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映画『殺しの免許証』を語る

1 映画の内容(ネタバレなし)


 『殺しの免許証』(免許証はライセンスと発音するようです。)は、子供のころ、大晦日の深夜つまり元日の未明にテレビで観た記憶があります。
 内容は、「反重力装置」を発明したという博士を警護する諜報員と、その「反重力装置」を奪取し博士を抹殺しようとする秘密組織との戦いを描きます。

2 主人公について

 主人公は、英国情報部の腕利き諜報員で、頭髪は激しい格闘でも一切乱れません。この映画はかなり古いものなのに、ポマード的な整髪料を使っている様でもないのに、どうやって固めているのか今考えると不思議です。
 彼の愛銃は、モーゼル(マウザー)C96で、弾倉の上からストリッパー・クリップで弾薬を装填するタイプです。この銃のモーゼル(マウザー)ですが、原語ではMauserなので、英語読みならマウザーが正しい表記のようみ思いますが、ドイツ語の発音を聞き取って表記したら「モーゼル」となるのでしょうか。ちなみに、Mauserはドイツの会社です。
 主人公は、007に非常に似た性格設定でした。一見、007の二匹目のどじょうを狙った作品って感じです。
 ただ、この主人公が007と決定的に違うのは、拳銃の選定基準です。
 007が秘匿性を第一に考えて小型の強力拳銃(多くがワルサーPPK)を使用しているのに対して、この主人公は秘匿性より火力を重視しているのか大型軍用銃のモーゼルC96を使用します。その所持の方法が傑作で、彼は背中に革製のホルスターを背負い、そこに横向きにモーゼルC96を装着します。この方法では、服の上からでも銃の存在が分かりますし、抜き打ちに適していません。
 この辺に僅かにギャグ映画の要素が垣間見えます。

3 銃撃戦

 この映画では、何度か銃撃戦が繰り広げられます。
 主人公の使用するモーゼルC96は、長めの銃身を持っているので敵の拳銃より射程距離の面で優位にあります。また、銃身を継ぎ足して延長することもできるようなので射程距離の面ではアサルトライフルとも互角に撃ち合えます。ただ、連射はできないようなのと、装弾数の面では不利になります。
 映画では銃撃戦を激しく見せる必要があるので、多少の過剰演出は許されると思いますが、この主人公は愛銃モーゼルC96でヘリコプターを撃ち落とします。この銃は、恐らく9ミリ、大きくてもせいぜい11ミリくらいの直径の弾丸を使用するんだろうと思いますし、それくらいの弾丸なら中に火薬を仕込んで命中後炸裂させる機能を持たせないだろうと思いますから、機関銃で蜂の巣にするのならまだしも、拳銃弾が10発くらい当たったところで煙りを吹いて墜落するなんてちょっと信じられません。
 007『ロシアから愛を込めて』では、007はAR7という小口径ライフルで敵のヘリコプターを落としますが、あれは、手榴弾のピンを抜いて投擲(「とうてき」。なげること。)しようとしているヘリコプターの助手席の敵を撃ち、ヘリコプター機内にピンの抜けた手榴弾が転がり、結果自爆して墜落したのであって、AR7でヘリコプターを撃ち落としたわけではありません。

4 最後の決戦

 最後の決戦も、敵の殺し屋との銃撃戦になります。
 この銃撃戦で面白いのは、敵もモーゼルC96を、つまり主人公と同じ拳銃を使用しているというところです。ただ、敵はモーゼルC96の木製ホルスターを銃床にしてライフル銃のようにしていますから、遠距離の撃ち合いになったら、主人公が圧倒的不利になります。
 早朝、団地風の建物が並ぶなかモーゼルを打ち合う二人。なかなか勝負がつきません。そこで、靴を脱ぎ靴下姿で敵の不意を付こうとする主人公。しかし、敵もさるもの、同じように靴紐を解き靴を脱ぎます。このとき「欧米人って、靴を履くときにいちいち革靴の紐を結び、脱ぐときにはそれを解くんだ。」と子供ながらに思いました。
 さて、敵ですが、靴を脱いで靴下の足を出したところ、なんと靴下に穴がありていました。それも足の指2本が見えるくらいの大ぶりの穴が。
 「こんなシリアスなシーンなのに。」と絶句しました。
 最後は最後で「んなアホな。」という決着の付き方なんですが、ネタバレはしません。

5 総括

 映画全般として、「モーゼルC96を愛するマニア向け映画」といっても過言ではありません。映画の中に他に観るべきところはほとんどありません。だから、銃器に関心のない人にはおもしろくもおかしもないことでしょう(殺し屋の靴下の穴は笑えるかもしれませんが。)。
 ただ、モーゼルC96ファンには、たまらない映画です。
 なんせ、このモーゼルC96のリア・サイトは照尺(タンジェント・サイト)が付いていて、1000メートルまで狙えることになっています。銃身を延長して光学スコープを付けたとしても、1000メートルの狙撃はちょっと無理かなって思いますが、実戦に関係ないモデルガンマニアにはロマンを感じさせます。(実銃を撃つことが仕事の一部になっている警察官や軍人(含自衛官)はそんなことは感じないでしょうが。)

以上

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