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おじさんにハイスペックは不要

自転車が欲しい。
そのムーブメントが定期的にやって来る。
周期はだいたい2年に1度くらい。

BMXとは別のタイプで、ちゃんと移動を前提としたもの。

そういう時に僕がイメージする自転車は、カゴや荷台が付けられるマウンテンバイク。マウンテンバイクのなかでも割りと「どんくさい」タイプのやつだ。

ちょっと買い物に行ったり、運動公園の外周をゆったり回っていても変に目立たないモノ。少々の長距離なら後悔しないで走れる快適な自転車。
つまり地味でマルチパーパスなものを求めている。

子供の頃、ひどい田舎にいた。
電車などなく、バスは1日2本(もしかしたら1本だった?行ったら帰りは翌日…?さすがにそれは無いか)。
オリンピックでフレディ・マーキュリーが「バルセロナ」を歌っていた頃、吉幾三の歌を少しマシにした、くらいの世界で育った。ただ、そんな田舎でも道路はちゃんと舗装されているのが日本の凄いところで、自転車に乗る環境としては最高だった。

アルミフレームのロードバイクが市販され始めた時期で、まだ一般には鉄のフレームが多かったと思う。僕もミヤタの入門用ロードを持っていたが、それも鉄フレーム。クロモリではなくハイテン鋼だったと思う。今の自転車の感覚でいくと重量級だが11キロ前後の車重は、ちょっと遠出するには十分過ぎるほど軽快だった。

自転車が欲しい。
おじさんになった僕がそう思う時は、(少し運動不足かも)と感じている時が多い。サーフィンを続けているから運動量は多い方だと思うけど、体を使う趣味があるからこそ、筋力・体力不足に敏感になる。
ちょっとした空き時間に自転車に乗れば身体的パフォーマンスを回復できるかも、と思うのだ。

そう、だから本格的すぎる自転車はいけない。

基本的に良い自転車というのは、「早く(速く)・楽に・遠くへ」という点をクリアするように開発されている。言い換えれば、いかに体力を消耗しないか、に重点が置かれている。

そのような自転車で体力作りをしようとすると、無駄に速く・長時間・長距離、ペダルを漕がないといけなくなる。僕のように20分程度しか乗るつもりが無いのであれば、ハイスペックな自転車では目的を果たせなくなってしまう。

本格的な道具が本来の目的の邪魔をする。

これは結構色んなシーンに共通することだと思う。

良い道具に投資することは趣味を深化させるために必要なステップなのだけど、自分の持つ時間や環境などの許容の範疇を越えてしまうと、実践で得られる到達点や満足度をダウンさせてしまう。

以前は最軽量とか最速とか、スペックに特徴のある極端な道具に惹かれるものがあった。だけど結局、そのスペックの恩恵に授かったことはない。

最速のバイクを普通の速度で運転していたし、最軽量クラスの自転車も乗り心地重視で部品交換して「まあまあ軽い方」の自転車になっていった。普通車クラスでは最大級の荷室を誇るキャラバンも満載にしたことはない。林道探索にはまってオフ車からトライアル車に乗り換えた時には、余りにも走破性が高すぎて林道がちっとも楽しくなかった。

尖った部分にお金を払っても、回収できるのは尖ったところ以外の基礎的な部分。尖った所までも回収できるのは、時間や経験や環境がピッタリとマッチする人なのだと学んだ。

だから今は「上質な中庸」に惹かれる。

性能やスペックは普通。だけど、その全てがこだわりをもって仕上げられている。そして使い勝手が良い。
そういったものがいい。

カバンやブーツでも、耐水性能や内容量、当社比○%up!という数値的売り文句ではなく、等身大の使いやすさや履き心地を重視しているメーカーが信頼できる。

それはつまり、昔からあるオーソドックスなものに自分が魅せられているということかな。

歳なのかもなぁ…。いやー、歳のせいなんだろうな。

















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