196 幻覚を生み出す渇愛

 私たちは「安らぎとは何か」もわからないくせに、勝手にイメージをつくっています。そのイメージをもとに「いつか幸福がある」と考えているのです。たいがい、どんな人に聞いてみても「生きる目的が何かあるはずだ」と言います。私は 「今、あなたは生きているでしょう? 生きているあなたは、生きる目的を知らないの?」と聞きたくなります。私たちはいつでも、幻覚がなければ生きていられないのです。私たちは毎日幻覚をつくって生きる苦しみをなかったことにします。その結果、人間の心の中に「生きていきたい、生きていきたい」という渇愛が生まれてきます。渇愛はものすごいエネルギーです。そのエネルギーで輪廻転生をするのです。渇愛があると、人間は黙ってはいられません。何かをするのです。建物をつくったり、金を儲けたり、そんな程度のことをあれやこれやとやります。せっかくつくった建物をまた壊したり、それをまた建て直したり、くだらないことをやっています。その原因は、渇愛なのです。
『一瞬で心を磨くブッダの教え』第4章 幸福に生きるための秘訣《人間の真実》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【ブッダの聖地スマナサーラ長老と歩くインド八大仏蹟 (2011年) p196】


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