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大吉原展観覧後に吉原の歴史本を読んでみた

先日、開催中の「大吉原展」に行ってきた。開催前のPRが何かと物議を醸し出していた展覧会。
コロナ前、日本橋界隈の街歩きで吉原という文化が当たり前のようにあったことなどに触れて以来、気になっていた。

上野公園の中の美術館や博物館にはよく足を運ぶけれど、東京藝大美術館は行ったことがなかった。


大学の敷地内にある東京藝大美術館


展示内容は、浮世絵、風俗画、美人画、遊女たちが身につけていた装飾品の一部、江戸風俗人形など。(最後に展示している吉原の街の模型と江戸人形以外の展示物は撮影不可)

部屋の中も細かく再現されていて見ていて飽きない


あの頃から止まることなく時が流れて今があるのであり、女性の人権侵害という言葉だけで語れるものではないと感じた。
そのような時代があったことは理解できても到底納得できるものではない。

もう少し予習してから行った方が良かったかもしれない。帰宅してから、吉原の歴史がわかる本がないかと探してみた。


レビューを読んで良さそうだったので、早速図書館で借りて読んでみたら、期待以上に良かった。
以下、私個人の理解からの読了メモ。


  • 吉原は社会的に寛容で恥ともせず通う場所、身近な存在だった(江戸以外にも点在)

  • 武士や兵士たちの心を慰め経済発展の役割があるとして公認(100%男性社会)

  • 家族を救うための親孝行という一般認識があり庶民の理解があった

  • 元遊女だからと妻にできないという差別は少なかった(ヨーロッパでは娼婦差別があった)

  • 差別は楼主(遊女屋の主人)に向けられていた

  • 支払えない客への仕打ちがすごい

  • 上級から下級まで遊女は教養と芸能を身につけており、ほぼ全員読み書きができた

  • 遊女の格による楼主の差別が酷い(不摂生な生活、病気の時の酷い扱いなど明治時代まで続く)

  • 性病、月経時の扱いが酷い(予備知識ない)



当時の文化として派手で煌びやかな面もあるが、最終章に近づくにつれ、想像以上に悲惨な遊女の人生を知ることになった。
1956年の売春防止法公布まで完全になくならなかったということも、なかなかショッキングだ。たった68年前のこと。


この本を先に読んでいたら、大吉原展に行こう、行きたいと思っただろうか?
うーん、、、よくわからない。捉え方は違っていただろうけれど。

大吉原展では闇の部分の展示や説明はあった。でも、それだけではここまで罪深い歴史があったことはわからなかった。そういう意味では、もっと歴史を知ろうというきっかけを与えてくれた展覧会だったことは確かだ。

吉原という文化は金輪際あってはならない。でも、当時の習慣や信仰の上で当たり前のように存在していたのは事実で、「そういう時代だった」としか言いようがない。
次元が全然違うけれど、「テレビで女性の胸が露わになっても放映していた」「誰でも成人向け雑誌が買えた」時代があったように。

だけど、そういうものと諦めたり慣れたり思い込んでしまったり、直接自分には関係ないと思ったりと、思考停止の人々が多くなると碌なことにならない。
「これで良かったんだっけ?」と自分の中の違和感を大切にしようと思う。それくらいしかできないけれど。


吉原に興味がある、歴史が知りたいという方におすすめの本なので、気になる方はぜひ。(noアフィリンク)

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