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私の「美」(19)「建築現場のクレーン」

 予定調和の美ではないものに、強く惹かれる私がいます。
 街中を無目的にふらふら歩いていて突然出会う美には感動というか、言葉を超えた震えのようなものをもらいます。特に、建築現場に惹かれるのは、1960年代、子供心に実感した、がむしゃらに伸びようとする勢いを感じるからなのかもしれません。
 新型コロ◯禍だ!大変だ!と、世の中が静寂を保っていたころ、ふらふら散歩をしていると、にょきりと晴天に突き上がるクレーンに出会いました。空の青を背景に、赤と白、そして黄色の配色。そして素材は紛れもない鉄。
 「機能美」だと安易にとらえる方もいらっしゃるでしょうが、微妙なバランスをとりながらも青空に向かって成長する雑草の美しさのような、その震える姿がなんとも言えませんでした。
 「意図せぬ美」というのかも知れませんし、鶴見俊輔さんの言うところの「限界芸術」なのかもしれませんが、建築現場という汗をかく仕事場に屹立するクレーンは、私の心の奥底に眠っているものを揺るがせました。
 こうした美に出会ってしまうと、それを探そうとする汚れた私がむくむくと立ち上がってくるのですが、「下品だな」と叩いて引っ込めます。
 この秋も、「意図せぬ美」に出会えればなとは、思っていますが。中嶋雷太

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