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『古代ギリシアの歴史』 読後感

 『古代ギリシアの歴史 ポリスの興隆と衰退』(伊藤貞夫著 講談社学術文庫)を読みなじめて半年。ようやく300ページ弱のこの文庫本を読み終えることができました。
 ギリシャ文明には、①人の名前が長くてロシア文学と同じくらい覚えにくい。②裸にシーツを纏(まと)ったような服装で(たまに樽の中に入っている人もいますが)、さかんに哲学を語っているような印象しかない時代におもしろさがあるのだろうかという疑問がある。③一方、現代でも観光客が集まる文化遺産を多数建造した古代文明の実態を知りたいとも思う。と、複雑な思いがありました。
 また、小学校のころ「ソクラテスは『悪法も法なり。』と言って毒を呷(あお)って死んだ。」と教えられましたが、一方で「政府の圧制に苦しんだ民衆は革命を起こし・・・。」とロシア革命のことを教えられ、「どっちが正しい姿勢なのだろう? 悪法に従うのは正しくないように思うが。」とずっと思ってきました。このことも、「いい機会だから古代ギリシアの本を読もう。」としたきっかけでもありました。

 読んでみると、スパルタやアテネなどのポリスの時代に入るまでは、「古代史ってこんなもんだよな。」と退屈を覚えながら読みました。そんな感じですから、ちょっと読んでは休んで他の本を読み。忘れた頃にまた少し読むという遅読ペースできたので、読み終えるのに半年以上かかりました。

 ところが、アテネの民主制が始まる頃になると俄然おもしろくなり、そこからは一気加勢に読みました。
 アテネの民主制は、私の解釈では、「ポリスを支える人の数が多くなることで、貴族政治の時代から大勢が政治参加する時代に入り、その大勢の声を政治に反映させる方法が民主制だった。」ということで、「ポリスを支える」というのは、武具を自弁して戦闘に参加するということで、当時の戦闘はファランクス(密集体型)を組んで行われたため大量の歩兵が必要でした。そしてこのファランクスで戦闘に勝つことがポリスを維持するために必要となったことから、ファランクスを構成する兵(常備軍でなく、普段は他の仕事をしていました。)の発言力が強くなり、結局彼らを政治参加させる必要が出てきました。
 当時は直接民主制だったのと、民主制を構成する人々はわりに単純というか扇動に乗りやすく、私の受けた感じでは要所要所でその衆愚性を現しているように思われます。
 また、この時代も富は重要視されていますが、富を積極的に活用しさらに富を産ませるといった資本主義的な発想は皆無で、せいぜい貿易で利益を得る工夫があったくらいのようです。

 こう考えると、西洋の文化がものすごくゆっくり発展し産業革命や資本主義の発展につながったんだなぁ、と思いました。

 この本は、ローマがギリシア進出というところで終わります。

 まだ、読み終えたばかりなので、私の中で知識の熟成が進んでいません。あと何度かこの本を読み返さないと、そもそも正確な知識が蓄積されないでしょう。この読後感にも見当違いなことを書いてしまいそうです。

 この先の西洋史は、ギリシア史に比べるとまだ知っていることが多いはずなので、読むのが楽しみですが、ギリシア史をできるだけ正確に把握してからにしたいし、西アジアの歴史も押さえておかないといけないとも思っています。

以上

#古代ギリシア #ギリシア歴史 #ポリス

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