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メッセージBook『谷口雄也ー覚悟を力にー』(廣済堂出版)発売記念ーアイドル選手は、超えなければならないものなのだろうかーその1


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この度、4月18日に、北海道日本ハムファイターズ 、谷口雄也選手のメッセージBookが発売されました。3年前に企画されながら、大きな故障などもあり、年月を跨いでやっと出版の運びとなったそうです。構成は、これまた我らの「炎のストップウオッチャー」野球編集者でライターのキビタキビオさん。

中身は、谷口くん、きゅんちゃんらしい誠実さと客観性に溢れた地味な本です。地味って貶してるんじゃないですよ。実際の話、谷口雄也のプロ野球選手としての成績に鑑みれば派手になりようがない。だからこそ、虚勢を張らないきゅんちゃんらしいメッセージBookだと思うのです。

一読して、感想はもちろん、わたしの思うところのプロ野球屈指のーアイドル選手谷口雄也を、もう一度書いてみたいという欲求がどーんと湧いてきました。一人のファンの気持ちのままに。

 

ースーパーアイドルの胎動ー

今を遡ること10年。2010年のドラフトといえば、とにかく斉藤佑樹。とにかくハンカチ王子。巨人、ヤクルト、横浜、日本ハムの競合1位指名で、ゆうちゃんを射止めたのは、わたしたちの藤井社長であった。藤井さん最後の大仕事的な。

あのマー君の駒大苫小牧を倒した斉藤佑樹が北海道にやって来る!ゆうちゃんフイーバーの影で、他の指名選手はあんまり目立つことはできなかったのだったが。

同期入団、ドラフト2位は、西川遥輝 智弁和歌山出身、こちらも鳴り物入りの甲子園アイドルである。甲子園に4度も出ている。骨折しても打っている。高校では親衛隊が結成されるほど人気があった。指名時の映像がありましたが、遥輝、眉毛ないね😀

3位は東洋大学、乾真大、キャッチャー大野奨太の後輩で、左腕エースとして期待されていた。4位、九州産業大学、榎下陽大、彼のことは、ホークスのムネリンが「高校の後輩で大学生にすごいピッチャーがいるんだ!」と声を大にしてたので注目したら、ものすごい男前でごわす、ものすごいピッチングフォームでごわすと驚くことになる。

5位、愛工大名電 谷口雄也 6位、セガサミー斉藤勝

ごめん…このときのわたしは、気がついていなかったの。

2011年、春キャンプも通り過ぎた頃だったか、もう少し後だったかツイッターのスレッドで「きゅんがねー」「きゅんがー」「きゅんといえば」とかやたらにファイターズ ファンの「きゅん」発言が目につくようになった。

「きゅん」て何だ?

当時「きゅん」と言えば、中日ドラゴンズの「浅尾きゅん」しか思い当たる「きゅん」はない。そういう系統の話なのか? さっそく調査を始めると。「きゅん」の出所は「谷口きゅん」であった。なんでもーとてつもない可愛い顔で見てると胸がきゅんきゅんするからーという理由から、あだ名が付けられたらしい。名字も略して「きゅん」とまで。存在自体が「きゅん」ってことかいな。

へーそうなんだあ。ふーん。谷口くんて、そんなに可愛かったっけ? 検索すれば出るわ出るわ、ファイターズ のカメラ子たちは、どんだけ撮ってるんかーいってくらいどんどんアップされる「きゅん」のご尊顔。

……うーむ…確かに、これは…うーむ。

必然のようにルーキー初年度から、西川遥輝と谷口雄也は、高卒ルーキーアイドルユニットとしてファイターズ から売り出されることになる。何かといえば二人でイベントに出たり『プロ野球ai 』でも破格の扱い。メーン記事ではないものの私服姿の二人の記事が、二ページに渡って組まれることもあった。

特定指名選手であった西川遥輝は、右肩の故障が癒える2年目から一軍に抜擢登用されるようになる。「きゅん」はまだか? 

その日は、2012年9月4日東京ドームでやってきた。12年は栗山監督の初年度、若手の大抜擢や大胆采配で、周囲の否定的な評価を木っ端微塵に粉砕し優勝してしまうのだが。この日も、まだ優勝が決まってもいないのに、無名の若手選手が、ベンチに呼ばれている。

『メッセージBook谷口雄也』P69によれば、不動の外野手レギュラー糸井嘉男が故障で離脱し、代わりに呼ばれたと書いてある。即スタメン(栗山監督のやり方は初めから変わってないですね。やるなら思い切り大胆に)。

もちろんわたしは、テレビの前でガン見していました(偶然ですが、当時大学生だった娘たちは、東京ドームで生観戦していた!ずるい!)未だ動くところープレイしている姿ーはろくに見たことのない「谷口きゅん」。

一体どんな活躍をしてくれるのかしら?

結果は、(同上P71参照)1試合目で、試合を決める補殺の好守備を見せ、2試合目では、プロ初ヒット初打点を放ち、プロ初お立ち台にも立つことになる。

この時は東京ドームからの中継で、実況アナの矢野吉彦さんが、「しっかりした話ぶりですね。文章になってる。二文節で話している。素晴らしいですね」とやたらに感心してたことを鮮明に覚えている。確かにしっかりとした落ち着いた話ぶりで、高卒2年目の子には、珍しいタイプだなとは思ったけど「文章になってる」って、他の子はどんだけかと思ってたのか矢野さん…。

初めて聞いた「きゅん」の声は、想像してたのより以上に可愛らしい声だったけれど。それにしても、この鮮烈デビュー戦を、わたしははっきり覚えているし、録画で再生して何度も見たにもかかわらず、谷口雄也のプレー自体をぼんやりとしか思い出せない。

思い出すのは、やたらめったらに画面に映っている顔ばかり、ベンチで遥輝の隣に座ってるだけなのにカメラに何度も抜かれまくり、しかも所用時間が長い。通常の選手を抜いていくカットより3秒は長い。あまりにも不自然。

なんでこんなに映すんだろうか? といぶかしく思いながら…でもカメラさんの気持ちは、わかるような気がした。どうしても見てしまうんだよね。わかります。わかりますよ…。

「ほんとなの?」

「ほんとにこういう顔貌の選手なの?」

とカメラが問いかけている。見つめずにはいられない。

これが「きゅん」の力なのだ。

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東京ドームデビューの後、一斉に配信、記事にもなった、運命のワンカット。

ここから谷口雄也の全国区化、ー可愛すぎるスラッガーへの道が、本人の意思とはまったく無関係にー開かれていくことになる。

その道のりは、しかし、端がやいのやいの野次馬がぺちゃくちゃおしゃべりするようには、お気楽なものではない。どんなあり方であれプロ野球選手の道は、平等に厳しいのだから。


つづく




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