扱って接しているのが分かってすごく素敵だったし先に子供ができちゃって土下座しにきた四女の彼氏を気に入っちゃったのも良かった。
四女の彼氏、こと茂は、結婚前なのに先に子供が出来てしまってという事実を伝えるのに死んで詫びるのも辞さない!と言っていた。
本当だったら「父」というものは、ここで茂に殴りかかったり、
娘になんてことを!と言って追い返したのかもしれないけど、ここのお父さんは違った。申し訳ないと頭を下げに来た彼をすっかり気に入ってしまった。
長女が戦争未亡人という事も考えると、時代は戦後だけど
当時の「父」という概念からは外れていたのかもしれない。
でも、それだからよかった。

人は自分の置かれた状況を見て、咄嗟に考えた自分の役割というものに囚われている。
『父は厳格でいなくてはいけない、長女はしっかりしなくてはいけない、
結婚したら子供がいなくてはいけない、また、結婚前に子供がいてはいけない、夫婦の喧嘩は夫婦でなんとかしなくてはいけない、自分はこの夢を叶えなくてはいけない』
そういうのを全部、優しく否定して諭してくれるお芝居だった。
必ずしもそうではないし、そうじゃなくて良いんだよと。
たまには泣いたっていいし、言葉が上手く出なくても良いじゃないかって。
皆が皆、誰かに少しずつ甘えた時。人は血が繋がっていなくても家族になれるのかもしれない。

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