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『アトミック・ブロンド』 ージャッカルと同種の人間ー

 『アトミック・ブロンド』(Atomic Blonde)は、スパイ・アクション物でとても面白いのですが、主人公が多重スパイをしているせいか、その設定や内容があまり頭に入って来ませんでした。
 最初に映画を観たとき、主人公の近接戦闘能力の高さと躊躇のない行動力とバイセクシャルが印象に残りました。
 二度目に観たときは、主人公の主たる目的と立ち位置(どの組織に所属しており、どの組織に潜入しているのか。本当の敵は誰か。)を確認する予定でしたが、結局明確に把握できませんでした。映画のラストシーンで主人公の正体が分かるのですが、今までのいきさつから「これも偽りの言動なのではないか。」と思ってしまい、信用できないのです。

 主人公の女性エージェントは、かなり魅力的ですが、「全身これ鋭利な刃物」という感じがして、とても知り合いになりたいタイプではありません。
 また、この映画自体が、「死はすぐ隣にいる。」的な描き方をしており、映画全体から乾いた冷たさを感じました。
 特に、敵が主人公を囲んで殺そうとするシーンで、敵は主人公に死体収納袋の上に立つように求めます。死体処理が楽になるから。
 数的優位にある敵は一人きりでしかも拳銃を持っていない主人公に対し死体収納袋まで歩く時間を与えてしまったのは、「勝ったも同然」というおごりが生じていたのでしょう。
 この後、主人公は状況を逆転し、その場の敵を全員射殺します。拳銃は意外なところに隠されていました。
 主人公は死体処理など気にしませんし自分以外は全員敵ですから相手構わず発砲します。近接射撃の定石どおり、一人に複数弾命中させて無力化と短時間でも絶命を狙っています。
 この映画終盤の殺戮シーンと、映画冒頭の自動車内での室内格闘シーンは、この映画がスパイアクション映画であることを遺憾無く表現していると思います。

 なお、主人公はバイセクシャルな行動をします。映画初見のとき、主人公の無警戒な行動に違和感を覚えました。過度のストレスに晒されているので、過剰な性欲があったのかなと思いましたが、それにしても飲み屋でさっき知り合った相手とするのは無謀です。
 敵の襲撃が予想される状態では、寝ているとき、風呂に入っているとき、トイレに入っているときは危険と言われますが、性行為のときも危険です。特に、相手が信用できない場合はなおさらでしょう。
 でも、しばらくして、主人公は仕事の一貫としてやっているということに気づきました。
 このような、ビジネス・バイセクシュアルには既視感があります。映画『ジャッカルの日』の主人公ジャッカルも同じようなことしていました。
 性のビジネス利用という観点でいうと、両者とも徹底しています。

以上

#映画感想文 #アトミック・ブロンド

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