落語家の弟子

謎のキューピー第16回公演、見てきました。
特に前知識を入れないで行ったので、脚本が立川志らくさんだという事、演出は志らくさんの奥様だという事、落語家の前座さんのお話だという事をパンフで知る。

もう、めちゃくちゃ号泣した。特に魔ろん兄さんが宮地さん演ずる魔牙に落語を辞めるな、弟子を失う事を毎回悲しむ師匠に、落語を辞めると言えるのか?という場面。
ここでポイントなのが、魔牙は魔ろんや女将さんの口から「師匠が、魔牙は才能があると言っていた」というのを又聞きしているだけで師匠の口からそれが語られていないのと、魔牙が落語をしている姿を見ていないので本当に上手いのかどうかがお客である我々も分からない部分だと思う。
ここ、お客さんと魔牙の気持ちとか目線が同じに感じたの良かったなぁ。
上手く言えないのだけど、魔牙の落語が上手い、というのは何となく分かるけどそれが本当か分かってないというか、疑う余地があった所。でも他の兄姉弟子よりは上手いんだなってのは日々の生活でも分かる。
(兄姉弟子が最初のイメージあんまり良くないように見えるんだけど、ラスト近くなって味が出てきてみんな可愛いなって思えたのはとても救われた)
でも、本当に上手いのか?才能があるのか?って、思ってた。
それが後で師匠に「半年で二ツ目になれ」っていう言葉で、やっと魔牙もお客も「才能がある!」って確信が持てる部分というか、不明瞭な道筋の最後の方になってストンと上手く落ちるのが本当に落語的だった。

魔牙は自分の持ってた問題とか、師匠に隠してる事の後ろめたさとか、どんどんと現実と向き合わないといけないことが出てきて、そしてふいっと姿を見せなくなってしまう。あんなに色んな人に才能があると言われても、あれだけ引き留めても姿を消そうとする。
この、引き留めている人、引き留められている人のシーンを見ながら「あぁ、そうなんだよな、才能ある人は周りが何を言ったとしても、不意にいなくなってしまうんだよな」と考えながらめちゃくちゃ泣いていた。才能があるのに、もうその活動をしていない、活動ができていない人たちの事を思ってめちゃくちゃ泣いた。それは魔ろん兄さんの事だったり、心の中にいる別の人の事でもあった。
そういう儚さとか人としての脆さが芸事を美しくしているのかもしれないと、今回のお芝居で感じた。

ミーハーな感想を述べておくと、着物姿の宮地さんがとにかく目の保養でした。私宮地さんのつむじと背中が好きなんですが眺め放題でした(何)羽織も似合ってたなー。宮地さんの落語も聞きたかったけど、他の人の落語も聞きたかった。ブタ兄さんの「目薬」面白かったな。
私自身聞いてる演目に偏りがあるので、落語はまだまだ楽しめるな。

ちょいちょい笑ってしまったのが猫の名前「ガチャ松」ねw
あとロイホに行きたくなる巧妙な飯テロ芝居でもあった(飯を食うシーンはありません)
みんな不器用なんだから!もう!と、思いつつ、一番得なのは、な魔けもの兄さんみたいな生き方なのかな?と思ったりしたw
憎めない人ばかりの良いお芝居だった。

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