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くるり 個人的アルバムランキング 2020 winter

くるりについて

20世紀末、京都で産声を上げたくるり。ミレニアムを超えて様々なバンドの終わりと始まりが入り混じる中、歩みを止めずにひたすら音楽的進化、或いは深化を続けてきた。

「名は体を表す」という諺があるが、くるりはその言葉を体現した存在であると思う。インディーズ1st、ベスト盤で使われた「回転」、エッセイ「石、転がっといたらええやん」、そして擬音「くるり」といった言葉からわかるように、彼らは常に回り転がり続けている。

貪欲に様々な要素を取り入れた音楽性然り、アルバム毎に転転と国々を回るレコーディング地然り、とっかえひっかえのバンドを成す顔ぶれ然り、くるりは作品ごとに「くるり」と様々な要素を変え続けることで、そのアイデンティティを保ってきた。

もちろん、回転するくるりの核に鎮座しているのが岸田繁と佐藤征史、彼らの間の信頼性であることは言うまでもない。岸田は佐藤の誕生日に5弦ベースをプレゼントしたらしい。やさしい世界!

個人的な想い出であるが、2016年にメトロックという音楽フェスで彼らの演奏を見た。『アンテナ』から4曲、そして当時は新曲だった「琥珀色の街、上海蟹の朝」といったセットリストであった。やけに乾いた太陽の下で鳴らされた名曲「ロックンロール」は当日のハイライトだった。空いてたけど。

ランキング

メジャー1st「さよならストレンジャー」から12th「ソングライン」までを2020年冬時点での好み順に並べました。それだけ。全部改めて聞いたんですけど、さながら音楽の博覧会なんですよね。二か月後には順位も入れ替わってるだろうし、今の備忘録ということで感想も添えて書き連ねていきます。

12位 『NIKKI』

2005年発表。「Bus To Finsbury」「お祭りわっしょい」を筆頭に全体的に軽快な感じが好き。ただ、プライマルスクリーム『Give out But Don't Give Up』みたいに全編通してロックンロール風で纏めてほしかったような…「赤い電車」辺りが浮いてる気もしなくもないというか。

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11位 『図鑑』

2000年発表。序盤3曲のワクワク感が凄いとずっと思っています。それだけに中盤から後半にかけて少し取っ散らかった感じを受けてしまうんですよね。「ホームラン」「街」といった曲達における岸田繁の張り上げた声が良い。あとトムヨークが絶賛したっていうのは、本当ですか?

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10位 『ソングライン』

2019年発売。てっきり「琥珀色の街、上海蟹の朝」のようなくるり流に2010年代を総括した作品になるかと思ってたけど、件の曲は収録されず、むしろメロディーと歌にフォーカスした作品に。「Tokyo OP」などはファンファンさんのトランペットが旨味を出してて良い。

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9位 『ワルツを踊れ tanz walzer』

2007年発表。オーケストラとの融合を計った作品。壮大っぽさだけ出てチープ、みたいなストリング曲はいっぱい聴いてきたけど、このアルバムに関しては全くそんなことはない。京都音楽博覧会などのコンセプトとも直結してる1枚。

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8位 『TEAM ROCK』

2001年発表。「LV30」ではシューゲイザー、「愛なき世界」「トレイン・ロック・フェスティバル」ではグランジなどの90年代の音楽を参照したというのが伝わるも、歌詞では「暗いのはもう嫌」と漏らしたりと独自路線へ踏み出す様が描かれる。「ワンダーフォーゲル」、「ばらの花」が色褪せるのは音楽が死んだ時だけでしょう。

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7位 『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』

2010年発売。新曲「益荒男さん」に通じる民謡・戦後フォークのようなノスタルジックさが全面に出た1枚。「目玉おやじ」→「温泉」の流れではこれをロックバンドでやるのか!と膝を打った。ユーミン参加の「シャツを洗えば」はサビでの岸田とユーミンの掛け合いが心地よい軽快で爽快なポップチューン。サザエさんの庭が思い浮かぶのは何故。ユーミンのソロパートは短いながらも貫禄に溢れてるし、その後のギターソロがすこすこ。

