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【Disk】Helloween全アルバム楽曲平均点比較

 2021年のマイベストアルバムにも選出した7人編成ハロウィンの最新作。各国のレビュー見ても、概ねアプローチについては肯定的に捉えたものが多かったように思えます。ちなみに自分が本作成功のポイントとして挙げたのは下記の5つ

 ①キスクの伸びやかな高音による圧倒的な高揚感を伴った、流麗なハロウィン節の復活
 ②アンディ期楽曲アプローチの肯定(安易な「守護神伝」回帰の否定)
 ③実力派Vo2人を活用したツインボーカルの効果的アレンジ(デニス・ワードの貢献大)
 ④楽曲平均値の圧倒的高さ
 ⑤アナログ感あるマイルドなサウンドプロダクション

 本作を評価している方であれば大方納得できるポイントではないかなと思いつつも、自分で書いといて後々気になったのが④。「ホントに過去作と比較して楽曲平均値に圧倒的な差があったのだろうか?」。気になったら調べてみたくなるのが自分の性ということで、85年のデビューEP”Helloween”から最新作”Helloween”(なぜか同じタイトル…)までの全17作品の楽曲を自分の主観ながらも点数化し、平均点を比較することで、上記発言の正しさを検証してみることにしました(イントロ的な楽曲、日本盤ボーナストラックは対象外)。ちなみに客観性の担保のため、当初はサイト「この曲を聴け」の得票点数を使おうかと思ったものの、この10年近くサイトが活性化しておらず、直近の作品になればなるほどレビュー数が少ない傾向で、時代による公平性が保てないため断念しています。
 なお、次回投稿では、作品平均点比較に加え、バンド内のコンポーザー数がやたらと多いバンドという特徴があることから、コンポーザー別の平均点、5つ星(キラーチューン)、2つ星以下(イマイチ曲)比率も出してみて、作曲者別の貢献度や特色も分析。「ヴァイカートは本当に天才ホームランバッターなのか?」「ローランドを始めとした脱退したメンバーの作曲貢献度は?」などの疑問を数字で明らかにしてみたいと思います。

 5点(★★★★★)・・・バンドの歴史を代表する名曲
 4点(★★★★) ・・・アルバムおススメ曲。繰り返し聴きたい
 3点(★★★)  ・・・平均的なレベルの曲。まあまあ。
 2点(★★)   ・・・イマイチな曲。印象に残らない
 1点(★)    ・・・退屈な曲。飛ばして聴きたい

■アルバム別平均点

(赤字:Top5、青字:Worst5)

 ・EP "Helloween" (1985)

    01. Starlight  Weikath/Hansen   ★★★★★
    02. Murderer Hansen ★★★
       03. Warrior  Hansen ★★★
       04. Victim of Fate  Hansen  ★★★★
       05. Cry for Freedom   Weikath/Hansen ★★★★

平均点 3.80点 (9位)
5点(キラーチューン)比率 20% (14位)

 カイのVoは音程が相当怪しいし、演奏、作曲共にまだまだ粗削りながらも、平均点3.80(9位)と意外と健闘。スピーディーな演奏に印象的な歌メロとキャッチーなツインギターが乱舞する「初期ハロウィン楽曲様式」の原型は、本作で既に確立されています。スラッシーだったり、メイデン調だったりする勢い重視のカイ単独曲よりも、ヴァイキー/カイの共作曲に「ハロウィン楽曲様式」の色合いが濃いですね。特に"Starlight"のブリッジ~コーラスの流麗なメロディと、全編口ずさめるキャッチーなギターソロに、コンポーザーとしての非凡な才能が早くも炸裂しています。”Cry for Freedom”のイントロがほぼ”Doctor Doctor”なのもカイの伝統芸w

・1st ”Walls of Jericho”(1986)

       01. Walls of Jericho  Weikath/Hansen   
    02. Ride the Sky  Hansen ★★★★★
       03. Reptile  Weikath ★★★
       04. Guardians  Weikath  ★★★★★
       05. Phantoms of Death   Hansen ★★★★
    06. Metal Invaders   Hansen  ★★★★
       07. Gorgar  Weikath/Hansen  ★★★
    08. Heavy Metal (Is the Law)   Weikath/Hansen  ★★★★★
       09. How Many Tears  Weikath    ★★★★★

       平均点 4.25点(5位)
      5点(キラーチューン)比率 50%(4位)

    スラッシュメタル的攻撃性・スピード感と、流麗なヴォーカルメロディが高い次元で融合した初期ハロウィンの傑作。作曲は、カイ3曲、ヴァイキー3曲、共作2曲。ヴァース~ブリッジに掛けて抑揚のあるドラマティックな展開を織り込みながらも、コーラスは比較的シンプルな王道メタル的に仕上げるカイと、キャッチーかつ劇的なサビメロの導入で高揚感・飛翔感溢れるメロパワ楽曲に仕上げるヴァイキーという2人のメインコンポーザーの色合いの違いも本作で結構クリアに表れています。Metallica ”Trapped under Ice”的な激しいスラッシュリフをバックに起伏の激しいメロディが流れるように展開していく代表曲”Ride the Sky”、メジャーコードの牧歌的メロディで疾走するというパワーメタルの新たなスタイルを発明した”Guardians”、泣きメロの大波が次々と押し寄せる感動と激しく疾走する躍動感を同時に味わえるドラマティックな名曲”How Many Tears”と、ハロウィン史どころか、メタル史に残る重要楽曲が複数収録されている怪物的作品。平均点は4.25点で5位ですが、普通のバンドなら本作が代表作と呼ばれているかもしれません。個人的にもメタルワールドにはまり込むきっかけとなった思い入れの強い作品。

・2nd "Keeper of the Seven Keys: Part I" (1987)


