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ラジオの力 ─1月2日の星野源ANN生放送を受けて。

1月1日、能登半島で大きな地震が発生。
最大震度7。

東京も震度3だったが、子供と遊んでいた私は揺れに気付かず、異変に気付いたのはYahoo!ニュースを見てからだった。
それくらいに、東京では被害はなかったが、確認のためにテレビをつけた瞬間、一気に気持ちはあの時に戻されてしまった。
テレビのチャンネルは一部を除き特別番組に切り替えられ、画面のL字は地震と津波の情報に埋め尽くされる。
そしてそこをはみ出すように大きく映される「にげて」のテロップ。
東日本大震災の時に感じた恐怖がよみがえってくる。
津波が来るかもしれない。その映像を子供に見せるべきか否か。
ただでさえ普通じゃないその画面を見せ続けることで、よくない影響を与えてしまいそうで、途中でテレビを消した。
直接的な被害は無いにしても、被災地の方々を思うと辛くなる。
真冬の北陸。夜の寒さ。
SNSを覗いても、気持ちが重くなる投稿ばかり。
気が滅入りそうになり、そこからも少し距離を置く。

そんな中でも、世界は動き続ける。
仕事始めは1月2日。
あんなに大きな地震があった翌日でも、店は営業する。

あの時もそうだった。
翌日も開店し、お客さまを迎えた。
企業の姿勢として、それは正しいのか?
当時の自分は大きな疑問を抱いた。
”不謹慎”
多分、当時はその単語にすべて支配されてしまっていた気がする。
でも少し時間が経ったときに、”いつも通りに生活できる人たちは、いつも通りに生活をすること”
それが被災された方にとっても、被災はしていなくても心が不安定な人にとっても、実は大事なことなんだと、気づいた。(気づいたというか、自分自身で納得した。)

1月2日。
後輩に「こんな時に普通に営業していていいんですかね?」と言われた。
その後輩は、3.11当時はまだ学生。
このような体験は初めてだったのだろう。
私はなるべく迷いの無いように、こう伝えた。
「普通に開店して、普通にお客さまを迎えることが、オレ達の責任であり使命なんだ。」
そうは言っても、自分だってまだ不安が残っている。
それでも、そう言って自分自身も奮い立たせるしかないんだ、と。
そんな時にXにこんな投稿があった。

本来は年末に収録した内容を放送するはずだった。
それが、生放送に変更される。
もう詳細は見ずとも、星野源さんの想いは伝わった。
なんてありがたいんだろうか。少しだけ泣きそうになる。そして居ても立っても居られずに、思わずメールを送ってしまった。
ラジオを聞いていて初めてのことだった。
多分読まれないけど、それでも伝えたいと思い、メールを送った。
そして、リアタイした。
次の日に支障が出るから、普段だったらタイムフリーで聞くけど、これだけはリアルタイムで聞きたかった。

1月2日、25時。

「さて、どんなラジオにしましょう。」

源さんの声は優しくて、でも少しだけ震えているようにも感じた。

冒頭、源さんはこんなことを話した。

被災地の方からのメールを読んで、ずっとこの2日間不安だったけど、それ以上の怖さだったり、心の痛みとか苦しみだったりを感じたので、(リスナーの皆さんも)聴いていて不安になったりする可能性もあります。
でも俺、それでいいと思います。
一緒に、不安になりましょう。
今日は、一緒に時間を過ごすってのが目的だから。

心に、深く刺さった。
不安でいいんだ。そして不安な人は他にもたくさんいて、でもこの時間は一緒に過ごすことができるんだ。
なんて、心強いんだろう。

2時間、本当にたくさんのメールを読んでくれた。(案の定自分のは読まれなかったけど)被災地の方からのメールもあれば、いつもの職人たちからのいつものくだらないメールもある。
「バカじゃないの」もいつも通り。
ラスト2通は本当にくだらなくて、声を上げて笑ってしまった。
なんだよ3つ目の乳首って。
辰年だから勃つ年って!!

バカ!!これで終わるのかこのラジオは!ありがとうね!
星野源でした!また会おう。

最高でした。
午前3時までの穏やかな時間。
普段通りの穏やかな時間。
たくさんの人たちと同じ時間を過ごせたことが本当に嬉しかった。
不安な思いを抱えて過ごす人たちの心も、少しでも暖まってくれていたらいいなと、心から思う。
ラジオには不思議な力があると思う。
映像があるわけじゃないから、耳から入ってきた情報に想像を巡らす。
四六時中スマホを見て、目から情報を入れ続けるような生活になった今、だからこそラジオを聴いている時間が好きだ。
ちゃんと一つのことに向き合えているような気がする。
とても貴重な時間。
だからこそ、「一体感」みたいなものが生まれるのだろうか。
この日の放送は、多分一生忘れることはない気がする。
この日の最後に聴いた「Friend ship」を忘れられないだろう。
”いつも通り”じゃない夜に、
”いつも通り”の声を届けてくれた星野源さん、
そして、星野源ANNチームの皆様、
本当にありがとうございました。

自分も”いつも通り”にできることを全うしていこう。
不安を抱えながら、でもしっかりと胸を張って。

P.S. 源さん、この分はどこかで振り替えて休んでください。。


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