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古典の「あはれ」は若者言葉の「ヤバイ」で訳すべし


皆さん、古典は得意でしたか?
私は中高と受験用の勉強でしかなく、好きでも何でもありませんでした。
だって、つまらないじゃないですか。

春はあけぼの?

みんなが駄目だという梨の花に、私だけは素晴らしさをみつけました~。

清少納言は凄いマウント女だと思います。

また、蜻蛉日記などは、単なる毒親による虐待日記だと思います。
旦那に愛想を尽かされた女が、ぐじぐじぐじぐじと幼い息子をいたぶる物語じゃないですか。本当は違うのかもしれませんが、授業などで読まされた箇所から陰鬱な印象しかないので、私は読み返そうなんて一切思えません。
本当に素晴らしい作品ならば、授業などで使うシーンを選ぶべきです。

「お母さん死のうと思うの」
「では僕も死にます!」
「あなたは家という責任があるでしょう。そうね、あなたを死なせないために私は尼になります」
「お母様、では僕も僧侶になります。そうしたらお母様とずっと一緒です」
「尼と男の僧は別々の場所よ。バカじゃ無いの。それに、あなたはお父様から頂いた鷹がいるでしょう。あれをどうするつもり?」

若君は母の為にと、父から貰い弟のように可愛がっている鷹を、母を慰めるためにと放してしまうのである。そして涙溢れる顔で、これで僕もお山に行けます、僕はお母様と一緒です、と母親に告げるのだ。

「本当にあなたは馬鹿な子。お父様から頂いた大事な鷹じゃないの。跡継ぎであるという意識が少なすぎるわ。あなたがそんなんだからお父様はこちらにいらっしゃらないのよ」

以上私の記憶だけで書いた訳文です。
記憶だけなので原文と違うかもですが蜻蛉日記はこんな印象で、こんな可哀想物語を読みたくも無いのも読まされたと、当時の私は言葉にできない鬱屈を抱くばかりでした。

全く、こんな胸糞悪い物語を読まされるだけのものだとしたら、古文なんて大嫌いになるものでは無いでしょうか?
それなのに、さらなる追い打ちがあるものなのです。

「傍線アが引いている箇所の活用形を全て答えろ」

本気で台無しです。
今はそれどころじゃないんだよと、テスト問題にシャウトしたくなります。
活用形を暗記してどこで活用するのかわかんないし。

また、テストで絶対に訳せと言われる「あはれ」ですが、あれこそ私をイライラさせた単語でしかありませんでした。
あんなもんは単なる流行語なんだから訳せるわけ無いだろう。
それを、趣があるなあ?
趣があるなああああああ?
言わない。
そんな感覚だったら絶対に声に出さない。流行しない!!

私にとって古典とは、こんなムカムカするばかりのものでしかありませんでした。

さて、こんな感じで好きでも無かった古典ですが、「室町物語集(上)」というものを読む機会があり、そこで私の感覚がぐるっと変わったのでした。

この本を手にしたきっかけは、京極夏彦の百物語シリーズで「青鷺と鴉」の組み合わせが象徴的に繰り返されるので、その元ネタを探してのことです。

「鴉鷺物語(あろものがたり)」

この物語の大雑把なあらすじは、簡単に言えば鳥たちの大戦争です。
まず、青鷺のお姫様に惚れた鴉が結婚を願い出るのですが、お父様の青鷺に馬鹿にされて追い出されるだけで終わってしまいます。
鴉は青鷺に深い恨みを抱きます。
その結果彼らは戦争となり、彼らに協力して参戦していく鳥たちで、鳥たちの大合戦となるのです。
その合戦によりたくさんの鳥たちは亡くなり、そのことを儚んだ鴉も青鷺も出家して、二羽仲良く旅立っていくという最後となります。

お姫さまどうなった?

わかりません。
なぜならば、私は鴉鷺物語を三分の一も読んでいませんから。
それこそなぜか。
それは、室町物語集を開くたびに、つい、「あしびき」という物語を読んでしまい、それで満足して本を閉じてしまうからです。

美しき若君が山の若き高僧と出会い、恋に落ち、その日のうちにやり……はい、BLなんですよ。

継母に虐められる若君。
継母が差し向けた兵士達に対して、戦えない僧侶など山の名折れ、とか言って戦い出す高僧。

やべえな、なろうよりもライトノベルな展開だよ。
それでもって、この物語を書かれたのがお山の高僧様?

そんな衝撃ばかりの古典文学なのでした。

実は、室町物語集(上)にはこれ以外にも、継母によって海の藻屑にされかけた姫の恋物語や、酒呑童子の幼い頃の話など詰まっておりまして、下手な小説よりも面白い仕立てとなっております。

また、誰もが教科書などで読んだことある伊勢物語は、薬子の乱で失脚した阿保親王の息子在原業平が主人公です。彼のおバカさから、おバカなことをした人に対して「阿保親王の子みたい」と言われて、それが「アホ」だけとなったのではないのか?と思うぐらいです。
でも憎めない主人公で、私が大好きな物語でもあります。

もう誰にも助動詞の活用形なんか聞かれないし、学会に発表するわけでもないんだから、間違った訳だろうが読んで楽しまれるのはどうでしょうか。
これから梅雨入り。
自宅で読書を検討されるならば、こちらも、ぜひ。

鴉鷺物語での切なさを、MinstreliX (ミンストレリックス)の叡智の華にて。
駄文にお付き合いいただきありがとうございます。