     01.  Initiation  Hansen    
     02.  I'm Alive  Hansen  ★★★★★     
     03.  A Little Time  Kiske   ★★★     
     04.  Twilight of the Gods   Hansen  ★★★★★  
     05.  A Tale That Wasn't Right  Weikath  ★★★★     
     06.  Future World   Hansen   ★★★★★     
     07.  Halloween   Hansen   ★★★★★     
     08.  Follow the Sign  Hansen/Weikath  

     平均点 4.5点(2位)
     5点(キラーチューン)比率  66.7%(2位)

 マイケル・キスクが専任Voとして加入。演奏・プロダクションの整合感も増し、メジャー感溢れるサウンドに変化。楽曲構造的にもスラッシュメタル的なリフワークが一掃され、音像的にはより王道的なメタルに近づいてます。平均点4.5点、キラーチューン率66.7%。メタル史に残る名盤中の名盤として別格に祭り上げられている「守護神伝 第1・2章」。さすがに完成度を数値化してみると、改めてその異次元っぷりが分かりますね。メインソングライターはカイ・ハンセン。提供した4曲全て5点満点、しかも全てが異なる楽曲スタイルという神懸かり的な才能を見せつけてくれてます。キスクの強力なハイトーンと力強いコーラス、そして全編口ずさめるギターソロが印象的な疾走パワーメタル曲”I'm Alive"、交響曲のようなギターソロから唐突にスタートし、メジャーコードの大仰なサビメロで強烈な高揚感を与えてくれる”Twilight of the Gods”、メイデンの”The Number of the Beast”や”Run to the Hills”の系譜にあるポップなコンサート大合唱系メタルナンバー”Future World”、アグレッシヴなリフを軸とした複雑な展開ながらも全く飽きの来ないドラマティックな13分の大曲”Halloween”と、並みのバンドが一生に1曲作れるかどうかという名曲を、同時期に4曲も作れてしまうところが恐ろしい。また”Future World”のようなスピードに依存しない楽曲で代表曲を作れてしまう良い意味での普遍性が、その後登場してくるハロウィンチルドレン達との大きな差異だと思います。なお、4点にしたものの、ヴァイキー作のねっとり系演歌バラード”A Tale that wasn’t Right"のインパクトもなかなか強烈です。

・3rd "Keeper of the Seven Keys: Part II" (1988)


      01.  Invitation  Weikath 
      02.  Eagle Fly Free  Weikath    ★★★★★ 
      03.  You Always Walk Alone   Kiske   ★★★★ 
      04.  Rise and Fall  Weikath    ★★★★★  
      05.  Dr. Stein   Weikath  ★★★★★
      06.  We Got the Right   Kiske   ★★★★★
      07.  March of Time  Hansen   ★★★★★
      08.  I Want Out  Hansen     ★★★★★
      09.  Keeper of the Seven Keys  Weikath  ★★★★★
      10.  Save Us   Hansen  ★★★★

      平均点 4.78点(1位)
      5点(キラーチューン)比率  77.8%(1位)

 この数値を見ても明らかなように、楽曲の平均値、キラーチューン率の高さという点では、おそらく50数年のメタル/ハードロックの歴史の中でもトップクラスでしょう。M3、M10以外は全て5点満点。しかもメロパワチューンからバラード、コミカルなポップチューン、エピカルな長編曲と収録曲がバラエティに富んでいるところが凄い。不朽の名曲M2、M9のインパクトがあまりに強烈過ぎるため、ヴァイキーメインの作品という印象もありますが、コンポーザーは、ヴァイキー4曲、カイ3曲、キスク2曲と、ちゃんと仕事を分け合ってます。ツーバス疾走+明るく飛翔感あるサビメロ+hiFあたりまで届く伸びやかなハイトーンVoの組合せという「メロディックパワーメタルの新たな型」を創り上げた”Eagle Fly Free”、オリジナルのエピック・ファンタジーをヘヴィメタルのフィルターを通して語るというチャレンジに成功したドラマティックな大曲”Keeper of the Seven Keys”、コミカルに疾走する新たなハロウィンらしさの一面を提示した”Rise and Fall”、口ずさみたくなる超キャッチーな歌メロとメタリックなリフのコンビネーションが印象的なミドルテンポのシングル曲”Dr. Stein”と、スタイルは様々ですがどれもが尋常でないクオリティ。ヴァイキーの天才作曲家としての才能が一気に開花した作品と言えます。また一方前作から5点連発中のカイも、3曲中2曲が5点満点という無双っぷり。特にテンポチェンジを繰り返しながらhiF#まで届く超絶ハイトーンVoで劇的に展開する泣きのパワーメタル曲”March of Time”と、”Out in the Fields” (Gary Moore & Phil Lynott)をオマージュしながらも、緊張感と高揚感の同居が堪らないソリッドなメタルチューンに仕上げた”I Want Out”の2曲があまりにも素晴らしい。後半この緊張感漲る2曲があることで「守護神伝 第2章」の作品としての格がグッと上がっているように思えます。

・4th "Pink Bubbles Go Ape" (1991)

      01. Pink Bubbles Go Ape  Kiske
      02. Kids of the Century   Kiske   ★★★★★
      03. Back on the Streets    Grapow   ★★★
      04. Number One  Weikath   ★★
      05. Heavy Metal Hamsters  Weikath   ★★
      06. Goin' Home   Kiske  ★★★★★
      07. Someone's Crying   Grapow   ★★★★
      08. Mankind   Grapow   ★★★
      09. I'm Doin' Fine, Crazy Man   Grosskopf  ★
   10. The Chance  Grapow   ★★★★★
      11. Your Turn  Kiske  ★★★★

      平均点 3.4点 (15位)
      5点(キラーチューン)比率 30%(9位)

