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「こじらせ」を考える④ 「貴方のどこが好き」か説明できないのは良いこと

負い目を感じる必要は無い

 結婚式やパーティーの場などで、よく知らない遠縁の親戚や、共通の友人はいても自分は初対面の人などと会話する時、どんな会話をしますか?いったんは自分たちが参加している場のことについて軽く話し、その後でお互いの自己紹介をするような流れが定番かと思います。あるいは最初から自己紹介でしょうか。

 その時、相手がある特定の分野でとても高度な仕事をしていたり、趣味で制作した見事な芸術作品などを見せられたりした時、自分はそれに対抗できるようなものが無い、と負い目を感じたことはありませんでしょうか。

 特に強烈な負い目を感じた時などは「マウントを取られた」と思うかも知れません。

 ですが冷静に考えて、そのような場でよく知らない人と会話をする際、場を持たせようとすれば仕事か趣味の話になると思います。その内容が独特のものであればなおさら退屈しないのではないかと、相手もむしろ善意で話している場合が多いと思います。

 それに、創作を趣味にしている人なら、自分の作品を人に見てもらう機会が欲しいでしょうから、それくらいは「マウント」などと言わずに素直な気持ちで見てあげれば良いと思います。

 自分が対抗できるような話題を提供する必要も無いと思います。相手が気を遣って「貴方は?」と訊き返すのを忘れるくらい、聞き上手になって気持ち良く話させてあげれば良いのです。

 最も、中には本当にマウントを取ってくる人もいます。私はそんな時は、適当に相づちだけ打っておいて「今日の(もしくは明日の)晩ごはんは何にしようかな~。」と考えておきます。どうやって作るか、もしくはどこのお店で食べるかまで具体的に考えると気がまぎれます。

理由は必要ですか?

 話は変わりますが、貴方の恋人、配偶者、もしくはそれらに匹敵する身近な人がいて、「貴方はその人に愛情を感じていますか?」と訊かれた時、貴方は「はい」と答えるはずです。(もしそうでない場合はこの話は終わりです)

 次に、「では貴方はその人のどこが好きなのか、最低でも3つ答えて下さい。」と言われたら、貴方は即答できるでしょうか。統計を取ったわけではないのですけど、「そう訊かれてもなぁ…。」と戸惑い、即答できない人はわりと多いんじゃないかと推測しています。

 逆に、「その人のちょっと困ったところを、数は限定しないのでいくつか挙げてみて下さい。」と言われれば、こちらは即答できる人が多いと推測します。

 これらを質問され回答している姿を、当のパートナーが取調室のマジックミラー越しに全て見聞きしていたとしたら

「ひどい!実は私のこと嫌いなんじゃないの!?」

 と怒り出すかも知れませんが、それはきっと違いますし、むしろ喜んで良いんじゃないかと思います。

 これが例えば「見た目が好みだから」「お金持ちだから」などと即答された方がよほど嫌ではないでしょうか。うわべだけしか見ておらず、それらが衰えたら愛情も失われるんじゃないかと。

 「〇〇をしてくれるから」「〇〇の能力があるから」というのも何だか良いように利用されている感じがします。

 「優しいから」「思いやりがあるから」「誠実だから」「頭が良いから」などはどうでしょう。別に悪い気はしないでしょうし、うれしいかも知れませんが、それらは別に他の人でも良いような気がします。

 そう考えたら、「どこが好き?」と訊かれたらはっきりと説明できず、「どこが困る?」と訊かれたら若干困ったように笑いながら妙に具体的に話してしまうような人は、自分のパートナーに対して真に愛情を感じており、他の人で代わりにはならないのです。もはや理屈ではなくその人自身を受け入れています。それは幸せなことです。

貴方も他者から見れば充分すごいかも知れない

 最初の「初対面の人との会話」に戻りますが、前にも触れた通り、私はそれなりに長いキャリアを持つ、そこそこの実力のシステムエンジニアです。一流ではありませんし、IT業の中でもありふれた分野を扱っています。

 それでもなお、コンピューターの扱いには疎い業界外の人たちにとっては、自分がふだんやっていることを軽く説明しただけで、相当高度なことをやっているように見られます。そういうものなのだと思います。

 よって最近は他の人と比べて負い目を感じることもなく、自慢することもなく、自分の生業も趣味もありのままに話すことにしています。それで見下してくるような輩に出会った時は、聞き流して晩ごはんの献立こんだてでも考えておけば良いのです。

 二つの違う話題を行ったり来たりしたように見えますが、これは過去3回の記事とは視点を変えて、現時点での「自分へのいたわり」(セルフ・コンパッション)について思うところをまとめました。