広場➀〚夏〛

ただ、なんとなく、
ほんとになんとなくだ
思いつきで、あまり通らない路地を探検したのだ
夏休みに入って、とても暇で退屈だったのだ
初めて通る道を覚えながらてきとうに進んで行った

気づいたら、おかしな広場があった


広さはそこそこに広く、
周りは建物の外壁に囲まれていた
ただ、真っ青な空が上に見えていて、とても綺麗に感じた

そこに一つの人影があった

おそらく男だと思う
高校生ぐらいに見える
ぼけーっと眺めていたら向こうもこっちに気づいたらしく
歩み寄って話しかけてきた

「やあ、今日はとても暑いね」

とても不思議で落ち着いた感じの声だった
初対面なのにどこか話しやすい雰囲気がした

「そ、そうですね、あ、でも、、、ここは、なんか涼しい、ですね・・・」
話しやすい、といってもコミュ障の俺にはこれが精一杯だ
そんな僕が可笑しいのかその人はふふっと笑った
「うん、ボクもいつもここに涼みに来てるんだ」

そこで一旦、沈黙が訪れた

しばらく俺が無言でその場に立ち尽くしていると
「そうそう、そういえば今日は花火大会だったね、
 キミは見に行くのかい?」

と尋ねられた
少し考えて
「ええと、俺は、行く予定はないです」
と答えると

「そう、じゃあ今夜ここに来てくれる?」

予想外の質問が飛んできた
「へっ⁉、、、今夜?」

「うん、一緒に花火見ない?」

「・・・」
何がしたいんだろう、この人
しばらく考えてやっぱり断ることにした

「いいですよ」
この人には申し訳ないけど、、、ってあれ⁉
俺なんて言った⁉

「じゃあ、またあとでー」
と言うとその人はスーッと俺の隣を横切ってどこかへ去った

・・・
何故俺は行くと言ったのだろう
確かにちょっと気になったけど・・・
初対面の年上の人と一緒なんて
緊張する・・・

ああ、どうしよう・・・


道を覚えていたのですぐにまた来ることができた
のはいいのだが、
あの人がまだ来ていない

あれ、俺もしかして遊ばれてる?

と疑心暗鬼になっていると
「やあ、早かったね」
と言いながら彼は来た

良かった~と安堵していると
「もうすぐ始まるよ」
と彼がスマホを見ながら教えてくれた

しばらくするとピュ~と音がして
空が一瞬で明るくなった

花火大会が始まった

雲一つない夜空に美しい火花が広がった

そして最初の大きな花火に続き、
次々と花火が上がり町を照らした

はるか上空で弾けたのち、時間をおいてドォンという音が響いている

色とりどりの火花が空を舞っている

何故だろう、今まで見てきたどの花火大会よりも
すごく綺麗だ


終始、俺は上を見上げていた

最後の大きな花火が上がり、花火大会が終わると

「すごい綺麗だったね」
と彼が話しかけてきた

「はい、めっちゃ綺麗でした、あの、誘ってくれてありがとうございまし
 た」

「どういたしましてー、じゃあ、バイバイ」

そう言って、彼は広場を去った


次の日、またあの人に会いたくて、あの広場に行こうと路地に入ったが、
覚えていたはずなのにあの広場へ行くことが出来なかった

もちろんあの人に会うことも出来なかった

あれは夢だったのだろうか
そう思ったが友達に昨日俺の家に花火大会に誘いにいったが俺がいなかったと言っていた

つまり、確かに俺はあの広場にいっていたのだ

でもよく考えるとあの人はとても不思議な人だった

具体的な位置は分からないが歩いた距離から考えるとあの場所からあの角度で花火も見ることはできないはずだ

じゃああの場所は何だったのだろうか


結局、あれから何も分からなかった

あの日、俺が体験したことはとても信じられない

でも、俺にとって、とても特別な思い出になったことは確かだ