 脱退したカイ・ハンセンが、Gamma Rayの1st”Heading for Tomorrow”で、ハロウィン様式をベースに、大仰なクラシックやオペラ調アレンジを採り入れた新たなパワーメタルサウンドを提示し、自分も含めたハロウィンファンが大喝采を送った一方、ローランド・グラポウを新ギタリストとして迎え入れた新生ハロウィンの4thは、発売延期など様々なビジネス面でのトラブルの影響もあり、ハロウィンのカタログの中では印象の薄い作品に。数字で見ても、平均点15位と、やはりハロウィン史の中でも下位に位置しています。キラーチューン比率は30%(9位)とまずまず健闘しているんですが、2点以下のイマイチ曲比率が30%と高い(ワースト17位)ことが点数が伸び悩んだ大きな要因ですね。作風的には、パワーメタル色がかなり薄れ、"Livin' Ain't No Crime"や"Rise and Fall"で聴かれたようなファニーで緩い雰囲気が全体を覆っています。前作で驚異的な才能を見せつけたヴァイキーは2曲提供のみ。しかもクオリティは2曲ともに星2つで、アルバムの足を引っ張ってしまう低調っぷり。一方、新加入のローランドは4曲提供で、平均点3.75、5つ星1曲と健闘"The Chance"の流麗なメロディに象徴されるように、素直に良いメタルソングが創れるコンポーザーと言えると思います。また、キスクも3曲提供。5つ星を付けた"Kids of the Century"、"Goin' Home"では、高揚感を煽るヴァイキー節とはまた一味違った華麗なコーラスのスタイルを生み出しており、ハロウィンの新たな可能性を示唆していたように思えます。ただ、ヴァースや全体のアレンジにメタル的緊張感が無いのも特徴で、そこが一部のハロウィンファンから不評を買っていた原因なのかなと思いますね。ちなみに、今回からベースのマーカスもコンポーザーとして名乗りをあげましたが、残念ながら星1個評価のアルバム「飛ばし曲」になってしまいました。まあ、いかにも習作的な楽曲ですし…。


・5th "Chameleon" (1993)

     01. First Time  Weikath     ★★★★★
     02. When the Sinner  Kiske     ★★★★
     03. I Don't Wanna Cry No More   Grapow  ★★★
     04. Crazy Cat  Grapow   ★★★
     05. Giants  Weikath   ★★★★★
     06. Windmill   Weikath    ★★★★
     07. Revolution Now   Weikath   ★
  08. In the Night   Kiske    ★★
     09. Music   Grapow   ★
     10. Step Out of Hell   Grapow  ★★★
     11. I Believe   Kiske    ★★★★
     12. Longing   Kiske    ★★★★

平均点 3.25点(17位)
5点(キラーチューン)比率 16.7%(15位)

 キスク主導で脱メタル路線に大きく舵を切ったハロウィン最大の問題作。名曲、佳曲もそれなりにあるものの、中盤の退屈曲連発が足を引っ張り、結果、平均点は17作品中最低の3.25点。リズムやサウンド面での遊びの少ない構築感あるサウンドが特徴のバンドが、アメリカンロック的な音の遊びや揺らぎをサウンドに導入。ロックンロール、ブラスロック、フォークロック、ブルースロックなどの要素を採り入れた楽曲は、それなりのレベルには作られているんですが、ドイツ人らしい生真面目な歌唱・演奏・アレンジが、目指したかった音楽的方向性とうまくマッチしておらず、3つ星以上を付けた楽曲でも、ぎこちない印象はぬぐえません。その中で、ヴァイキー提供の”First Time”、”Giants”の2曲に関しては、欧州バンドらしい重厚なリフ主体の王道ハードロック路線で安心して聴けます。また、キスク作のラスト2曲(”I Believe”、”Longing”)も、キスクの熱唱を前面に押し出した緊張感溢れる佳曲で、かつてのハロウィンの延長線上で楽しむことが出来ると思います。敢えて狙った冒険路線だけに、本作をもってコンポーザーとしての能力を推し量るのは難しいですが、3つ星3曲・1つ星1曲のローランドは、フォークっぽいアプローチからブラスロックに至るまで、多様な方向性に果敢に取り組んではいるものの、表層的にスタイルを借りてきた印象が強く、王道メタル/ハードロック路線以外の応用力はあまり高くなさそうですね。

・6th "Master of the Rings" (1994)

     01. Irritation  Weikath
     02. Sole Survivor Weikath  ★★★★★
     03. Where the Rain Grows   Weikath   ★★★★★
     04. Why?   Deris  ★★★★
     05. Mr.Ego.  Grapow  ★★
     06. Perfect Gentleman Deris  ★★★★★
     07. The Game is On  Weikath  ★★★★
     08. Secret Alibi  Weikath  ★★★★★
     09. Take me Home  Grapow  ★★★
     10. In the middle of a Heartbeat  Deris   ★★★
     11. Still We Go   Grapow  ★★★★★

     平均点 4.1点 (6位)
  5点(キラーチューン)比率 50% (4位)

