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刑法#22 罪数①

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罪数


→一罪と数罪かを判断する基準については構成要件に該当する数で判断する。
→基本的には侵害された法益の数であり、たとえば三人を殺めれば三つの殺人罪である。
→放火に関しては社会的法益の侵害であり、放火による公共への危険性に対してカウントする。したがって、一つの放火により、三軒の家屋が焼失したとしても一罪である。

接続罪


→特定の期間に同じ場所で犯罪をした場合、一罪とカウントする場合がある。
 たとえば二時間の間に同一の場所から三回米俵を盗んだ場合である。この場合は数罪は一罪である。

単純一罪


→一つの行為が構成要件を満たし一つの犯罪となる、基本的なパターン
→わいせつ物頒布罪は、わいせつなものを複数人や複数回にわたって頒布しても一罪である。

包括的一罪


→たとえば、あるものが準備をして、殺人行為のために銃弾を発射し、被害者の衣服を損壊し、被害者は死んだ。
 準備罪は殺人罪に吸収される。
 器物損壊罪も殺人罪に吸収される。
 すべて殺人のための一連の行為とみなされるため。

状態犯


→窃盗罪など、行為の後も違法状態が続くこと。酒飲み運転(道路交通法違反)もそうである。
→状態犯である窃盗罪で違法状態にある中で器物損壊をしても(その物を壊しても)窃盗罪の一罪である。窃盗で占有してる物を壊すことはは不可罰的事後行為とされる。
※窃盗罪は被害者が占有を回復できないことを想定しているため、重くなっている。

併合罪


→確定裁判を経ていない2つ以上の罪。科刑が併合する。禁固以上の刑が確定すると、それ以降新しい確定裁判を経ていない罪が発生しても併合罪とはならない。

→併合罪の例
①A罪懲役10年、B罪懲役10年の併合罪
併合罪加重すなわち、禁固や懲役で長期の方の1.5倍が限度なので、20年でなく15年
②懲役10年と3年の併合罪
→13年。併合罪加重は15年なので13年でよい。
③死刑、有期懲役、罰金の併合罪
→死刑のみ刑がかされる。
④無期懲役、有期懲役、罰金の併合罪
→無期懲役と罰金が科される。
⑤懲役と罰金の併合罪
→併科
⑥罰金と罰金の併合罪
→併科

科刑上一罪


→複数の犯罪類型の要件を満たすが科刑は重い方にするという罪数類型。
→刑法54条の「一個の行為」とは構成要件を離れて自然観察的にみて、社会通念的に一つとみなせるもののことである。
→観念的競合と牽連犯がある。

観念的競合
→一つの行為が2つの罪名にふれること。
ex.一つの行為で複数人死亡
※銃弾、薬品、爆弾などで
 職務中の警官に怪我を負わせた
※公務執行妨害罪と障害罪
 公衆の面前で強制わいせつ
※公然わいせつ罪と強制わいせつ罪

牽連犯


→犯罪の手段や目的となる行為が、他の犯罪の罪名にふれること
ex.住居侵入と窃盗、私文書偽造と詐欺、偽造私文書等行使と公正証書原本不実記載

【コラム 評価上一罪】
構成要件を一回だけ充足していることが単純、明確に認められる場合には、単純一罪という。これに対して、構成要件を複数回充足しているように見える場合であっても、構成要件を一回
だけ充足していると評価される場合を評価上一罪という。
→評価上一罪には法条競合と包括的一罪がある。
①法条競合
→一つの行為を行い一つの結果を発生させた場合に、複数の構成要件に該当するようにみえたとしても、複数の犯罪の成立を認めることはできないため、構成要件の相互の関係から一つの構成要件によって評価されるにすぎない一罪。
→たとえば殺人の予備をおこなった後で、殺人行為により既遂となった場合、殺人既遂罪で評価され、予備罪の成立は認められない。
②包括一罪
→包括一罪とは複数の法益侵害結果が発生しているが、一つの構成要件に包括して評価される一罪である。

演習問題

次の設問に◯か✕かで回答ください。

①Aが所有し、居住する甲家屋と、甲家屋に隣接するBが所有し、居住する乙家屋の二棟を燃やす目的で、甲家屋の壁に火を付けて乙家屋に延焼させ、これら二棟を全焼させた場合には、二つの現住建造物等放火の既遂罪が成立する。

→✕ 放火罪は社会的法益の侵害であり、一つの放火行為からは一つの公共の危険が発生したと考える。

②わいせつ文書を数回にわたり頒布してもわいせつ物頒布等罪の一罪であるし、賭博の常習者が何度賭博をしても、常習賭博罪の一罪である。

→◯ わいせつ物頒布等罪は、もともと繰り返し頒布することが構成要件の内容となっている。

③窃取した他人の自転車を窃盗犯人が損傷した行為は、器物損壊罪を構成しない。

→◯ 窃盗罪は状態犯であり、その状態で対象物を損傷しても器物損壊とはならない。すなわち、不可罰的事後行為である。

【コラム 継続犯と状態犯】
前者は監禁のように実行行為が長い、すなわち継続しているものである。後者は窃盗のように犯罪行為の終了後も違法状態が続くことである。

③没収は常に併科が可能である。

→◯ 付加刑であるからである。したがって、死刑+没収という組み合わせもあり得る。

④殺人をし、その死体を遺棄した場合、殺人罪と死体遺棄罪は牽連犯となる。

→✕ 一つの法益を犯すための、手段結果であるとは言えず、それぞれ独立した行為である。

⑤暴行や脅迫をもちいて性行をし、その翌日に犯跡を隠蔽するために殺害をした。この場合、強制性行等罪と殺人罪は牽連犯の関係にある。

→✕ 通常は殺人のために強制性行はしないし、強制性行をして殺人するものではない。互いは独立した犯罪であり併合罪である。なお、基本的には犯跡隠蔽のための犯行は新たな法益の侵害となる。

⑥他人に窃盗を教唆し、その結果窃盗を実行した者から窃取した財物を買い受けた場合は、窃盗教唆罪だけが成立し、財物を買い受ける行為は盗品等有償譲り受け罪を構成しない。

→✕ それぞれの併合罪となる。なお、窃盗犯人自身が盗品を売買しても別罪を構成しない。不可罰的事後行為であるため。

⑦他人から金員を窃取した上、その金員を公務員に対して賄賂として供与した場合は窃盗罪の他に贈賄罪が成立する。

→◯

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