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えっ、それも外注ですか?

 脳梗塞で倒れて認知症になり、要介護5になった母は、介護老人保健施設(老健)に入所してから4年、94歳になった。昨年やっとのことで家を処分し、住所を私の家に移してから、郵便物が一番届く人になった。

 大変長くなるが、年齢を考えれば「おびただしい」数になる郵便物について、介護はやがて必要になると思って、しばし我慢してお付き合いいただきたい。

 一番基本的で必須なのが、医療・介護の基本的な「〇〇証」で、5種類ある。申請書に記入返送して入手するが、老健や病院で必要だ。

  1. 後期高齢者医療被保険者証

  2. 後期高齢者医療限度額適用・標準負担額減額認定証

  3. 介護保険者証

  4. 介護保険負担割合証

  5. 介護保険負担限度額認定証

 市役所や区役所の複数の窓口から送ってくる。この他にもある。

  • 各役所からの月次の「介護保険限度額認定決定通知書」と「(払い過ぎによる)還付金振込通知」

  • 時々入院すると、病院からの請求書とずいぶん経ってから、「払い過ぎ医療費の還付金通知」

  • 老健からの請求書と老健訪問歯科からの請求書と報告書

  • 市役所から定期検診の連絡文書(老健に提出が必要)

  • 最近では、コロナワクチン接種コールセンターから接種券、市役所から価格高騰重点支援給付金本部に出す申請書、などなど。

 なお、「還付金」は、特殊詐欺で多用される手口の一つだ。月次なので、結構「タイムリー」に固定電話が鳴る。老人は引っかかりやすいのだ。

 日本の介護や福祉が「手厚い」ということなのだろうか?そうは思えない。まず言えるのは、こんな膨大な手続きを、老人が一人でこなせるとは到底思えない。

  介護には関係無いが、年金関連の2種類の月次連絡と、年に一度の「アンケート調査」(多分、年金受給者の生存確認)を加えたのが、母宛の郵便物の90%以上を占める。クリスマスや正月などに、古い友人から送られて来る手紙は数通だ。

 行政文書の面倒の一つは、返信が求められるものが大半で、封筒の色や毎回似たようなパンフレットが同封される。昔は大抵「料金別納」の返信用封筒が同封されていたが、事務経費削減で、最近は84円切手を貼らないと返送できないのがほとんどだ。

 私も若くはないので、時々自分の名前を書いてしまったり、ハンコを押す場所を間違えたりして、再送付・再返送ということも時々ある。

 役所から、返信した手続き書類を「委託業者の手違いで紛失していたことが判明したが見つかった」とお詫びの電話があって、事務手続きを外部に委託していたことが判明した。そうだとは思っていたが。

 コロナワクチンの接種を巡って、大手旅行代理店がコールセンター業務を受託し、10億円余りを不正請求・受領していたことが露見したが、私が受けたワクチン接種会場は、人材派遣会社が元請し、再か再々の受託イベント会社の派遣社員が働いていた。

 いつからだか知らないが、役所業務の外部委託=外注が大流行おおはやりで、ますます拡大しているようだ。何か問題が発覚すると、受託会社の不祥事になり、役所は「管理責任」を問われるが、責任逃れはしやすいのだろう。会計検査院が、不透明・不要な業務委託費にメスを入れた報告もある。

 国家予算に占める支出割合が突出して大きい医療・老人福祉・年金は言うに及ばず、今般のコロナや各種補助金、そしてマイナンバーカード関連費用などで、政府が使う外部委託費用が膨大な額に膨れ上がっているのは間違い無いと思う。

 かく言う私も、独立自営業者=つまり業務受託業者なので言いにくいが、何でもかんでも外注の風潮は、民間企業にもある。

  • ある会社の社長が、気のせいか社員が大幅に増えたような気がして人事に調べさせた。増員が認められない部署で、派遣社員と客先常駐社員を大幅に増やしていたことが露見した。「物件費」で処理していたようだ。増員していないのに、机やパソコン、電話を増やしていたことで、足がついた。

  • ある業務の報告を求めると、担当責任者が「担当業者を読んで説明させます」と言うので、「君では説明できないのか」と叱責し、担当を外した。仕事を「丸投げ外注」し、業務の内容をほとんど知らなかったことが発覚した。

 コールセンターを筆頭に、こんな業務も外注していたのかと言うケースもよくあるようだ。業務の丸投げ=責任の丸投げにならないように、目を凝らす必要がありそうだ。

(了)



 


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