葱(ねぎ)

音楽とアイドル

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最近の記事

クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」感想:幸福な共犯関係

「メメント」、「ダークナイト」3部作、「インセプション」、「インターステラー」、「ダンケルク」、「テネット」…とクリストファー・ノーランの作品は映画の中にその映画にしかないルールを設定し、それを徹底的に映像として再現することで否応なしの説得力と、他の映画では得られない快楽を作り出している。その快楽は「作り込まれた街を舞台にみんな大好きなヒーローものを作ったらかっこいいだろうな…」「夢の中にダイブできたらどうなるだろうか…」「宇宙時代の家族愛ってどんな感じだろうか…」「時間が逆

    • ドゥニ・ヴィルヌーヴ「DUNE Part2」

      iphoneとイヤホンを繋ぐジャックを紛失してしまい、久しぶりにただひたすら最寄りから自宅までの15分間を歩くだけの時間が生まれたのだけど、2週間くらい前に見た映画「DUNE PART2」のことを不意に思い出した。絶賛の声が多いというか、あまりにも「劇場での大スペクタルを見逃すな!!」「今年の大傑作!!年間ベスト!!」みたいな、称揚しすぎる声が大きすぎる気がしてフラットに楽しめたかどうか定かではないのだが、いやぁでも不意に思い出すくらいなのだから楽しめたのだろう。 見終え

      • 日記 3/20 (サークル/コピバンについて)

        あまり普段自分のことを書かないし、基本カッコつけたくなるので取ってつけたような文章しかアップロードしないのですが、この文章は素直に日記です。高校時代から軽音楽部に所属してベースを弾いて、大学に入った後も軽音サークルに所属し、先日、自身の代の卒業ライブを終えました。高校時代も結構しっかりとバンド演奏に勤しんでいたのですが、最後の最後にコロナウイルスの影響で卒業ライブを開催することが叶わず、どこか心残りなまま大学に入りました。とはいえ大学初年度は学校にさえまともに通えていなくて、

        • 三宅唱「夜明けのすべて」

          ある時期まで、中学2年生の頃にもらったラブレターを大事に定期入れの中に入れて携帯していた。誰かが自分に対して関心を持ってくれている、という事実だけでなんか救われた気がしていたし、少なくともその手紙にはその事実を裏付けるだけの力があった。流石にその手紙はどこかのタイミングで机の中とかに移動したわけだが、受験やなんやがあって、気付いたらどこかに行ってしまった。 三宅唱「夜明けのすべて」も、いつかもらった手紙と同じくらいの距離感で自分の中で存在し続けてくれる映画になりそうだ。この

        クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」感想:幸福な共犯関係

        マガジン

        • アルバム感想、あるいはレビュー
          12本
        • 全部聴くシリーズ
          6本
        • シューゲイズ定点観測<Shoegaze gaze>
          3本

        記事

          The Smile「Wall Of Eyes」

          いつだってRadioheadという音楽家集団は私の音楽リスナーとしての態度を揺さぶってくる。ただ、彼らのことを知ったのは現時点で最後に活発な活動を行っていた2016年頃で、サマソニで「Creep」を演奏したという話を興奮気味に語る音楽雑誌を「ほえ〜」と目にした記憶がある。その後私が好きになったポストロックやエレクトロニカと括るられる音楽は紛れもなくRadioheadを経由することで聴くようになった。そして数か月に一回ほどRadioheadを聴き、やっぱりここにしか無い是性(こ

          The Smile「Wall Of Eyes」

          2023年 年間ベストアルバム 25枚

          私がその年に発売された作品を追っていく"ゲーム"に参加し始めたのが2020年、コロナウイルスの影響でにっちもさっちも行かなくなっていた頃、同時に大学に入学した頃でした。そこから数年、毎回テーマを設けつつ「年間ベスト」をリストアップしています。気がついたら自分の音楽の嗜好がかなり固まってきておりリストを通して人となりが見えるなぁ、と思いながら自分のリストを眺めています。商業メディアに属していたり、ライター業に従事しているわけではないからこそ、いち市民の記録としてインターネットに

          2023年 年間ベストアルバム 25枚

          2023年に聴いて良かった旧譜15枚

          2023年も振り返れば色々な形で音楽と接点を持ち続けた1年でした。いくつかの来日公演、邦楽インディーバンドのライブ、サマソニそしてフジロックに足を運び、サークルでコピバンをしつつオリジナルバンドの活動を並行して行い、乃木坂ファンとして様々な媒体を追っかけるなど慌ただしく過ぎていきましたが、そんなことより何よりも音楽を毎日聴いていました。 昨年末に自分の音楽の聴き方を"特定ジャンルのディスクガイドの掲載作品:新譜:好きな旧譜:思いつき」を「4:4:1:1」くらいの割合で聴いて

          2023年に聴いて良かった旧譜15枚

          チバユウスケの訃報を受けて

          訃報が目に入った時、ウッと言葉にならないような声が出たが、140字で何かを言う気にもならず、ただ大学のラウンジみたいな所で書きかけの卒論を置いて座っていました。さっき友人と話して少し楽になったからパソコンに文字を打っています。取り敢えず何かを形にしないとこの暗い気持ちのまま年末を迎えそうで、ちゃんと自分の中で昇華させてから2023年を終わらせたい。 私は今22歳で、thee michelle gun elephantが解散ライブを行った時はまだ2歳か3歳なので、勿論ライブを