 マイケル・キスク(Vo)、インゴ・シュヴィヒティンバーグ(Dr)が脱退し、Pink Cream 69のアンディ・デリス(Vo)、Gamma Rayのウリ・カッシュ(Dr)を新たに迎えて、再びメタル路線に回帰。平均点4.1点、5点比率も50%と、数字的にも並みのバンドであれば代表作として位置付けられるレベルの傑作。新加入のアンディは、音符通りにメロディをなぞるよりも、独特の節回しや裏声の巧みな活用で、歌に色気を感じさせる味わい重視タイプのシンガーですが、その個性を上手く活かした路線で、ツーバス疾走曲やメタリックなリフでアグレッシブに突き進むパワーメタル楽曲は少なく、歌を前面に押し出したメロディアスなメタル~ハードロック曲が並びます。コンポーザーは、ヴァイキー4曲、アンディ3曲、ローランド3曲。天才ヴァイキーが完全復活しており、特に5つ星を付けた、起伏に富んだポップな歌メロ展開が素晴らしいソリッドなオープニングナンバー”Sole Survivor”、裏声を巧みに使った陰影に富んだメランコリックなブリッジから明るく開放感あるサビへの流れが圧巻のアップテンポな”Where the Rain Grows”、アンディの歌唱があってこそ成立し得る、強烈な哀メロ炸裂のハードロックチューン”Secret Alibi”の3曲が出色の出来。アンディの個性に見事にマッチした新生ハロウィン楽曲として成立しています。アンディもまだPC69的な色合いが強い楽曲ではあるものの”Why?”、”Perfect Gentleman”というインパクトの強いメロディアスなハードロックチューンを提供し、早速コンポーザーとしての存在感を見せつけてくれてます。ローランドは、何と言ってもラストの隠れた名曲”Still We Go”。アンディのヒステリックな高音が、X Japanにも通ずる悲哀感溢れる疾走型パワーメタル楽曲の素材として有効活用できることを発見し、現在まで続く「高音ファルセットを交えて胸熱メロディを絶唱する」アンディ期メロスピ楽曲の1つの原型(”Kings will be Kings”、”Open Your Life”、”Silent Rain”、”World of War”の系譜)を創り上げた貢献は決して小さくないと思います。

・7th "The Time of the Oath" (1996)

     01. We burn  Deris  ★★★
     02. Steel Tormentor  Weikath ★★★
     03. Wake up the mountain  Kusch  ★★★
     04. Power  Weikath  ★★★★★
     05. Forever and One  Deris  ★★★★
     06. Before the war  Deris  ★★★★★
     07. A million to one  Kusch ★★★
     08. Anything my mama don't like  Deris/Kusch  ★★★★
     09. Kings will be kings  Weikath  ★★★★★
     10. Mission Motherland  Weikath/Helloween  ★★★
     11. If I Knew  Weikath  ★★★★
     12. The Time of the oath  Grapow  ★★

     平均点 3.67点 (10位)
  5点(キラーチューン)比率 25%(14位)

 20万枚のセールスを記録するなど日本での評判は極めて高かったものの、個人的にはあまりしっくりこなかった作品。こうして数字で見てみると、平均点3.67点(10位)、5点比率25%(14位)と、やはり平均以下の結果になってしまいました。巷で評価の高い冒頭2曲(”We Burn”と”Steel Tormentor”)を3つ星評価にしていることが影響してそうですね。全体的には、アンディの特徴を活かした歌重視の前作とは異なり、アグレッシブなリフの刻みやツーバス疾走といったパワーメタル的な要素がかなり色濃い作品。バックの激しい演奏に負けじと頑張ってはいるんですが、ヴァースやブリッジパートでの陰影に富んだ歌いっぷりに定評があるアンディのシンガーとしての個性(強み)があまり活きていない楽曲が多く、どこか苦し気だったり、無理をしているように自分としては聞こえてしまいます。コンポーザーは、ヴァイキー4曲、ヴァイキー/バンド共作1曲、アンディ3曲、ローランド1曲、ウリ2曲、アンディ/ウリ共作1曲とかなりバラエティに富んでいますが、この中でも安定感あるのはやはりヴァイキー。アンディの個性とハロウィン節が見事に合体したメランコリックな名曲”Power”、アンディの裏声ハイトーンによる哀愁メロディが強烈にエモーショナルな疾走曲”Kings will be Kings”は、間違いなくアルバムのハイライト。ただ、全体的には3つ星楽曲比率が高く、一部の強力な楽曲(特に”Power”はハロウィン史屈指の名曲)の牽引力で巷では名盤扱いされているものの、楽曲平均点の視点では平凡作というのが、自分としての見解になりますね。

・8th "Better than Raw" (1998)

     01. Deliberately limited preliminary Prelude period in Z   Kusch
     02. Push   Kusch   ★★★
     03. Falling Higher   Weikath  ★★★★★
     04. Hey Load!   Deris  ★★★★
     05. Don't spit on my mind   Deris/Grosskopf  ★
     06. Revelation   Kusch  ★★★
     07. Time   Deris  ★★★
     08. I Can   Deris  ★★★★★
     09. A handful of pain   Kusch  ★★
     10. Lavdate Dominvm   Weikath  ★★★
     11. Midnight Sun   Weikath  ★★★★★

平均点 3.4点 (15位)
5点(キラーチューン)比率 30% (9位)

 アグレッシブに攻めてた前作と比較すると、かなりバラエティに富んだ作品で、メロスピ系のヴァイキー、メロディアスなハードロック系のアンディ、アグレッシヴでダークなウリと、コンポーザーの役割も明確に分かれている印象です。5点を付けた”Falling Higher”、”I Can”、”Midnight Sun”という必殺の名曲が3曲も収録されている割に平均点3.4点(14位)と振るわないのが意外でしたね。3つ星(まあまあ評価)にしたものの、超アグレッシヴでヒステリックなスクリームが強烈な(ちょっと煩いけど)”Push”、中間部のヘヴィ&疾走パートが凄まじい”Revelation”、陽気に戯れる雰囲気のアップテンポ曲”Lavdate Dominvm”も楽曲としては悪くない。捨て曲のM5、M9がなければもう少し平均点も上がったはずで、自分の中での印象と点数とに若干乖離のある作品となりました。コンポーザー別に見ていくと、毎回確実に5つ星のキラーチューンを提供するヴァイキーの安定感はやはり凄いものがありますね。本作の白眉は”Midnight Sun”。名曲”How Many Tears”を彷彿とさせる「哀愁のメロディの大波」と「リズムチェンジを繰り返す複雑な演奏・ヘヴィなサウンド」が見事に融合したハロウィンらしさ満載の名曲。多作のアンディですが、今回は単独3曲、共作1曲。マーカスとの共作曲は退屈極まりないですが、”Hey Load!"、”I Can”の2曲は、まさにアンディ節炸裂といった感じの琴線刺激系ハードロックチューンで、うまく帳尻を合わせてくれてます。ウリは2曲提供。いずれも個別のパーツは悪くないのに、楽曲トータルとしての完成度(調和感)が今一つという印象で、コンポーザーとしてのレベル感としては、ヴァイキー、アンディと比べると若干落ちる感じです(比較対象が悪過ぎですが)。

