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映画『RED』 (1288文字)

 映画『RED』は、”Retired Extremely Dangerous”(引退した超危険人物)という意味で、主人公の仲間は一人を除いてみな高齢の危険人物でした。その一人は、年金事務所の電話係のサラです。彼女だけ諜報員でもなければ殺し屋でもありません。でも、主人公フランク・モーゼズと付き合うはめになった、いわば巻き込まれた被害者です(後に被害者でなくなりますが。)。

 この映画は全編面白いのですが、ただ一点疑問に感じるシーンがあります。
 それは、映画の冒頭部分で、主人公フランクが襲撃されるシーンです。
 クリスマスが迫る冬の夜、フランクの家に暗殺舞台が忍び込みます。服装や装備からみて明らかに素人ではありません。
 フランクは侵入者数人をあっという間に倒し、彼らの一人から奪った銃弾をコンロの上のフライパンに入れ、コンロの火を付けます。
 フライパンが熱くなって来るとその熱が銃弾の発射薬を発火させ、弾丸が飛び散ります。
 すると、その音を銃撃が始まった音と解釈した家の外で待機していたチームが突撃銃を撃ちまくりながらフランクの家を強襲します。
 フランクは、この強襲チームも片付けるのですが、このシーンのフライパンから銃弾が飛び散るところが腑に落ちません。
 弾薬は、大きく弾丸と薬莢と発射薬で構成されています。銃を撃つときは弾薬を銃の薬室に入れ引き金を引きます。引き金を引くと、薬莢の後部を撃鉄などが強く叩き薬莢後部の雷管(らいかん)が発火させます。その火が発射薬を燃焼させ弾丸を強く押し出すことになるのですが、このとき発射薬の燃焼は四方八方に圧力を与え、薬莢は膨張しようとします。銃の薬室は丈夫な金属でできていているのでその薬莢の膨張を押さえ込みます。その結果発射薬の燃焼から生じる圧力は弾丸に集中することになり、弾丸はより強い力を受け銃口から飛び出します。
 ということは、薬室のように薬莢の膨張を押さえるものがないと、発射薬の燃焼によりまず薬莢が膨張・破損し、同時に当該薬莢が後ろにはじき飛ばされるように思います。順番からいうと弾丸の発射はその後ということになります。弾丸には薬莢よりも質量があるので慣性の法則によると、弾丸が運動を開始するのは(弾丸がその場にとどまる可能性もあります。)、薬莢自体の膨張・破損、薬莢のはじき飛ばされの後になるはずです。
 そう考えると、発射薬の燃焼エネルギーの多くが、薬莢の膨張・破損と薬莢をはじき飛ばすことに使用され、弾丸の運動に向かうエネルギーはあまり残っていないのではないでしょうか。
 私は銃を撃ったことがないので、この辺は想像でしか語れませんが、少なくても映画のようにフライパンから銃弾が発射される姿は、あたかも銃から弾丸が発射されるようにはならないのではないかと思います。
 フランクの家の外で待機している強襲チームは銃撃のプロフェッショナルでしょうから、その辺は音で判断できそうなものです。

 まぁ、これは一種の難癖みたいなものです。
 映画『RED』は、名優が出演していてシナリオも面白い、いい娯楽映画だと思います。

#RED #弾薬

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