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あまり歓迎されてないよね(日記)

 帰省する日の朝の話です。怪談のはしりみたいな書き出しですが、そんなことは全くありません。朝ごはんに昨晩のあまり物を食べ、歯を磨きました。しばらくして口をゆすぎ、蛇口から垂れ流した水と共に洗面台に流したつもりだったのですが、うたまろ石鹸が排水溝を塞いでいて、実はずっと溜まっていたのです。数日後、わたしは帰宅してからそれに気がつき、あわててそれらを取り除きました。溺れていた石鹸は当然膨張し、濡れた本みたいになっていて、泣きそうになりました。けれど、泣きたかったのはきっと、うたまろの方だろうな、と思います。あるいはもう泣いていたのかもしれません。彼の欠片が浮かんでいた、あわだった水面がどうにも記憶に残って離れないのです。まさに土左衛門で、響きもどこか似ています。申し訳なかったので、新品のTシャツにとりあえず擦り付けておきました。
 いつか運命的にうたまろと結婚することになったとして、挨拶のために石鹸村に行ったら、あまり歓迎はされないでしょう。

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 自宅のあらゆる電球が切れている。生活する部屋のものを除いてすべての。
 大袈裟な書き方をしましたが、実際のところはワンルームでの一人暮らしなので生活に支障はあまりでないのです。しかし、両親がわたしを迎えに来た朝にトイレを使いたいと言うので渋々貸すと、電気がつかないことにひどく驚いたようでした。福島にある祖母の家に着いてすぐ、電気屋に駆り出されることになり、ここまで来てケーズデンキかよとは思いましたが、かなり助かる話でした。朝だったのでそのほかは電気をつける必要がなく、トイレだけ切れているものだと思っていた母に、実は風呂場や玄関も…と告げると呆れ果てていて、でもその時のわたしはLED電球を4つもいただけて嬉しかった。小童(22)だからLEDという響きがかっこよくてしかたがなかったのです。ダンボールが玄関に大量に溜まっていたのを見て紐もくれたけど、いい感じの縛り方を知りません。ChatGPTに聞いたらヒモ野郎と罵倒されました。
 帰宅して数日経ってもまだ電球は交換できておらず、今日こそはと意気込んで友達に、おれは今夜ついに電球を変えるぞ!切れてる期間が長すぎてどっちがオンでどっちがオフかわからないから今夜Twitter触ってなかったら感電したものと思ってください、と宣ったら、そんなんで感電しないよ、と言われました。わたしはそのあたりをよく知らないので、そんなものかとおもいましたが、やはり感電する気がします。その会話を思い出すたびにこわくなってまだ触っていません。本当は手が電球に届かないことを知ることがこわいのですが、そういうことにしています。
 もし将来、総合商社に就職したとして、電球を売る営業職にまわされたら、そういう事情を知らない方からも、なぜかあまり歓迎されないでしょう。

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記憶のなかで嘘をつく火花の色を口にする その時 その未来          

/ 芒川良(2023.6.14)

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