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若い劇伴作家のための映画案内#7

映画好きおじさんはブレード・ランナーの夢を見るか

(第一回)

ブレードランナー』(原題:Blade Runner)1982年公開
監督:リドリー・スコット
音楽:ヴァンゲリス
主演:ハリソン・フォード
原作:フィリップ・K・ディック 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(原題: Do Androids Dream of Electric Sheep?、 1968年)

2022年現在、60歳付近から上の世代の映画好きおじさんの多くが、何かと「ブレード・ランナー」はすごい!ということを言いがちかと。もちろん僕もその枠です(苦笑)。多分それを30年以上続けている。。
僕のチームで活躍してくれている作曲家の皆さんは20代、30代です。
「ブレード・ランナー」はそういう若い人たちが見ても、きっとある程度すごい映画だと感じるだろうなあというのはおそらく間違いないかと。とはいえ、彼らが、おじさんたちはなぜこの映画にそんなに熱くなるんだろう、という風に考えたとしても、それはそれで不思議ではないようにも思います。
超絶すごいとは思わないかも。
僕自身も1982年、18歳の時にリアルタイムでこの映画を見て以来、一体何回劇場に行き(リバイバルやリメイクで)、メイキング本を読んだり解説を読んだりしつつ、長年鬱陶しく語ったりしてきたのだろうというわけですが、なぜそんなことをしてしまう映画なのかについて超簡単にまとめてみたいかなと。細かく資料に当たるってことはサボろうと思っているので、なんか怪しいなと思うところがあったら、各自検索していただければと思います(苦笑)

まずはこの企画は主に劇伴作家さん向けなので、音楽の話から。
作曲家はヴァンゲリス。ギリシャの音楽家です。
ロックバンド出身。シンセサイザーでの本格的な劇伴の草分け的な存在。
バンド出身の作曲家といえば、ハンス・ジマー、ダニー・エルフマンなどを思い出します。この前書いた、トレント・レズナーとか。レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドとか。個人的にはロックバンド出身の劇伴作家には好きな作品が多いです。
ヴァンゲリスさん、70年くらいから活動していたわけですが、その頃の音とかは僕は追えてません。ロックバンドのイエスに参加するとかいう話もあったとか。で、「ブレード・ランナー」の公開の前の年、1981年に『炎のランナー』(原題: Chariots of Fire)のサントラで、第54回アカデミー賞作曲賞(Best Original Score)を獲得。映画もサントラも大ヒットしたはず。リアルタイムで記憶あり。昔はサントラがチャート一位になったりすることもありました。で、その翌年が「ブレード・ランナー」ということです。
「ブレード・ランナー」という映画のすごい?ところは、例えば、ヴァンゲリス、前の年に「炎のランナー」、監督のリドリー・スコット 前作が1979年の『エイリアン』(原題: Alien)、主演のハリソン・フォードの前作は1981年の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark)、ということで、主要メンバーの大ヒット作の次作品、相当期待されて公開されたはずなのに、興業的には失敗したということから始まります。
要するに内容的に一回見ただけでは全くよくわからなかったということが遠因の一つのようです。繰り返しみないとわからない。その頃はまだレンタルビデオなんかもまともにはなくて、札幌で大学生になっていた僕は料金が300円とか500円とかいう安いリバイバル映画館で公開されるたびに、何回も何回も見に行きました。そういう人がたくさんいたはず。この前、ジム・ジャームッシュのことを書きましたが、80年代半ばごろ、ニューアカデミズムなんていう言葉もあって、映画、音楽、アート、ファッション、CMのコピーから文化人類学までそういうちょっと難しいことを語るのが「おしゃれ」な時代がありました。「ブレード・ランナー」はそんな中、ビデオ化もされて、とにかくその時代のとんがった(笑)若者は知らなきゃいけない映画になっていったわけです。カルト映画化したと。そしてその時若者だった人たちが、今おじさんになって、「ブレード・ランナー」見てない? 甘いな! とか言っちゃったりしているということなんですね。

ヴァンゲリスは、その後もたくさん仕事してますが、サントラとして超有名なのはこの二作なのかなあ。日本の「南極物語」のサントラも1983年に担当してます。あと、ワールドカップの公式アンセムとか、オリンピック関係とかそういうイベントで使われる曲をたくさん作ってます。
なので、「大きなスポーツイベントで使われそうな曲」というオーダーの時にはヴァンゲリスを参照するといいかもしれません。

「ブレード・ランナー」の"サントラ"は いろいろ出てますが、確か、全曲を収録した公式サントラは出ていないはずです。しかも最初に出てたのはヴァンゲリス音源ではなく、新たに録音し直したニュー・アメリカン・オーケストラ盤というやつでした。3枚組25周年エディションというのが今だと一番いいのかなあ。コンプリートは海賊盤があるらしいです。

ちなみに映画本編の方もバージョンがたくさんあります。
一般に公開されただけでも4バージョン。
オリジナルUS版 → インターナショナル版 → ディレクターズカット →ファイナルカット です。
2007年のボックスセットに オリジナルUS版公開前の「ブレードランナー」ワークプリント も入っています。ということで今見れるのは5バージョンってことになります。

やばい。。やはり、この話は長くなります。
ということで、タイトルに(第一回)と追加して、今日はここまでにしておきます。

次回は、なんで若い人はブレード・ランナーをそれほどすごいと思わないのか的なこと書けたらと思っております。


映画をメインに劇伴の音楽プロデューサーをやっています。
音楽打ち合わせの時には、具体的な映画のタイトルが飛び交うことが多いですが、若い作曲家にとっては生まれる前の映画なんていう場合も多く、
どこから手をつけていったらいいかわからないなんて話も聞くので
打ち合わせで実際に出た映画とかを(不定期に、、、)紹介していきます。
何か、間違っていたことを言ってたりしたら、ぜひ、ご指摘いただければと
思います!

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