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若い劇伴作家のための映画案内#15

ヌーヴェルヴァーグというおしゃれ。


ヌーヴェルヴァーグ。フランス語です。Nouvelle Vague。
new wave って意味です。「新しい波」。
ちなみに80年代、UKを中心にムーブメントになった音楽のnew waveムーブメントとは別のものです。
おしゃれ、なんてタイトルに書いてしまって怒られそうですが、50年代後半から60年代前半?くらいまでのフランスで起きたかなり真面目な映画運動のことです。
詳細は専門家の方による書籍などを参照してもらった方が良いかと思います。(いつも通りですが。。。苦笑)

で、僕は1964年生まれなわけですが、僕よりも10歳、20歳上くらいのクリエイターへの影響が大きく、僕たちの世代はその人たちが作ったものやその人たちのヌーヴェルヴァーグに対する評価を10代の頃に知って孫の代的な影響を受けているような形で、つまり、だいたい僕のプラス10歳、マイナス5歳くらいの方からでがちな謎のキーワード笑かと思います。
例えば、僕が本当に大好きなバンド、moonridersの『CAMERA EGAL STYLO/カメラ=万年筆』(1980)は、タイトルそのものが、フランスの映画理論の引用であり、収録曲全てが映画のタイトルを引用しています。ヌーヴェルヴァーグ時代のものが多いかな。さらには、1978年にはNOUVELLES VAGUES / ヌーベル・バーグ というアルバムも出してます。まあ、こちらは当時の音楽のnew waveブームへの諧謔的な意味もあったのかと。そのほか、デザイナーズブランドのショップにヌーヴェルヴァーグ映画のポスターが貼ってあったりとか、当時たくさん出ていた、文芸誌なのかファッション誌なのかグラビア誌なのかわからない「意識の高い」感じの雑誌ではよくヌーヴェルヴァーグやその映画監督などが特集されていました。
ということで、本来は真面目な映画評論であったり、映画の手法であったり、音楽におけるパンクムーブメント的な、それまでの映画への反抗みたいな意味だったものが、おしゃれなちょっとインテリなというとらわれ方に変わっていったのかなあと。まあJazzとかもそうですよね。あらゆるものがそうかも。ピカソの絵とかレストランに飾ってあったらおしゃれ枠な気がします。

ヌーヴェルバーグの全貌について語るような能力は僕にはありませんので笑、例によって打ち合わせで出そうなキーワードをちょっと書いておきます。
このムーブメントにはたくさんの映画監督が登場しますが、必ず試験に出るだろう二人はジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーかなあ。とはいえ話題になりがちなのはゴダールさんかと思います。映像的・作風的に影響を受けている人はかなり多いでしょう。問題作、問題発言?も多数。で、去年、スイスで自殺幇助を受けて91歳で亡くなりました。スイスでは自らの安楽死は状況により合法だそうです。最後まで物議系ですね。。
音楽の使い方もめちゃかっこよい(今の感覚で見るとめちゃおしゃれ。。絶対、ご本人とか映画の専門家には怒られるな。。)です。
ただ、ほとんどクラシックやECMというジャズ系のレーベルの楽曲の引用です。作品はめちゃたくさんあるし、傾向もバラバラですが、深く研究するのも面白いのではないかと思います。キーワード的には1960年の「勝手にしやがれ」1965年の「気狂いピエロ」はマストですね。(うーん、他にもたくさんあるのだけれど)。ちなみに「キチガイピエロ」と読みますが、いつくらいだろ、一時期はその言葉が(自主規制で)使えず、DVDも原題のカタカナ読みで「ピエロ・ル・フ」的なタイトルで発売されていた時期があります。やれやれ(苦笑)。あと豆知識的には、タランティーノさんもゴダールさんの大ファンであり、自分の制作会社の名前をゴダールの映画のタイトルから引用しています。
トリュフォーさんはもしかしたらゴダールさんよりも名前が出にくいかもしれませんが、タイトルとしては「大人は判ってくれない」(1595)「ピアニストを撃て」(1960)「突然炎のごとく」(1962)「日曜日が待ち遠しい」(1983)とかは記憶しておくといいのかも。なぜタイトルを記憶的な言い方をしたかというと、いつもは原題も書くようにしていますが、当然、フランス語なのでよくわからず笑、でも、上にあげた映画は邦題が素晴らしく(映画ももちろんいいですが)、いろんな曲や本やなんやらのタイトルに引用されたりすることが多いからだったりします。僕も大学生の時に「日曜が待ち遠しい」という曲を作ったことがありましたとさ笑。めちゃどうでもいいですが。ジャズピアニストの山下洋輔さんのエッセイで「ピアニストを笑え!」というのがあったり。
トリュフォーさんの映画も音楽の使い方かっこいいですが、クラシックとかが多かったかな。ゴダールさんよりもオリジナル曲も多かったかも。
(すみません、曖昧な記憶で書いております)
自分的にはゴダールさんは「パッション」(1982)くらいから10作品くらいリアルタイムで見てたかと思います。トリュフォーさんは「隣の女」(1981)から二作品がリアルタイム。トリュフォーさんは84年に亡くなってしまったので。
豆知識的にはスピルバーグ監督の「未知との遭遇」(1977)に俳優として出演しています。
あと、リアルタイムということで言えば、エリック・ロメール監督作品も80年代に何作か見てます。「海辺のポーリーヌ」とか「緑の光線」とか。
ただし、僕がリアルタイムで見ていたこれらの作品はヌーヴェルヴァーグ運動出身の監督の映画ではありますが、映画のジャンルとしてはヌーヴェルヴァーグではないのかな??
その辺りも専門家にお任せしたいと!笑

ヌーヴェルヴァーグという運動の中にはたくさんの作品がありますが、まあある意味難解なものが多いのだろうけれど、時間がある時にピックアップして見てみると何か発見があるかもしれないし、キーワードとしては知っておいて損はないと思います。

(買ってはあるものの、1/3くらいしか見ていないゴダールBDBOX4箱。。見なきゃなあ。。)



映画をメインに劇伴の音楽プロデューサーをやっています。

音楽打ち合わせの時には、具体的な映画のタイトルが飛び交うことが多いですが、若い作曲家にとっては生まれる前の映画なんていう場合も多く、
どこから手をつけていったらいいかわからないなんて話も聞くので
打ち合わせで実際に出た映画とかを(不定期に、、、)紹介していきます。
何か、間違っていたことを言ってたりしたら、ぜひ、ご指摘いただければと
思います!

僕は映画評論家でもなんでもないので、こうやって文章を書くためには、ぼんやりとした記憶をネット検索や持っている本とかでちょっとだけピントが合ったものにしているわけです。なので新発見は何もないので、どなたでも得られる情報を、飲んだ時にちょっと偉そうに話したがるおぢさんの長話程度に読んでもらえると幸いです。


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