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『ウインド・リバー』 ー被弾描写 伏線回収 ネイティブー

 映画『ウインド・リバー』は、強姦痕のある少女が極寒の地で死んでいた事件を追う物語です。
 基本構成は、ミステリですが、場所はウインド・リバー・インディアン居留地ということもあり、公権力から見放された感がある土地であるため、捜査人員はとても手薄です。
 まず、インディアン部族警察所長ベン、FBI新人捜査官のジューンそれに、正式な捜査権はありませんが捜査に協力することになった合衆国魚類野生生物局のコリーが中心になります。

 死亡していた少女(見た感じでは年齢17歳くらい)は、下半身はパンツだけで裸足という状態でした。
 そのため、殺人の可能性が高いと思われましたが、直接の死因は冷気を吸ったことによる肺の出血と窒息死であったため他殺とは断定されませんでした。このことは、映画終盤で主人公に利用されます。

 この映画では、銃撃戦で被弾した描写に特徴があります。
 最初の銃撃戦は拳銃で行われますが、何発か被弾した相手は意識がそぞろながら反撃を試みます。その姿はすっかり酩酊しているように見えます。拳銃弾を浴びても、脳幹を傷つけられた場合以外は即死することはあまりなく、死因としては失血死が多いそうですから、命中弾を受けても少しの時間(限界を超えて失血するまで)は意識があるわけで、筋肉の動作に障害がない限り反撃できます。映画でも、被弾した容疑者が目の焦点が合わない顔をして反撃しようとしていました。

 映画の終盤にも拳銃による銃撃戦が起こりますが、こちらの方はコリーが猟銃(ライフル銃)で参戦してきます。コリーの猟銃の銃弾を受けた容疑者の倒れ方も、コリーが容疑者らの居住区内に向け発砲したときの描写もリアルに描かれていたように感じました。(あくまで感じたというだけです。私は実際に銃の発砲を見たことも着弾した状況を見たこともありません。)

 ベンは被弾し倒れ、ジェーンも撃たれて動けませんが、コリーは真犯人を追い詰め殴り倒し、山の上に連れていきます。そしてブーツを脱がせて極寒の中裸足で雪山を走らせます。
 真犯人は、映画冒頭で発見された少女と同じように冷気を吸ったことによる肺の出血と窒息死で死んだことが観客に暗示されます。
 この真犯人の死は他殺と断定されないでしょうから、コリーの身は安全だと観客に暗示されます。

 映画は、「雪と静寂以外すべてを奪われた。」というネイティブの発言の現実を私たちに明示して終わります。

 私は、アメリカのインディアン居留地の現状に疎いので、この映画が伝えたかったことの大半を理解できていないのでしょうが、映画として優れていると思いました。

#映画感想文 #ウインド・リバー

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