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6位 『さよならストレンジャー』

99年発売。くるり流フォークロック。とはいえ3拍子の曲だったりプログレっぽい曲だったり一筋縄じゃ行かない印象を受ける。ここから始まるくるりの様々な変遷の源流であり、全てのアルバムの端緒を探ることが出来るのでは。そして京都出身の彼らの目線でしか歌えない「東京」という大名曲も収録されている。

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5位 『THE PIER』

2014年発売。メンバーの流動が一旦止まったタイミングでの発売。インスト曲「2034」「日本海」「浜辺にて」など最初の曲の時点で分かるが、ここまでくるりがトライしてきた音楽達の要素が様々にコラージュされ、融合され、「定まらない」という意味でくるりの音楽性が定まったのだと確信した。様々な年代・国を取り入れながらも「Remember me」など比較的シンプルな曲では岸田の声が優しく響く。バラバラな曲達が奇跡的なバランスで一枚のアルバムを成す様は圧巻である。

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4位 『坩堝の電圧』

2012年発表。吉田省年、ファンファンが加入しそれぞれが主役の曲も収録。長い。長いのは認める。このアルバムを通して感じるのは「バンドの快楽」である。ストレートなエイトビートに乗る1曲目「white out」だったり、数曲ある半ばふざけたナンバーだったりは、作為性から逃れ、そしてバンドが生き生きとアンサンブルを鳴らす享楽性に満ちていると思う。明るく開かれた楽曲群達がぐちゃぐちゃに、そう坩堝のように踊ってるこのアルバムが大好きだ。代表曲達から歌詞を引用した「glory days」で締めることで全てを許せるようになっている。震災を経たアルバムがこれっていうのも良い。

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3位 『THE WORLD IS MINE』

2002年発表、ギター・大村加入後のアルバム。アコギのストロークからバンドサウンドへ一気に加速する「GUILTY」から始まり、エレクトロニカ色の強い「静かの海」、キレキレの演奏に奇天烈な歌詞の乗る「GO BACK TO CHINA」(※この路線が好き過ぎて坩堝の電圧を推すことになる)を経て名曲「WORLD'S END SUPERNOVA」へと雪崩れ込む展開はお見事としか言えない。続く曲達も様々な音楽要素を飲み込みながらもバンドミュージックとして圧倒的な強度を保ち続ける。

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2位 『魂のゆくえ』

2009年発売。堅実な演奏に乗っかる岸田の歌声、その圧倒的なメロディメイカーっぷりを存分に堪能出来る。ここだ!っていうピークがあるわけじゃないけど、どんなタイミングで聴いてもスッと入ってくる作品。とはいえ攻めてない作品かというとそうではなく「夜汽車」の跳ねる感じ、「つらいことばかり」の岸田の狂いっぷりなどは要所のスパイスになり、退屈なんてしない。くるりのパブリックイメージを上手くパッケージしている名盤だ。

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1位 『アンテナ』

2004年発売。ドラムセットプレイヤーとしてクリストファー・マグワイアが参加しており、彼のドラムプレイに乗る岸田・大村のギター、そして両者を繋ぐ佐藤のベースプレイはバンド・くるりとしての1つの到達点。夜明けを歌う「グッドモーニング」から、決して性急にならずにひたすらアンサンブルを深めていく。極めつけはやはり「ロックンロール」か。ひたすら繰り返されるメインリフは循環する美しさを体現しているし、最後に「さよならまた明日」と切に張り上げる様は圧巻。カウントから始まる「how to go<Timeless>」では「いつかは想像を超える日が待っているのだろう」と希望を、半ば絶望の中で、歌にして代弁してくれている。まさにタイムレスな名曲だ。

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まとめ

ちなみに僕が1番好きな「すけべな女の子」はオリジナルアルバムに収録されていません!他にもB面集、サントラだったりと聴けば聴くほど底が見えない稀有なバンドだなぁと思います。ホントに。

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