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90年代ロック考察:グランジvs HR/HM


90年代とはロックにとってどういう時代だったのか

僕が思春期、学生時代を過ごした90年代という時代はロックにとってどんな時代だったのか。20年以上経って冷静に見つめ直してみたいと思いこの記事を書いています。80年代までは、世界的に流行る曲は、アメリカ、ヨーロッパ、日本に差が無かった時代でした。ですが、これがそれぞれの道に分かれて行ったのが90年代だと思います。
アメリカ•イギリスを中心とした多国籍軍が湾岸戦争を始めました。戦争がライブ中継された初めての大きな戦争でした。日本は多額の費用を出しながらも、「人を出さなかった」という理由で世界から非難を浴びました。子供心に何か世の中が大きく変わって行きそうだなと思ったのを覚えています。

アメリカ ヨーロッパ 日本のロック界

アメリカは湾岸戦争後、グランジロックブームが起こります。戦争後の厭世的な気分を反映してか社会に対する若者の怒りがヘヴィロックを通じたパンク的なムーブメントとなりました。MTVがこれを後押しして、新しいロックを作るんだと突っ走ったのが90年代前半だったと思います。

一方でヨーロッパでは、ロックからダンス系の音楽へメインストリームの変化が起こります。ヨーロッパのバンドがこの頃ヘヴィさよりも、ダンサブルで電子的な音楽を志向していったのはこういう背景があります。

日本は80年代の音楽がそのまま続く事を趣向する人が多かったです。要因として、酒井康さん、伊藤政則さんやBURRN!誌がグランジにネガティブな反応を示していた事が大きいと思いますが、あえて大胆な仮説を立てると、日本はバブル経済が崩壊しました。あの素晴らしかったバブル期を忘れられず、変わりたくなかったという心理的な影響と、伊藤さんやBURRN!誌はパンクが嫌いな人達です。特に酒井さんの音楽の偏愛ぶりは凄まじかった。BURRN!を作ったという大きな功績はありますが、負の影響も大きかった。なので彼らは生理的に受け付けられなかったのではと思います。

音を聴かずにカテゴリーで判断

ここでは、アメリカと日本の比較をしたいと思います。90年代は両国ともレッテルの張り合いをしていた時代だと思います。アメリカでは、80年代的な髪が長くて、煌びやかで、キャッチーなロックは古い物とされ、髪は短く、服は普段着、音もシンプルかつネイキッドで余計なものを取り去ったものが良しとされました。なので80年代に流行ったバンドは基本的に否定でした。
一方日本ではアメリカのこうした動きには否定的で、髪を切ったら「ロックの魂を捨てた」とか短パンでステージに立ったら「ロックらしくない」とか、両国共にレッテルの張り合いでした。なので、80年代のスタイルを貫いているバンドが受けてました。ちなみに私より4歳以上若い人達はグランジのバンドもすんなり受け入れてますが、私の年代以上でそういう人には会った事がないです。
なので世代的な差やどれだけHR/HMをグランジが出る前に聴き込んでいたかによる差はあると思います。

グランジやダークさを取り入れて、アメリカでも日本でも評価されなかった名盤

内容は素晴らしいのに日本でもアメリカでも評価されなかった名盤はたくさんありますが、ここでは5つ挙げてみたいと思います。

WINGER / PULL

WINGERは80年代に2枚のアルバムを出してスマッシュヒットを飛ばしています。90年代に入りこのアルバムをリリース。煌びやかなサウンドから一転、アコースティックな要素や内省的な歌詞、ダークなサウンドから日本でも評価はイマイチ。
でもちゃんと聴いて下さい!彼らの力量がわかる素晴らしい内容ですし、曲も素晴らしい。
アメリカでは完全に無視されたアルバムです。

EXTREAM / Waiting for the punchline

エクストリームと言えばポルノグラフィティを代表に「派手」な印象でしょうか。このアルバムはBURRN!誌で75点の低得点でした。恐らく音の作りがグランジ系の音に似ていたからだと思います。でもちゃんと聴いて下さい!こんな凄いギター、グランジバンドにいません!グルーブ、カッコいいギターソロもあって良いアルバムです。

HAREM SCAREM / Voice of reason

このアルバムが出た時、ラジオで伊藤さんの第一声は「Harem Scaremよ!お前たちもか」でした。これは強烈に覚えています。ジャケットが暗い、音もマイナーキーが増えてダーク。ですが、全体を通して聴くと美しいアルバムです。ちゃんと聴いてないとしか思えませんでした。2ndからかなり成長したなと思いました。まだ彼らは小粒で日本のマーケットが大事だったので、次のアルバムで無理やり方向転換させられます。こっちはクオリティがガクッと落ちた。あぁ、可哀想だなぁと思いました。Voice of reasonはサブスクには無いかも知れませんがYoutubeなどで聴いてみて下さいね。



DEF LEPARD / Slang

「このアルバムはデフレパードからのグランジへの回答だ」とジョー エリオットが意気込んで語ったアルバムですが、結果的にアメリカと日本両方のファンから受け入れられませんでした。(双方の理由は上記の通り違うのですが」)ですが、僕はこのスラングというアルバムが好きです。グランジを意識したというようにネイキッドな部分として電子ドラムをやめてみたり、ダークなサウンドを取り入れたり。でも、デフレパードらしさはしっかり残っているんです!これもレッテル貼らずにちゃんと聴いて欲しいアルバムです。

BON JOVI / THESE DAYS

日本ではこの少し前にでたベスト盤が好評で、その流れを受けてそこそこ売れましたが、アメリカではサッパリでした。この頃ジョンは「ちょっと内省的で暗く感じた部分はあったかも知れない」と率直にグランジの影響を語ってますが音楽的には全くグランジではありません。それよりジョンは「今はグランジと言えば誰でも売れるけど、残るのは本物のバンドだけだ。パールジャムは残ると思うね」と未来を予見するコメントを残しているのがポイントです。

グランジ嫌いのメタルファンへ

NIRVANA / In Utero

世間的にはネバーマインドの方が有名でしょうが、Nirvanaの本質に迫るにはこちらのアルバムの方がお勧めです。怒りや切なさといった感情、
特に「メタルを聴いてもやもやを吹っ飛ばしたい」という聴き方をしてる人には相性抜群だと思います。

Pearl jam / ten

グランジ、オルタナティブの傑作中の傑作。音的にも何故これがハードロックファンに届いていないのかが全く謎です。これこそジャンル分け、レッテル貼りの最たるものではないかと思います。名曲がぎっしり。未聴なら即聴いてください!

まだまだ語り足りないですが、今日はここまで。
また皆さんの反響次第で、さらに突っ込んだ所も書いてみたいと思います。

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