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刑法#33 横領罪②

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横領罪の成立


→預かっていた物品を質入しようとしたが、質屋はこれを断った。
 質入申し入れの時点で不法領得の意思があり、既遂。したがって、結果的に質屋が受けいれなくても既遂とみなされる。未遂という事態はない。
→不動産を買い、所有権移転登記もしたが、代金を払わずに契約解除された。そのあと、その不動産にて自分のために抵当権を設定した。
 この場合、契約解除された時点で所有権は売り主に復帰している。登記は法定上の占有として刑事上はみなされるので、既遂となる。

両罰的事後行為


 ある不動産を売却した際に自己に登記名義があることをいいことに抵当権を自己のために設定する→ここで横領罪が一つ成立する。
 さらにこの後に当該不動産を第三者に売却、つまり二重で売買した場合はこの行為につき二度目の横領罪が成立する。
※最高裁判決H15.4.23

横領罪と背任罪


→両者とも信頼関係に背く財産侵害に関する犯罪である。ただし、横領は特定の物にしか成立しない。そして、横領における不法領得の意思とはその物について権限がないのに所有者のように振る舞うことである。
 これに対して背任における成立の範囲は広く、信頼関係に背く横領ではない財産侵害は背任罪の領域となる。

※債権証書を預かり、無断で取り立てて、その金銭を消費した。
→権利は物ではないため、横領罪ではない。信頼関係に背き横領ではない財産侵害であるため、背任罪である。

※ある代表取締役が自己の債務の弁済にあてるために会社名義の約束手形を振りだした。
→横領における不法領得の意思とはその物に対して権限がないのにあるかのように振る舞うこと。したがって、代表取締役には会社の小切手を振る舞う権限は当初からあり、にもかかわらず信頼関係に背く財産侵害であるので背任罪が成立する。
→なお、一般社員には会社の小切手や金員を扱う権限は基本的にはないため、一般社員がすると業務上横領となりうる。

横領罪と共同正犯


※Bはすでに第三者に売却した自己名義の不動産をAに対する債務の代物弁済として給付し移転登記を完了した。なお、AはBがした売買の事実を知っていた場合、AはBの横領行為の共同正犯となるか。
→成立しない。民法177条よりAは単なる悪意者でしかないから。

※Bは自己の名義で他人所有の不動産をAに対して売却し移転登記を完成させた。なお、AはBが真実の所有者でないことを知っていたにもかかわらずBに対して執拗に売却を働きかけていた。AにはBの横領行為の共同正犯となるか。
→成立する。横領行為の中心的役割をなしたと評価した判例がある。

演習問題

次の設問に○か✕かで回答せよ。

①AはBから預かっていたカメラを持ち出し質入れを申し入れた。しかし、質屋は断った。この場合でもAには横領罪が成立する。

→○ 質入れ申し入れ時点で不法領得の意志が外部に現れて既遂に達する。なお、横領罪には未遂が観念できない(規定がない)。

②AはBから不動産を買い、その旨の登記をした。しかし、代金不払いにより契約を解除された。解除後、Aはその不動産に自己のために抵当権の設定を受けた。Aには横領罪が成立する。

→○ 解除をされた時点で、不動産の所有権は売主のBに復帰をしたため、Aからみて、この不動産は自己の占有する他人の物となる。

③所有者Bから仮装売買により買主として土地の所有権の移転の登記を受けたAが、実際には所有権を取得していないにもかかわらず、自分の借金の担保としてその土地に抵当権を設定したが、Bから土地の実際の引き渡しまではうけてはいなかった。この場合でも横領罪は成立する。

→○ 他人の不動産について登記名義をもつ者は、横領罪においては法律上の占有があるとされる。

④AはBから債権証書を預かった。その後AはBに無断でその債権を取り立てた。Aには横領罪が成立する。

→✕ 権利は物ではないため、Aは他人の物を領得してはないため、横領罪は成立しない。背任罪の成立が問題となる。

⑤甲が個人的な債務の弁済のため、自己が代表取締役をしている会社名義で債権者乙あての約束手形を振り出し、乙に交付した場合には、横領罪が成立する。

→✕ 代表取締役には手形を発行する権限はあるため、背任罪が問題となる。

⑥甲が割引の仲介をする意志がないのに、仲介をする旨のうそを言って乙から手紙の交付を受け、これを自己の債務の担保に差し入れた場合でも横領罪は成立しない。

→○ 詐欺罪が成立し、横領は不可罰的事後行為となる。

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