I型インターフェロン応答性ミクログリアが大脳皮質の発達と行動を形成する■知的障害や早期発症アルツハイマー病とダウン症候群との関連


I型インターフェロン応答性ミクログリアが大脳皮質の発達と行動を形成する

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(24)00186-7

ミクログリアは脳の発達とアルツハイマー病の病因において重要
バランスのとれたIFN-Iシグナル伝達は、正常な脳の発達と機能に必要

知的障害や早期発症アルツハイマー病と関連するダウン症候群は
複数のIFN-I受容体の三重化を含んでおり、ヒトでもマウスモデルでもIFN-Iシグナル伝達が亢進している

最も重要なインターフェロンシグナルを受ける受容体、IFNR1&2両方とも
21番染色体に乗っており
原理的には遺伝子発現が1.5倍で、インターフェロンシグナルも強いと考えられる

ダウン症のインターフェロン反応性について調べ、初期の反応は正常人より高いものの
弱い刺激も強い刺激と解釈して、その後の反応性が強く抑えられる

I型インターフェロンの過剰な負の制御がダウン症患者のウイルス制御を阻害する

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1074761322005015

ミクログリアと脳疾患

21番染色体トリソミーが原因で発症するダウン症では
胎生期に神経発生が減少するがその原因は不明である

胎生期脳内ではミクログリアを含む脳組織マクロファージの割合の減少と
好中球や単球などの炎症性細胞の割合の増加がみられ
大脳皮質では神経新生が低下することを見出した
このことは、ミクログリアを含む胎生期の脳内免疫環境の破綻がダウン症発症に深く関与し
その正常化がダウン症の胎内治療法を見据えた新たな治療標的となることを示唆している


ミクログリアの前駆細胞は胎生期にのみ作られ、生後の脊髄 HSCs 由来単球はミクログリアの補填にはほぼ関与しない

ダウン症の人は新型コロナの死亡リスクが10倍

I型インターフェロンの過剰な負の制御がダウン症患者のウイルス制御を阻害する
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9649881/

IFN-Iシグナル伝達カスケードが亢進すると、IFNARの陰性制御因子USP18の誘導が亢進し
その結果、その後の IFN-Iに対するその後の応答が過剰に抑制され、さらに抗ウイルス応答が効果的に抑制される。

新型コロナウイルスで人でも報告されたことであり、IFN-βは疾患の初期に投与された場合には回復時間を改善するが
疾患の進行期に投与された場合には効果がない、あるいは有害である


そのメカニズムはまだ不明な点が多いが
IFN-Iシグナル伝達が過剰でタイミングが悪いと感染症を悪化させる
HIV、HCV、SARS-CoV-2などを含め、ウイルス感染症の治療薬としての組換えIFN-Iの投与は不適切な時期や用量で投与された場合、効果がないことが繰り返し証明されている

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