『パリのすてきなおじさん』を語る

 『パリのすてきなおじさん』(絵と文 金井真紀(かないまき)、案内 広岡裕児 柏書房)は、パリ在住のいろいろなおじさん(多くは移民や非キリスト教徒など)28名にインタビューした内容をまとめたものです。
 この本は書店の書棚に表紙をこちらに向けて置かれていました。よく見ると、表紙は四種類あるのに、題名は同じ「パリのすてきなおじさん」とあり、巻数などはありません。手に取ってみると帯に「本署は帯のデザインが4種類ございます。4つとも中身は同じです!」と書かれていました。
 この、他書との差別化の工夫は斬新です。
 そのアイディアに少し感動したので、すぐ買いました。
 内容は暗くありません。移民とか異教徒とかいろいろ苦労があったろうし、今でもあるのだとは思いますが、そういうことを全面に押し出すようなことはなされていません。かといって根拠なく明るいというわけでもないので、「人生って苦しさを明るさで包むってとこあるよね。」って思いました。

 あまり本の内容には触れないほうがいいとは思いますが、この本の31ページにアルジェリアとフランスについて書かれています。フランス大統領といえばド・ゴール。ド・ゴールといえば映画『ジャッカルの日』。と連想する人は案外たくさんいるように思いますが、『ジャッカルの日』の冒頭でド・ゴール暗殺の原因が彼のアルジェリア独立容認にあることが示されています。「アルジェリアって、フランスの植民地だったのか。というか、アルジェリアってどこ?」と思った人は少なくないと思います。フランスと地中海を挟んだアフリカ北部にアルジェリアはあります。アルジェリアの東側にリビアがあり、さらにその東側にエジプトがあります。なお、アルジェリアの南側にニジェールがあり、さらにその南側にナイジェリアがあります。
 とにかく、これだけ近ければフランスの植民地であっても不思議はありませんが、歴史の本でアルジェリアの歴史を調べてみると、植民地時代の厳しさに暗い気持ちになりました。

 それにしても外国映画って、私達が知らない歴史を下敷きにしていることがたくさんありますね。

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?