・9th "The Dark Ride" (2000)

     01. Beyond the Portal (intro)   Deris
     02. Mr.Torture   Kusch   ★★★★★
     03. All over the nations   Weikath   ★★★★★
     04. 666 escalation 666   Grapow   ★
     05. Mirror Mirror   Deris   ★
     06. If I could fly   Deris   ★★★★
     07. Salvation   Weikath   ★★★★★
     08. The Departed (Sun is going down)   Kusch   ★★★
     09. I live for your pain   Deris   ★★
     10. We damn the night   Deris   ★★★★
     11. Immortal   Deris   ★★★
     12. The dark ride   Grapow   ★★★★★

     平均点 3.45点 (14位)
  5点(キラーチューン)比率  36.4% (7位)

ダウンチューニングを施したダークな作風が賛否両論を巻き起こした問題作。作品の方向性を巡る揉め事を機に脱退したMasterplan組&アンディとヴァイキーの楽曲方向性が明らかにズレていますね。5点楽曲が4曲も収録されているのに新機軸のM4、5、9のダーク&ヘヴィチューンが大きく足を引っ張り、楽曲平均点は3.45点と低め。ダークでエピカルな楽曲は、歌い手の声量とレンジが要求されるんですが、ヒステリックな高音スクリームor味わい重視のマイルド歌唱路線の2つのスタイルを使い分けるアンディにはやはり無理があったかなと…。作曲者別に見ると、アンディ5曲、ウリ2曲、ローランド2曲、ヴァイキー2曲。ヴァイキーの2曲は変わらぬメロパワ路線で両曲とも素晴らしいクオリティ。特に明るく勇壮なコーラスが交響曲的雰囲気を醸し出している”All Over the Nations”は、多幸感溢れるコーラスを活用したキャッチーなメロスピ曲という、その後のヴァイキーの得意技に(本作の中では結構浮いてますが…)。ただ、今回の目玉は何と言ってもウリ作の”Mr.Torture”ですね。ヘヴィかつリズミカルなヴァースとアンディのファルセットを活用した明るさと切なさが同居したコーラスの対比が絶品。アンディの歌唱の長所を的確に捉えているという点でも第4~5期ハロウィントップクラスの名曲だと思います。また、ドラマティックに展開しまくるパワーメタル大曲”The Dark Ride”も、素直に良いメタルチューンが書けるというローランドの長所が遺憾なく発揮された名曲。こうして見ると、かなりの名曲が揃っている作品なのに、新機軸楽曲がことごとく捨て曲となってしまい、結果、楽曲平均点的にはイマイチの作品となってしまいました。

・10th "Rabbit Don't Come Easy" (2003)

     01. Just a little sign   Deris   ★★★★★
     02. Open your life   Deris/Gerstner   ★★★★★
     03. The tune   Weikath   ★★★★★
     04. Never be a star   Deris   ★★★
     05. Liar   Deris/Gerstner/Grosskopf    ★★★
     06. Sun 4 the world   Gerstner   ★★★★
     07. Don't stop being crazy   Deris   ★★
     08. Do you feel good   Weikath   ★★★★
     09. Hell was made in heaven   Grosskopf   ★★★★
     10. Back against the wall   Deris/Weikath   ★★★
     11. Listen to the Flies   Deris/Gerstner   ★★★★
     12. Nothing to say   Weikath   ★★

     平均点 3.67点 (10位)
  5点(キラーチューン)比率 25% (11位)

 ローランド・グラポウ(g)とウリ・カッシュ(Dr)が脱退。ギターに元Freedom Callのサシャ・ゲルストナー、ドラムは助っ人のミッキー・ディー(Mortorhead)という布陣で制作された作品。本作からサシャとマーカスが作曲陣に加わり、音楽的なスタイルの幅が広かった印象です。ただ、5点が3曲(25%)ある割には、2~3点も5曲と多いこともあり楽曲平均点的にはあまり伸びませんでした。自分の印象としても、オープニング3曲で力尽きたアルバムということであまり積極的に食指が伸びなかった作品でしたね。多作のアンディは、単独作3曲、サシャとの共作2曲、サシャ/マーカスとの共作1曲という活躍ぶり。ヴァイキーのお株を奪うメジャーコードの勇壮なメロスピ曲”Just a Little Sign”は冒頭から強烈なインパクトですが、その他の単独作は、イマイチからまあまあレベル。むしろ本作で存在感を示したのが新加入のサシャ目玉はアンディとの共作曲”Open Your Life”。センスの良いリフやダイナミズム溢れる展開で現メンバーのスタイルとは異なる新しい風を吹き込みつつも、疾走するサビでは、アンディの良さを活かした琴線刺激型のエモーショナルな展開でハロウィンらしさを担保するところに、流れるようなメロディ展開に天才的閃きを感じさせるヴァイキーとは異なる職人的なセンスの良さを感じます。また、いよいよコンポーザーとしての頭角を表してきたのがマーカス”Hell was made in heaven”で、カイ・ハンセン在籍時を彷彿とさせるストレートな哀愁パワーメタル曲を披露し、ヴァイキーやアンディにも引けを取らないコンポーザーであることを強烈にアピールしています。

