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私の好きな映画のシーン(3)

しかし……このシリーズ・タイトルを掲げたものの、好きなシーンがあまりにも多すぎて、困っています。さて、今回は『ゴッド・ファーザー』のスパゲッティを茹でるシーン。映画の流れではさほど重要なシーンではありませんが、貧しいイタリア系マフィアの汗臭さが漂うシーンです。寸胴鍋にスパゲッティを適当に放り込み、ソースはどうやら缶詰めのトマトソースで、味付けも適当だと思います。日本ならお茶漬け程度の食事だろうけれど、その何でもなさに心惹かれてしまいます。そして、もう一つはマーロン・ブランド演じるヴィトー・コルレオーネが亡くなるシーン。干からびた土のトマト畑。まるで故郷の貧しい農家の畑。遠くから聴こえる孫たちの遊び声。カサカサと土が舞い、日差しが揺らぐ。そして、ヴィトー・コルレオーネは胸に手を当て倒れ伏します。イタリアからニューヨークへ流れ着き、イタリア系マフィアを築き……。当時、33歳のコッポラ監督の、人を観る深さと人を描く力は、どのようなものだったのかと感服するばかりです。中嶋雷太

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