見出し画像

読書感想文『Another 2001』

この記事は?

読書感想文というタイトルだが、全く小学生が真似しても仕方のない散文なので注意しておくこと。また、本題でもあるが本冊はミステリーホラーがメインだから、感想文には適さない。

ネタバレを以下数行先からします。『Another』『Another エピソードS』の中身にも触れるためこれら前作を読んでいない方も控えてください。

まず、ネタバレにならないところから。
残念ながらアニオタなので、今回の感想はアニメ『Another』と関連している。私の『Another』はちょうどアニメ化された頃にアニメを先に見たか、いや、恐らく小説を先に読んだ気がするが、そこからスタートした。ミステリーといえば、『イニシエーションラブ』や『うみねこのなく頃に』(これがミステリーかファンタジーかはひとまずおいて)、そしてその後京極夏彦の『百鬼夜行シリーズ』も読んだ。一方でいまだにアガサクリスティやらのいわゆる古典ミステリーは知らない。その上での感想と踏まえて欲しい。

正直なところ、文庫版の辻村深月さんのコメントがまさしく整ったものであれに要素は詰まっていると思う。それを少し、個人的な感想も踏まえて書き記したい。

まず、『Another』はミステリーとして王道である一方、制約が多すぎるようにも思う。「もう1人」という記憶すら改竄するその仕組みが解決を困難にし、今回であれば榊原が出てこないと解決しようがない、とすら見える。いわばそれはクローズドサークルなのに外部と連携が取れて、それでwhyダニットがわかるような。
その上で、逆に犯人(もう1人のうちの1人)がわかっているという状況で始める、もう2人(anotherとは正確には異なるわけだが、読者としては犯人は1人に絞れているのだから良いという、逆説的状況を私は好ましく思う)という新しい要素を入れ込んだため、ミステリとしての面白さは若干かけてしまっていると思う。むしろ『Another』の小説、アニメのトリックは上手く行きすぎていて気持ち悪いレベルに面白かったのだと思う。次のホラー要素にも繋がるが、人を死なせ過ぎてだれがもう1人なのか、絞れてしまっているのも難しいところだ。ただ、恐らく作者が重要視している「どこから2人になったのか」というところは面白い要素だと思った。完全解を求めようとする読者からするとなかなか及ばない、問題として提示されていないのではないかと思う一方、読み直してみたいと思わせるポイントである。

この作品、「Another」シリーズはホラーエンタメとして構成されている。階段で滑って傘が喉を突き刺してしまう、という確かに日常で起こらないとは言えないがねーよという(あるあ……ねーよ、という懐かしいミーム)伝説的な事故を始め、ことごとくすごい死に方をしていくのは本当に面白い。アニメの洋館事件はとんでもない描写になっていて、もはやあり得ないとかを言わす暇がないのだが、今回はそれを越えようとしているように思う。意図的に試みているのが(ある意味死なない事件も含めてミスリードおよび作品の雰囲気作り)無理をしているようにも思えた。それでも最後にヘリコプター出てきたのは本当に意味がわからないし、大爆笑してしまった。次回作にプレッシャーがかかってしまうのが私は心配だが、これは「Another」シリーズでしか味わえない醍醐味なので楽しみだ。

最後に本作のミステリーとしての種、そして青春小説としての種について思うところを。『Another』から思う自然なことは、これはいじめを題材にしているということだ。誰かをいないものにする、そんないじめが正当化される。『Another 2001』で試みられたのは本当のいじめに流用されてしまうということ。それが3部構成の1つ目。邪な気持ちでいないものを引き受けたからこそ、こんな目にあってしまうという背景がついているのも、いじめっ子がいじめられる側に回るというパターンを上手く生かしている。
始めから犯人とわかっている赤沢は、優秀な主人公の助手を勤めている。ある意味そのポジションの人物が作品途中で亡くなることはミステリーの掟に反する。もちろん真の助手は見崎なのだから問題はないのだが、葉住を鬱陶しく感じるのに対し、いとこという立場以上に親しくしている赤沢には異性の好意を少し感じる。ここがこの作品の2つめのテーマ。『Another』でも榊原と見崎の関係は恋人ではなく、そしてそのまま、まるで自家栽培だから上手く実らなかったかのよう。だからもう少し意図的に恋愛要素を持ち出したし、そしていい関係だった相手が犯人であるという、これまた典型的なパターンに落とし込めているのである。この助手のような振る舞いと好意を寄せている人の振る舞いとが両立している不思議な存在だからこそ終盤に主人公を支えられるポジションに当たるのだ。
そして最後に見崎の双子、そして実の母、義理の母という関係性である。これに関しては『Another』では描ききれなかった、むしろ『エピソードS』の方がそういった血の繋がりというテーマを描けていたからこそ、今『2001』で扱うにふさわしいことのように思う。辻村さんのあとがきをあとは参考にしてもらえば、私が拙い文章で書くよりまとまっていて素晴らしい。最後に見崎が少し微笑みながら胸に突き刺す描写は、それでしか「Another」足り得ないと思わせるもので解釈一致だった。

書いてみると本当にとっちらかってしまった。これが上手く纏まっているのだから小説はすごい。
あとはこれのアニメ化が待たれるだけである。いやー出来たらすごいなぁ。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?