ふるさとはいずこにありや

 5月29日から始まった、セパ交流戦。ファイターズの初戦は、読売ジャイアンツ。東京ドームは、いつもお客さんでいっぱいだ。何度か遠征に出かけたことがあるけれど、都心のあれだけ便利な場所なら、仕事帰りでも気楽に行かれるもんねえ・・札幌で例えれば、すすきの駅近く、中島公園あたりにある感じか。

 子どもの頃から、巨人は嫌いだった。なぜかはわからない。あんまり可愛げのない、天邪鬼な子供だったので、大勢へのただの反発心だったのかもしれない。そのまま大人になって、いろいろな出来事もあり(江川事件とか桑田事件とか…)さらに2009年、2012年とファイターズは巨人との日本シリーズにことごとく敗れ、宿敵ジャイアンツの気分は募るばかり。

 ところが、わたしの愛するファイターズは、どういう構想か知らないが、やたらとジャイアンツと交流を深めようとする。頻発するトレードで選手は入れ替わり立ち替わり、元巨人、元ファイターズ、こちらが望んでいなくても顔なじみが増え、欲しくもない親近感を抱かされるのに、さらに2017年には、最も愛する陽ダイカンが、FA移籍、さらにルーキーのときから応援してきた吉川光夫も石川慎吾もトレードで行ってしまった。もうこうなったら観念するしかないのか。長年掲げてきたアンチ巨人の看板を降ろす時がきたのか・・・去来するフクザツなキモチ…。

 そうして迎えた今年の交流戦。陽くんはせっかく開幕を無事で迎えたのにデッドボールで手の甲を骨折し、ようやく一軍に復帰したばかり。スタメンには好調の亀井がいて、まったく不向きな代打に甘んじている。

(昨年、あれほど各方面で使いまわされた石川慎吾は、どういう理由かわからないが、キャンプからずっと二軍で、一度も一軍に合流していない。いくら打っても上げられる気配はなく、こちらからみると干されてるの?と見えてしまう・・どういうつもりだジャイアンツ!?)

 30日の水曜日、巨人の先発は、吉川光夫。元ファイターズの左腕エース。2007年入団以来、どんなに不調でも、どんなに挙動不審でも、応援し続けてきた「みつお」は、しかし、巨人に行っても全然変わっていない・・マウンドに立ち尽くし、自信なさげに、大ピンチでもないのに汗をダラダラ流し、打たれたくないあまりにボール球を多投し、バッターを打ち取れず、試合が弛緩する…。

 真のファイターズファンには外道と怒られるだろうけど、この日ばかりは、みつおが勝ち投手になってもいい、いやなってもらいたいと、わたしは願っていた。勝利至上主義の巨人ファンは、常に情け容赦がないが「外様」という言葉があるように、移籍してきた選手にはさらに冷たい。(ファイターズファンは、移籍してきたら即「うちの子」と判断するのだが)成績が良ければ受け入れるが、ダメなら総叩きだ。

みつおは、すでにその当落線上におり、「古巣」(って野球用語も好かん)のファイターズ戦で失敗しようものなら、どんな目にあうかわからない。ここは、もうファイターズが負けてもいいから、みつおに立場を守らせたいという完全なえこひいきの老婆心で。

言うてみれば、ファイターズから他球団に移っていった選手は、実家から就職先のある遠くの街へ行った子どものようなものだ。遠くで暮らす子どもの様子は、詳しくはわからないけれど、元気でいてほしい、周りの人たちとうまくやってほしい、幸福であってほしいと願うのは、どこの親でも同じだろう。まあ、そういう心境であるということです。

しかしながら、そんな親心子知らず・・みつおは炎上する前に自滅降板、陽くんは代打失敗・・。ファイターズの先発、上沢くんも大炎上、エラー、双方ともに四死球の連発、試合は8対9の乱戦で、ファイターズは連勝が止まり、巨人が5連敗から脱出するという結果に終わる。なんともいえないバカ試合であった。

そして、つくづく思い知る。やっぱり何がどうであれ「負けてもいい」なんて考えてはいけないんだと。

 わたしが本当に見たかったのは、手に汗握る展開で、みつおのボールが唸り、陽くんが躍動し、ファイターズは全力を尽くし、勝っても負けても「すげーもん見たな!」となるような。「やっぱり野球っていいよね・・面白いよね!」と隣の人と手に手を取りたくなるような。そんな試合だ。

「負けてもいい」なんて試合はないし、そんな気持ちで見るゲームは面白いはずもない。実際、面白くなかった…。

いくら老婆心を振り絞ってみたところで、我がチームからいなくなった選手は、どこかのチームの我が選手になる。その逆もまた。

どこに行っても野球は野球。

野球選手とそのファンのふるさとは、いつでもそこにあるだけなのだった。


✳️ 読み直すと、これも「大事なとこ」が抜けてますね。過去でもまじかでもいいから、良いゲームか、印象に残った打席など、躍動感のある場面を入れると説得力がでるよね。 自分で自分を添削する。

























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