          チバユウスケの訃報を受けて

          「くるりのえいが」と「感覚は道標」

          くるりの新作「感覚は道標」を聴いて、いや、「ばらの花」をオマージュした「朝顔」を聴いて、少し複雑な気持ちを抱いた。常に新しい要素を取り込み、武器を変え、それこそ転がる岩を体現するようなバンドであるくるりが最初の3人で集まって「ばらの花」オマージュをやる。そこに少しだけ閉じたものを覚えてしまった。勿論、アルバムに流れる開放的な雰囲気はこのアルバムを好きになるのに十分な理由ではあったけれど。 そんな思いを抱きながら観た「くるりのえいが」ですが、最初に映った伊豆の景色から否応にも

          「くるりのえいが」と「感覚は道標」

          GRAPEVINE「Almost There」感想:メタバンド/GRAPEVINEの本領

          GRAPEVINEの新作だ、と構えて聴くのは初めてだった。「新しい果実」を経て猛烈にGRAPEVINEへ興味を持ってしまったことは以前書いた通りである。 変なことをしてるのに開けていること、基本的にブチ切れていること、器用貧乏にならない形でいくつものジャンル/時代性を横断して制作された曲が並んでいること。GRAPEVINEの魅力を強引にまとめるならこの言葉に集約できる。同時に彼らが接していた音楽への偏愛を隠さず、素材やスパイスとして楽曲に織り込む。オリジナリティの確立と音楽

          GRAPEVINE「Almost There」感想:メタバンド/GRAPEVINEの本領

          Wilcoを眼差すために/個人的アルバムスコアリング

          Wilco来日公演の報せが届いたのが9月半ばに差し掛かる頃で、先日なんとかチケット当選のメールを受け取ることが出来ました。これまでも来日公演を控える段階でブラーやArctic Monkeysの作品を全て聴き、感想を残してきたので今回はWilcoのアルバムを全部聴いて感想をまとめます。理由は後述しますが、ただ好みの順番でランキングするというよりも時系列で彼らのアルバムを眺め、その道のりを理解しつつ、どのアルバムが好みだったのかが結果的に分かればいいなという企てです。 Wilc

          Wilcoを眼差すために/個人的アルバムスコアリング

          SUMMER SONIC 2023 備忘録 「引き受け祭り'23」

          2023年もソニマニ~サマソニに参加することが叶いました。私自身そこまでフェス第一、というタイプでは無いのですがThe Strokesが出演すると知り駆け付けたフジロックに続き、今年の幕張3日間にはどうしても参加しないとならないラインナップでした。私の洋楽のルーツであるブリットポップの二大巨頭・blurとリアムギャラガー、高校時代にロックキッズだった私をぶん殴ってくれたケンドリックラマー、現在没入しているIDM/エレクトロニカのオリジネイターであるオウテカ。私の音楽リスナー人

          SUMMER SONIC 2023 備忘録 「引き受け祭り'23」

          映画「Barbie」感想

          正しく''完璧''な映画なのだと思う。テーマ性もテーマを作劇に乗っけるスマートさも作劇とビジュアルの両立も、非の打ち所が無い。バービー人形を通して人間の醜さ/人間社会の歪さ/男女の格差をデフォルメして少しの皮肉を交えながらもストレートに描きつつ、アイデンティティの確立という普遍的なテーマに持ってく手腕が鮮やかだ。 自分へのタグや自分がどうカテゴライズされるかにアイデンティティを見出だすのではなく、どう生きるかこそがアイデンティティとして自分にくっついてくる。君たちはどう生き

          映画「Barbie」感想

          フジロック'23 day1 備忘録

          念願だったフジロックに初めて参加しました。めっちゃ楽しかった!!ということで忘れないように…とここに残しておきます。高校生の時に「20〇〇 フジロック 感想」と検索してフジロックについてのブログを見つけてよく読んでいたのだけど、それに連なりたくて今文章を書いています。 前段(行くにあたって) フジロックの存在を初めて意識したのは2016年、聞いていたラジオからCMが流れてきた時でした。「ヘッドライナーはレッチリ、ベック、シガーロス!!」少しずつ洋楽に興味を持ち始めた私にと

          フジロック'23 day1 備忘録

          君たちはどう生きるか 初見感想

          初見と言いながら、2回目は多分無く、映画館で一回見て満足したので次見る時は金曜ロードショーだと思う。 少年の冒険活劇と銘打たれていたが、その通りで、セカイの話を書きながら、主人公周りの血縁でセカイを閉じて少年の成長物語に繋げる。東京から田舎(埼玉の真ん中くらい?)へ行き、東京へ帰ろうとするシーンで終わる。作中何回も「扉」というモチーフが出てきて、東京→地方→東京と物語を閉じるのは綺麗だと思う。「門」とか「窓」を出して少年の勇気とか成長を見せるオーソドックスな演出は少し陳腐だが

          君たちはどう生きるか 初見感想

          2023年上半期ベストアルバム

          前段 2023年上半期もあっという間に過ぎ去ってしまった。ただ今年は夏頃にフジロックやらサマーソニックやら楽しい予定が待っているので時の流れがいじらしいような何というか。 2023年上半期を振り返ると中学生の時から聞き続けていたArctic Monkeysの公演に参加できたことが記憶の中で大きな割合を占めている。新作「THE CAR」を引っ提げたツアーだったとはいえアールタイムベストのようなセットリストで、「Brianstorm」「I Bet You Look Good

          2023年上半期ベストアルバム