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音楽に襲われる


5月4日

昨日の朝くらいからずっと頭の中で、
昔よく聴いていたある音楽が延々と流れている。

勉強している時や、他のことを考えたい時にもしつこく流れているので本当に鬱陶しい。


この現象のことを「イヤーワーム」、または「ディラン効果」と呼ぶのだと、最近になって知った。

ディラン効果は、ボブ・ディランの「風に吹かれて」という曲が耳に残りやすいことに由来した呼称らしい。


私のイヤーワームは、走っている時や、何か作業をしている時、特にひどくなりがちだ。


本当は頭を空っぽにできるはずの時に、その空間を埋めるように音楽が入ってくる。

しかも、大抵はずっと同じ曲の同じフレーズばかりだ。

せめてラジオみたいに何曲かランダムに流してくれれば良いのにと思う。




音楽が流れている間、時々私はその音楽に襲われているような感覚に陥る。


音に追いかけられ、焦らされ、責め立てられるように感じる。


実際に誰かが追いかけて来るのなら、必死で逃げるか、誰かに助けを求めるか、あるいは反撃したりして、もしうまくいけばその状況から逃れられるかもしれない。


しかし私を苦しめるのは、私の自身の頭である。


頭はどこに逃げてもついてくるし、頭がなければ逃げることはできない。


私は頭に苦しめられ、頭に助けを求めている。




頭の中で誰かと会話している時や、実際に誰かと話している時、何か文章を書いている時には、音楽は流れない。あと眠っている時にも。

それが終わるといつの間にかまた曲が始まっている。



この現象を起こさないためにはどうすればいいか。

自分の頭の中から音楽を、完全に消してしまうしかない。



そこで私は音楽を耳に入れないようにして生活している。

実際には、怖くて聴くことができないという言い方が正しいのかもしれない。

新たに音楽を聴くことがなければ、いつか今覚えている音楽が記憶から無くなった時、イヤーワームは起こらなくなるはずである。


私はイヤホンから大音量の雑音を流すことによって、耳から音楽が入って来るのを必死で防ぐ。



それにしても、世の中は音楽で溢れている。


どこかに出かけるにしても、家でテレビをつけたとしても、学校行事に参加するにしても、必ずと言っていいほど音楽が流れている。

私はその度に、慌ててイヤホンを装着しなければならない。



大きな雑音を毎日流しているので、そろそろ耳が悪くなってくるかもしれない。

おかしいのは耳ではなく頭のほうなのだが、私は不思議と耳の心配をする。


私はいつまで、イヤーワームに苦しんだり、音楽から逃げたりし続けなければならないのだろうか。


いつか気にならなくなる日が来るのだろうか。



画像は見ての通り、綿棒だ。

この綿棒で耳垢と一緒に、耳から頭にかけてこびりついた音楽をこそぎ取ることができたらどんなにいいだろう。




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