ソウルメイトとの時間
私にはソウルメイトがいる。
彼女は大学の時に知り合った同級生だ。
出会いは入学式の日。忘れもしない、私の人生を間違いなく変えるきっかけとなった瞬間だった。
氏名順に学籍番号が示されており、少し小さな体育館にきっちりと整列されたパイプ椅子の背もたれに
自分の番号を探しながら私は歩いていた。
丁度太陽の優しい陽が大きな窓から新入生である私たちに注がれ、そんな陽を頭から全身に浴びて姿勢を正して座っていたのが彼女。
少しウェーブのかかった柔らかなロングヘアをたらす後ろ姿から、
新生活へのわくわくした気持ちがあふれ出ているようなそんな人。
私が席に着くと、彼女は輝く笑顔で私に話しかけてくれた。後光がさして本物の天使だと思った。
その瞬間から私の大学生活は彼女でいっぱいだった。
いつも一緒にいたわけではない。
一緒に活動を共にするグループは違い、私は違うグループの友達と過ごしていた。
彼女とずっと一緒にいたいけれど、その彼女のいるグループの友達とは一緒に過ごせない、そう感じていた。
だから、私はいつも一緒というわけではなかった。
しかし学籍番号順に席が決められていることが多い学校だった為、
授業の前後に私はいつも彼女と話をしたり
手紙を交換したりし、授業後には一緒にピアノを弾いて少し踊ったり、
課題に取り組んだりしていた。
彼女はとても明るく、好奇心が旺盛で、誰からも好かれるような素敵な人だった。
私はそんな彼女の優しさや、繊細でいて底抜けに希望を絶やさずにいる。
そんな特別感のようなものを感じながらいつも過ごしてきた。
今まで出会ったことのない人だった。
心の中に芽生えた暗い感情や、明日への不安、未来への根拠のない希望、なんでも伝え合える存在だった。
就職が決まった時、誰よりも早く彼女に伝えたくて、走って教室まで行ったことも良い思い出だ。
自分たちでテーマを決めて、服やアクセサリー、メイクの準備をし、極寒のディズニーランドの暗闇をハイスピードで走り抜けるアトラクションに乗りながら「ソウルメイト最高!」と叫びながら年越しの瞬間を迎えたことも、忘れることはない大切な思い出。
手を繋いで歩いたり笑顔を向けあったり、ちょっぴり恋に似ていたな、なんて今になって思う。
卒業後数年経って、彼女は新卒から続けていた幼児教育の仕事を離れ、
新しい仕事を始めながら好きだった歌を歌うことにも力を注いでいるようだった。
元々頻繁に会っているわけではなかったし彼女の様子はSNSの投稿を見て何となく知っているという状態になっていた。
私が恋をし、どんな経験をして一生一緒にいたい人を見つけたか、そんな話もしていなかった。
勝手に、どこか違う世界で生きている人のような気持になってしまっていた。
先日、彼女はインスタグラムのライヴでギターを片手に歌を歌った。
私が出会った学生時代に始めたギターの腕前は、素人が聴いてもわかるほど上達していて、「こんな感じだっけ?」と言いながら軽く歌のフレーズを歌ったりしていた。
東京でもライヴをし、その感想をSNSにも綴っていた。
コメント欄には、共通の友達ではないアカウントの名前が並び、彼女の好きだと話す歌のタイトルや歌手は、私にはわからないものだらけだった。
私は少し勇気を出して、彼女の創った世界にコメントをした。
「素敵な声」
彼女は2曲くらい歌い終わってコメント欄を見ながらいろいろな人のコメントに対して話をしていく。
そして一瞬表情が緩んで
「きてくれたんだね。
彼女は私のソウルメイトなんです。」と話した。
その一言は私にとって衝撃的で、言葉にならないほど幸せで胸をいっぱいにするものだった。
同じようにソウルメイトだと思い続けてくれていたことが、この数年の私の勝手なわだかまりのようなものを溶かしてくれた。
次の瞬間には私は両手で顔を覆って泣いていた。
胸が昂って心が震えて、そんな涙が出るのはいつ振りだったかな、と思った。
一緒にいなくても、同じ景色を見ていなくても
心が繋がっている、そんな気持ちになった夜。
これからも彼女のソウルメイトだと胸を張りたい。
おもしろい人生を生きて、彼女にたくさん話したい、そう思った。
ソウルメイトとの時間
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