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アルケミスト〜僕の星は誰にも奪えない〜#1

【あらすじ】
少年アルブスはある日少女プエラに出逢い再会を約束する。様々な人々と出逢い成長していくアルブス。〈アルケミー(変容)〉をキーワードに、様々な『変わる』という事について考察したヒューマンファンタジー。

カール・グスタフ・ユングはこう残している。

「人間関係とは一種の化学反応である。」


人との出逢いと別れは僕らの心を変容させる。

それは単なる「化学」(ケミストリー)と言うよりも、「錬金術」(アルケミー)であると言えるだろう。

僕らの心は、黄金へと変容することがある。
一度変わってしまったらもう元には戻れない。

僕は変容(アルケミー)してしまったのだから。

君に出逢ってしまったのだから。

(参考図書・鏡リュウジの占星術の教科書IIより学び)

第一話〜心の星は誰も奪えない〜

【一枚目のカード・審判】


金木犀の花は誰に恋をしたのだろう。

僕らが出逢った2ヶ月前、僕らは今日ここで再会の約束をしていた。

僕の心は既に変容(アルケミー)していた。


この黄金色の金木犀のように。

2ヶ月前ー・・・

闇は、完全に光を奪えるだろうか。
希望の光、理想や夢、心のより所…。
生きるためには光がなければ生きる事さえ出来やしない。
だが闇の中にいる時、つい朝日が昇る事を忘れてしまう。永遠に闇は続くのだと、心から光を奪ってしまう。

僕は自分の中の闇と戦いながら、思い詰めた表情でその夜を、この街を駆けて行った。

気付くと橋のフェンスに手を掛けて、この戦いの負けを認めた。

目を閉じて身を投げようとした時、何かが駆け寄って来てあたたかい感触が僕を引き止めた。

僕は落ちなかった。知らない少女が僕を抱き締めていた。

僕の心はその時、変容(アルケミー)した。


青い星を左目につけたトンガリ帽の少女はサーカス団に売られあちこちを回っているらしい。
月夜の夜はいつも橋の上で明日の公演の練習をしていて、今夜は思い詰めた僕を見つけたと言う。

少女は僕が何故死のうとしたのか、何も聞かず、責めず、ただ傍で楽しそうにころころ笑いながら色んな話を聞かせてくれた。

「辛い時はね、全部星のせいにしちゃえばいいよ。そういう星周りだったって。」
「星が教えてくれるのはね、そのままでいいんだよって事だよ。君は君のままでいいよって。」
「星は命占で、タロットは卜占なんだけど、共通点があるの!ペンタクルは地で…」
「悲しくて、でも誰にも相談できない時は自分占いするといいよ。一番の理解者になってくれるから。」
「タロットもホロスコープもジオマンシーも易も占いは全部、未来を決めつけたりしないよ。決めるのは、行動するのは、全部私達だもん。」
「良い時もあれば悪い時もある。その運気は永遠には続かない。それが占いの考え方。」

僕は、気付いたら心のつっかえが取れて笑っていた。そして自分の方から自白した。もう大丈夫だと。そして二人で星を見ていた。

「母さんが、星になっちゃったんだ。逢うためには、僕も星になるしかないのかな…。」
「星は、心の内なる目で近付けばいいよ。君の中の星は、誰にも奪えやしないもん。」

母さんがよく言っていた言葉だった。

“心の中の星は誰も奪えない”


「君は、誰なの。」母さんとまた逢えたのかもしれない。
「私?私はプエラ!」僕は嬉しくなって、プエラと別れた後、母さんとよく来た港に来ていた。

『アルブス、お前の中の星を大切にしなさい。その星は、お前を支え、誰にも奪えない物になるから。』

「母さーーん!!母さんの星は、どれなんだよーー!!」

その時、強い風が僕を煽った。ぶわああああ。

僕は、海に落ちてしまった。

〜次回〜
#2「僕の名はビリー?!」
お楽しみに!




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