・11th "Keeper of the Seven Keys: The Legacy" (2005)

      01. The King for a 1000 Years   Deris/Weikath/Gerstner/Grosskopf/Dani   ★★★★
      02. The invisible man   Gerstner   ★★★★
      03. Born on judgment day   Weikath   ★★★★★
      04. Pleasure Drone   Gerstner   ★★★
      05. Mrs. God   Deris   ★★★★
      06. Silent Rain   Gerstner   ★★★★★
      07. Occasion Avenue   Deris   ★★★★
      08. Light the Universe   Deris   ★★★★
      09. Do you know what you're fighting for?   Weikath   ★★★
      10. Come Alive   Deris   ★★★
      11. The Shade in the shadow   Deris   ★★★★
      12. Get it up   Weikath   ★★★★
      13. My life for one more day   Grosskopf/Deris   ★★★★★

     平均点 4.0点 (7位)
  5点(キラーチューン)比率 23.1% (14位)

 ドラムにダニ・ルブレが新加入。手数の多い派手なウリ・カッシュに比べて、リズムチェンジの多いハロウィン楽曲のボトムを確実に固めるタイプの安定感あるドラマーで、マッチングの適性は非常に高いと思います。ちなみにタイトルにかの名盤”Keeper of the Seven Keys”の名を冠しているものの、音楽的な連続性は特にはありません。正直この名前を使わなければもっと高い評価を得られたのではないかと思われる力作。2/13曲(23.1%、14位)と5点台楽曲は少ないものの、4点楽曲が7曲、2点以下のイマイチ曲無しと粒揃いの楽曲が揃っていることから、平均点4.0点(7位)と健闘。アンディ5曲、サシャ3曲、ヴァイキー3曲、アンディ&マーカス共作1曲、全員共作1曲。コンポーザーも多彩なら、楽曲のバラエティも豊富で、幅の広さという点ではアンディ加入後ナンバーワンかも知れません。アルバムのハイライトは、サシャ作の”Silent Rain”。”Eagle Fly Free”系のソリッドなメタルリフを主軸にテンポチェンジを繰り返しながら、サビではファルセット全開で明るさと悲哀感が同居したメロディをアンディが絶唱。アンディ期ハロウィンの真骨頂と言うべき名曲だと思います。また点数は4点としましたが、アンディ作のダイナミックで緊張感漲る長編曲”Occasion Avenue”も強烈。いくらギターも弾けるとはいえ、これ程までにプログレッシブで複雑な楽曲をボーカリストが作ってしまえることが驚異的

・12th "Gambling with the Devil" (2007)

      01. Crack the riddle   Deris/Weikath/Grosskopf/Gerstner/Dani
      02. Kill it   Deris  ★★★★
      03. The saints   Weikath  ★★★★★
      04. As long as I fall   Deris  ★★★★★
      05. Paint a new world   Gerstner  ★★★★
      06. Final fortune   Grosskopf  ★★★★★
      07. The Bells of the seven hills   Deris  ★★★★
      08. Fallen to pieces   Deris  ★★★
      09. I.M.E.   Deris  ★★
      10. Can do it   Weikath  ★★★
      11. Dreambound   Gerstner  ★★★★★
      12. Heaven tells no lies   Grosskopf  ★★★★

     平均点 4.0点 (7位)
  5点(キラーチューン)比率  36.4% (7位)

 前作に引き続き平均点4.0点(7位)の力作5点台も4曲(36.7%)と名曲比率も高く、M8-10の若干の中弛み感がなければ名盤扱いされたように思えます。相変わらず多作のアンディが5曲で、ヴァイキー、サシャ、マーカスがそれぞれ2曲ずつ。アンディは毎度のことながら、5点の決め曲をしっかり提供する一方、アルバムの中休み的な曲も合わせて提供しがちなのが特徴。ヴァイキーの”The Saints”は、お得意の多幸感コーラスを乗せたメジャーコードのメロスピ路線で、驚きはないものの安定感抜群。ただ、ここ数作同様に、インパクトのある楽曲を提供しているのはサシャとマーカス。共に平均4.5点と、ヴァイキーとアンディを差し置き、メインコンポーザー的な活躍を見せています。サシャは、四連符の高速開放弦の刻みをバックにクールな歌メロで疾走する”Paint a New World”、ティモ・トルキのお株を奪うネオクラギターと哀愁メロディの融合が絶品の”Dreambound”とタイプの異なるスピードナンバーを提供。多様なスタイルで良曲を生み出せる非常に器用なコンポーザーだと思います。マーカスは、名曲”Secret Alibai”や”Perfect Gentleman”にも匹敵する強烈な哀愁炸裂のハードロックナンバー”Final Fortune”、憂いを帯びたツインリードのイントロから心を鷲掴みしてくれる、たおやかなアンディの歌唱の魅力を存分に活かした”Heaven Tells No Lies”と、メロスピ路線以外にも名曲が作れる、コンポーザーとしての懐の深さを見せてくれてます。

・13th "7 Sinners" (2010)

      01. Where the sinners go   Deris ★★★
      02. Are you metal?   Deris ★★★★
      03. Who is Mr. Madman?   Gerstner ★★★★★
      04. Raise the noise   Weikath ★★★★
      05. World of Fantasy   Grosskopf ★★★★★
      06. Long live the king   Deris ★★★
      07. The smile of the sun   Deris ★★★
      08. You stupid mankind   Gerstner ★★
      09. If a mountain could talk   Grosskopf ★★★★
      10. The sage the fool the sinner   Weikath ★★★★★
      11. My sacrifice   Gerstner ★★★
      12. Not yet today   Deris 
      13. Far in the future   Deris ★★★

