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おっさんと犬『ある犬の飼い主の一日』サンダー・コラールト

この表紙! 犬派にはたまらない。
かわいい……スフルク、かわいい……。

オランダでコロナ禍にベストセラーになった作品。
タイトル通り、犬を飼っている男の一日。
太った50代、バツイチで一人暮らし、職業は看護師、趣味は読書。

散歩中に老犬スフルクの体調が悪くなったので動物病院へ連れていき、姪(14歳)の誕生日のプレゼントを買い、夕方には誕生パーティに出かける。そんなある一日のお話。

このおっさんが、少年みたいに純粋で優しい人なんだよね。
読書家だからかな。犬好きだからか。
今は70代になる認知症おばあちゃんの老人施設に見舞いに行くのとか、ほっこりする。
このおばあちゃんは家族ではないんだけれど、かつての上司で、不倫相手でもある。
不倫相手、年上だな……。
お互いに楽しむだけの不倫で、その関係はなんとなく消滅したんだけれど、彼女が家族から見放されているからこの主人公が施設に行ってあげている。

優しい。ん? 不倫はダメだから優しくはないのか。
けれど、そんな関係の人の面倒を見るのはやっぱり優しい気がする。
お金も恋愛感情もないのに。情だけで。

姪ともソウルメイトのような関係を持っている。
お互いの悩みを分け合う。
十代と対等な関係を築けるって、ハートも十代のように純粋なんだと思う。

どんな目立たなくても冴えなくても、人生って素晴らしいなと思える、ふんわりした手触りの小説だった。
犬成分は思ったよりも少なめだけど、著者の写真に愛犬が映り込んでいる。そんな写真を使っちゃう作者かわいい。

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