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「ナニタベル?」

初めての街へ降り立つ。駅舎を出ると桜が満開だった。引越していった友との待ち合わせ。キョロキョロと見まわすが見知った顔がない。と、連絡が入る。
「ごめん。5分くらい遅れる」
私もすぐに返信。
「了解」

するとまたすぐにスマホが振動する。「なに食べる?」
そんなの、会ってからでもいいのに。
でも、そんな人だ。ずっと前から。
私が待っている間、時間をもてあまさないように気を使っているに違いない。そんな彼女の想いが「ナニタベル?」に詰まっている気がして、たった5文字が素敵に私の心に響く。

久しぶりの再会でも、1番多感な時期を一緒に過ごしたんだもの。私が返す言葉はコレだ。
「実はもう決めてるんでしょ」
「バレたかーーー」

やっぱり変わってないなぁ
私は思わずひとり笑いして、恥ずかしくなり桜を見上げた。
ふんわり優しい気持ちに包まれていると、坂の上から手を振り走ってくる彼女が視界に入った。

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