     平均点  3.67点  (11位)
  5点(キラーチューン)比率 25% (11位)

 メタルコアばりのハロウィンにしてはブルータルでモダンな音像の作品。5点が3曲(25%)と名曲比率は低め。平均点も3.67点(10位)と真ん中より少し下。悪目立ちはしないけれど印象にも残りづらいという、何となくこのアルバムの世間の評価と一致する結果に。相変わらずサシャとマーカスが作曲面で気を吐いていますが、本来メインコンポーザーの1人であるアンディは本調子と言えない出来。相変わらず5曲提供と多作ながら、4曲が3点と若干スランプ気味と言っても良いかもしれません(ブルータルなパートも入った”Are You Metal?”は面白いですが)。ヴァイキー提供曲は共にアップテンポ曲で安定感抜群。特に”The sage the fool the sinner”のエモーショナルなサビメロの盛り上げ方は天才的。ただし、本作のハイライト楽曲提供者は、またもやサシャ。メロディアスな名曲”Perfect Gentleman”(アンディ作)の続編と言われる”Who is Mr. Madman?”。ただし楽曲としての連続性はなく、こちらは強烈なハーモニクス入りのモダンなメタルリフを活かしたアグレッシブなナンバーで、疾走感満載のコーラスが非常にクールな出来。ハロウィンに新しいアップテンポの楽曲スタイルを提供してくれています。演奏面でも楽曲制作面でも、第5期ハロウィンを支える存在になってきた感じですね。またマーカス作の”World of Fantasy”、”If a mountain could talk”は、ハロウィンファンなら誰もが喜びそうな、マイナーコードのメロディアスな旋律が染みるパワーメタル曲。「ストレートで良質なパワーメタルナンバーを書ける」という点で、カイやローランドが抜けた作曲面の穴をマーカスが上手く埋めてくれてる気がします。

・14th "Straight out of Hell" (2013)

     01. Nabatea   Deris ★★★★★
     02. World of war   Gerstner ★★★★★
     03. Live now!   Deris/Gerstner ★★★★
     04. Far from the stars   Grosskopf ★★★★★
     05. Burning sun   Weikath ★★★★★
     06. Waiting for the thunder   Deris ★★★★★
     07. Hold me in your eyes   Gerstner ★★★
     08. Wanna be god   Deris ★★★
     09. Straight out of hell   Grosskopf ★★★★★
     10. Asshole   Gerstner ★★★
     11. Years   Weikath ★★★★★
     12. Make fire catch the fly   Deris ★★★★
     13. Church breaks down   Gerstner ★★★★

     平均点 4.31点 (4位)
  5点(キラーチューン)比率  53.8% (3位)

 楽曲の充実度とハロウィンらしさ(親しみやすいメロディ&疾走感)が存分に発揮されているという点で、アンディ期ハロウィン(第4〜5期)の最高傑作というのが自分としての評価。平均点4.31点(4位)、キラーチューン率53.8%(3位)と、”Walls of Jericho”や”Master of the Rings”といったハロウィン史に残る傑作を数字上でも上回っています。作曲は、アンディ4曲、ヴァイキー2曲、サシャ4曲、マーカス2曲、アンディ/サシャ共作1曲。全体的に速い曲が多く、雰囲気もエネルギッシュで開放感に溢れています。コンポーザー別に見ていくと、ややスランプ気味だったアンディが平均点4.25点と完全復調。特に中近東メロディのイントロが印象的な展開の激しい疾走曲”Nabatea”、メランコリックなピアノのイントロが美しい、Amorphis的北欧ゴシックメタルのメランコリックな世界観とアンディ節メロディが見事に融合した”Waiting for the Thunder”が素晴らしい。また、ヴァイキー作のブラガ的荘厳なコーラスで疾走する”Burning Sun”、サシャ作のアンディの強烈なファルセットによる悲哀感炸裂の爆走曲”World of War”のインパクトも強烈。このように名曲目白押しの本作ですが、これらを抑えてのハイライトは、マーカス作の”Straight out of Hell”。小気味良いリズムとツインリードでスタートし、明るくエネルギッシュなコーラスで一気にエネルギーが爆発する、ライブ大合唱系のキャッチーなメタルチューン。「ボーナストラック職人」と言われ続けたマーカスがこれだけの名曲を作るとは何だか感慨深いものがありますね。

・15th "My God-Given Right" (2015)

     01. Heroes   Gerstner ★★★
     02. Battle's Won   Weikath ★★★★★
     03. My God-Given right   Deris ★★★★
     04. Stay Crazy   Deris ★★★
     05. Lost in America   Deris ★★★★
     06. Russian Roule   Deris/Gerstner ★★★
     07. The swing of a fallen world   Deris ★★
     08. Like Everybody Else   Gerstner ★★
     09. Creatures in heaven   Weikath ★★★★★
     10. If God loves rock'n'roll   Deris ★★★★
     11. Living on the edge   Grosskopf ★★★★
     12. Claws   Weikath ★★★★
     13. You, still of war   Gerstner/Deris ★★★

     平均点 3.54点 (13位)
  5点(キラーチューン)比率 15.4% (17位)

