見出し画像

カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム

【天から役目なしに降ろされた物はひとつもない】

ここ最近アイヌについて自由研究を進めているんですが、今回の家外研修ではまず阿寒湖アイヌシアターイコロで「アイヌ古式舞踊」と、北海道を代表するダンサーであり時には役者である、自分と似たような立場で表現をしていて、ものすごく尊敬している、というか片想いをしている鈴木明倫さんが出演する「ロストカムイ」を観てきました!
(ちなみにイコロとはアイヌ語で【宝物】という意味だそうです。)

率直な感想は、ここで観るべきものを観たなという印象です。阿寒湖のアイヌコタンは阿寒湖の温泉街にあって、旅行をしながら地元のご飯を食べて、アイヌについての文化に触れて、温泉に入り、民芸品を漁ったりする中でこの催しがあるということがすごく良い流れなんです。この公演自体も20:00〜アイヌ古式舞踊21:00〜ロストカムイという比較的夜遅いプログラムになっており、明倫さんも仰ってましたがここに訪れた人が誰でもついでに観ることができるんです。なので同じことを例えば札幌でやるにしてもアイヌコタンでやるのとでは意味合いが全く違うなと思いました。その土地でしか味わえないもの。

「アイヌ古式舞踊」では、生活の中の舞踊、舞踊の中の生活という言葉があり、アイヌの人々は喜びや悲しみなどの感情を、儀式、仲間が集まった時、仕事の最中でも身体で歌って踊って表現してきました。これには自然やカムイに対しての敬意も込められてるため、彼らや彼女らの繊細な生活の営みの中でそれらに対する感謝を表しているんだと理解をすると、個人的には飛びました。そしてなにより一緒に踊りたくなるんですね、客席では気が気じゃありませんでした。ムックリの演奏もあるんですがこれもまたとんでもなく痒いところに手が届くような音がしてこれまた飛ぶんですよ。たまたま喫煙所で舞台に立っていた女性の人とお話しする機会があったんですが、踊っている人たちの中にはアイヌの人とそうでない人もいるんだそうです。この土地に嫁ぎにきた人、あるいは純粋にアイヌに興味を持った人がそのような人たちです。中でも自分がアイヌの血を引いてないことにコンプレックスを持つ方もいらっしゃるんです。ここに来る前、自分も北海道の表現者であるからしてアイヌについて知りアイヌについて表現することは、アイヌの人たちにとって受入れられるものなのかという、勝手ながらの視点がありました。しかしその話を聞いて、実際に舞台を見て、アイヌではない人が北海道の先住民の文化をこうして受け継いで伝えている役割を果たしているのは素晴らしいことだと俺は思えました。そういう存在の人たちがここにいることに自分が向き合ってる問題が肯定的な物に変化しました。アイヌの人もそうでない人も「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」【天から役目なしに降ろされた物はひとつもない】なんですね。

続いて「ロストカムイ」についてですが、俺が観た回が鈴木明倫さんと東京のダンサーのジョーさんのデュオでした(振付小㞍健太さん)。先程述べた、そうでない人が文化を伝えることの問題を解決する一つの正解のような、素晴らしい作品に仕上がってたんです。古きと新しきがミックスされて、ビジュアル的にも飛ぶような現代アートとして成立しており、観ていてワクワクしました。ストーリーは絶滅にに追いやられたエゾオオカミであるホロケカムイのお話しで、彼らが何を想っているのかなどが語られており、ナレーション、ダンス、プロジェクションマッピングなどで表現されておりました。2人のダンスもうわあかっこいいってファンとして見惚れてしまい飛びました。素晴らしかったです!そしてこれまた凄いことに夏木マリさんがこの公演のサポートとナレーションを担当しているんです。なんでって思ったけど、夏木マリさんがこれに携わることになった経緯というか裏話を明倫さんから聴けておもしろかったなー。これは本当に今しか観れない物であるからより多くの人達に観てほしいです。こんな世の中じゃなければ声を大きくできるのですが...

まとめ
ぶっ飛びました。実際に足を伸ばして気になってたことが自分なりに少しクリアになれた部分もあるので有意義な時間を過ごせました。だけどもっとリサーチをしていきたいです。イオマンテ(火祭り)も観たかったんですが現在は公演を休止中だそうで。また来る理由ができました。公演後には明倫さんから飲みに誘っていただいて、初めて2人で飲んで、最初は緊張しましたが、これまでのこと、今回のこと、北海道のこと、ダンスと演劇のこと、表現のことや、俺が片思いしていたことなどをお話しできてとても刺激をもらいました。ありがとうございました!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?