 点数と順位で明らかなように、決め曲の少なさ、楽曲平均点の低さのダブルで低調な作品。何か特別な路線を狙った問題作ということではなく、単純に楽曲のクオリティがイマイチ上がらなかったという感じですね。作曲者別に分析すると、唯一気を吐いてるのがヴァイキー。5点2曲に、4点1曲。いずれも疾走曲ですが、お得意のメジャーキーを活用した高揚感・多幸感溢れるコーラスで疾走する”Battle’s Won””Creatures in Heaven”の2曲が5点。お馴染みのアプローチながらもこれ程までに心を動かすメロディを創造出来るところがヴァイキーの天才メロディメイカーたる所以といったところでしょうか。アンディは単独曲4曲で平均3.4点と今ひとつ。”My God-Given right”も”If God loves rock'n'rol”も、単独で取り出せば5点付けても良いくらいの極上のメロディが展開する良曲なんですが、前者は”Power”、後者は”Final Fortune”の自己模倣が露骨過ぎるということで減点。サシャは単独で2曲提供。名曲の香りがプンプンするタイトルをつけながらも可もなく不可もない中途半端なオープニング曲に、フックに乏しい退屈バラード曲M7と、いつもの職人的な冴えがまるで感じられません。加えて、デリス/サシャの共作2曲も悪くはないけど今一つ乗り切れない楽曲ということで、総合すると低評価の戦犯はサシャ&アンディということになりますね。なお、ここ数作でコンポーザーとして目覚ましい活躍を見せているマーカスは”Living on the Edge”1曲のみの提供ですが、明るく多幸感溢れるサビメロが心地良い佳曲で、派手さはないですが、しっかりと自分の仕事をしてくれています。

・16th "Helloween" (2021)

     01. Out for the glory   Weikath ★★★★★
     02. Fear of the fallen   Deris ★★★★★
     03. Best time   Gerstner/Deris ★★★★
     04. Mass pollution   Deris ★★★★
     05. Angels   Gerstner ★★★★
     06. Rise without chains   Deris ★★★★★
     07. Indestructible   Grosskopf ★★★★
     08. Robot king   Weikath ★★★★★
     09. Cyanide   Deris ★★★★
     10. Down in the Dumps   Weikath ★★★★
     11. Orbit   Hansen
     12. Skyfall   Hansen ★★★★★

     平均点 4.45点 (3位)
  5点(キラーチューン)比率  45.5% (6位)

 キラーチューン比率ではTOP5に入っていないものの、楽曲平均点は4.45点(3位)と歴史的名盤「守護神伝 第1・2章」に迫る高得点アルバム。3点以下の楽曲がなく、11曲全てが4点以上というハイレベルな楽曲が揃っているのが大きな特徴。コンポーザーは、ヴァイキー3曲、アンディ4曲、サシャ1曲、マーカス1曲、カイ1曲、アンディ/サシャ共作1曲。ここ数作作曲面で活躍していたサシャ、マーカスの2人はカイ&キスク復帰作というアルバムの性格を考慮し、今回提供楽曲は控え目。ヴァイキーは、”The Dark Ride”以降続いてた、明るく多幸感溢れるコーラスで疾走する分かりやすいメロスピタイプの楽曲は控え”Robot King”、”Down in the Dumps”では、楽曲構成はかなり複雑ながらも、コーラス部分では、カイのお株を奪う王道メタル感を重視したシンプルなパワーメタル美学(サビの連呼)を貫いています(本人はJudas PriestやMaliceを意識したらしい)。その他ヴァイキー作では、オープニングを飾る”Out for the Glory”の高揚感・飛翔感溢れる往年のハロウィン節の復活も感涙モノではありますが、本作のハイライト楽曲として挙げたいのは以下の2曲。1つはアンディ作の疾走曲”Fear of the fallen”。メランコリックなアンディ節を主軸に展開する楽曲ながらも、サビ部分ではキスクの伸びやかな高音のパワーが加わることで、かつてのハロウィンの醍醐味であった「天を翔け昇るかのような強烈な高揚感」が復活。アンディの味わい深い歌い回しによる胸を締め付けるような悲哀感と、キスクの伸びやかなハイトーンによる躍動感溢れるダイナミックな高揚感が同時に味わえる、まさに新生ハロウィンにしか出せない超弩級の名曲だと思います。もう1つは、我らがアーライ神・カイ作の大曲”Skyfall”。本人言うところの”Keepers Vibe”を存分に感じさせてくれる楽曲で、雄大でドラマティックな旋律が洪水のように押し寄せてくる圧巻の展開は、もはや神懸かり的。ただ、こうした名曲が多数あるとは言え、実は本作の一番肝は、疾走曲(主役)の脇を固めるM3、4、5、7、9といった楽曲の充実。特に「中弛み楽曲提供王」のアンディが、今回は楽曲をかなり練り込んできたようで、非常に緻密なボーカルアレンジを見せてくれたこと(デニス・ワード貢献大)が、アルバムの緊張感と全体の質を高めることに大きく寄与していると思います。

 こうして全楽曲を楽曲クオリティという視点で改めて振り返ると、音像的にはヘヴィ&アグレッシブですが、音楽的な核にあるのは親しみやすいメロディ。結局スピードナンバーだろうが、ミッドテンポだろうが、バラードだろうが、そのメロディの質の出来・不出来によって、作品の評価が決まるタイプのアーティストであり、今回のランキングでも、メロディの完成度の高い楽曲の多く収録された作品が上位評価となる、という非常に分かりやすい結果が改めて見て取れました。

 なお、当初のお題であった「最新作”Helloween”は、ホントに過去作と比較して楽曲平均値に圧倒的な差があったのだろうか?」という点については、4位とは0.14ptも離れており、本作成功のポイントとして挙げた「楽曲平均値の圧倒的高さ」という分析の正しさがこれで証明されました

 次回は、その「親しみやすいメロディ」を35年以上に渡って創造してきた個々のコンポーザー(脱退メンバーも含めて8名もコンポーザーが存在する稀有なバンド)に焦点を当て、コンポーザー別の平均点、5つ星(キラーチューン)、2つ星以下(イマイチ曲)比率も出してみて、作曲者別の貢献度や特色も分析してみたいと思います。


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